ふにやんま ー 世界の小所低所からー

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見る人もなく

 見る人もなくて散りぬる奥山のもみぢは夜の錦なりけり紀貫之

見る人もなく咲く花があれば

知る人もなく散る花もある

全てがかなう人なんていない

そんな覚悟を持つ事が大人になる事

以上  ふにやんま

恋かも知れず

五七五七七の定型、早い話が短歌の形式で、最後を「恋かも知れず」で終わらせると、それらしい感じに仕上がるのです。しかも簡単にできる。最近の発見。

 食パンを はむりとくわえた瞬間に 「走り出せ」の声 恋かも知れず

 

SwitchのJoy-Con 初めて割ってみて 練習などしてみる 恋かも知れず

 

毎月の24日にときめいて「月命日かっ!」恋かも知れず

 

どうやら『ワンピース』好きらしい「いちばん良かったとこ言ってみて?」 今すぐ訊きたい 恋かも知れず

 

ブザービーター』人称形にしか聞こえない「スリー打ってこんかい」恋かも知れず

 

「ハシモトカンナとヒロセスズは同い年なんだって。どっちが好き?」ネタ繰り万全 恋かも知れず

 

「コブサラダ?カラダにいいもの食べるね〜」それ昆布(コブ)だろ!って突っ込めない。恋かも知れず。

 

お気に入りのクロスバイクにふと気づ く 「二人乗りムリゲー!」恋かも知れず

 

ハーゲンダッツ 蓋に残ったハート型♥️ 確変きたヤバし! 恋かも知れず

 

“僕らの出逢いがもし運命ならば?  君と巡り逢えた  それって『奇跡 』” 矛盾は許す。  恋かも知れず

 

似合わぬことをしてしまいました。

以上  ふにやんま 

黒新堂を堪能せよ。『カリスマ』ほか。

グロやホラー、ナンセンス(死語?)がしっかり描ける作家というのは、概ね対極のリリカルな作風も兼ね備えているもの。真っ先に思い浮かぶのは筒井康隆ですか。スラップスティックの一方で、学園ジュブナイルとかお手の物でしたね。新しいところで思い浮かぶのは乙一氏。ペンネーム、中田永一名義での『くちびるに歌を』は皆んながハッピーになれる秀作でした。

くちびるに歌を (小学館文庫)

くちびるに歌を (小学館文庫)

 

そう言えばこの人の初期作品も乙一、白乙一と分けられていましたっけ。

【ポイント】

①一流の作家には“白黒”と呼ばれるぐらいの振れ幅が備わっていて当然。

②そもそも人間の“陰”が描けない作家に、“陽”や“聖”が描けるはずがない。

...話がすっかり終わってしまいました。まあ新堂冬樹のようなメジャーを私ごときがあらためて紹介する必要もないですからね。それ言ったらこのブログ崩壊しますが。ちなみに先日書いたばかりですが、純愛モノとか若干厳しくなってきた昨今、白新堂はかなりツラいので黒新堂限定で。。。

既読の作品の五段階評価だけしておきます。雑ふにやんま。

★★★★★『カリスマ』 

ー洗脳シーンの執拗な描写が秀逸。組織や資金の運用実態なども実にリアル。新興宗教モノでは頭一つ抜けた力作ー

カリスマ〈上〉 (幻冬舎文庫)

カリスマ〈上〉 (幻冬舎文庫)

 

★★★★★『吐きたいほど愛してる』

ー捻れていても歪んでいても愛してる。様々な愛のカタチー 

吐きたいほど愛してる。 (新潮文庫)

吐きたいほど愛してる。 (新潮文庫)

 

★★★★☆『溝鼠』シリーズ全3冊 

ー途中で「もう勘弁してくれ」と思わせる小説は数あれど、最後まで読まないと損だと思わせる希少な一冊。ただしゴアシーン頻出につき注意です。「ゴアシーンって何?」というかた(極めて普通です)は読まない方がベターですねー 

溝鼠(ドブネズミ) (幻冬舎文庫)

溝鼠(ドブネズミ) (幻冬舎文庫)

 

★★★☆☆『背広の下の衝動」

 ー「団欒」が話のタネになる。すいません、それだけですー 

背広の下の衝動

背広の下の衝動

 

あとは全部★★☆☆☆です。多作な作家さんだけに質にも振れ幅があるようで。うわ、日本語ってめっちゃ便利。

 『君が悪い』

君が悪い (光文社文庫)

君が悪い (光文社文庫)

 

『摂氏零度の少女』

ー実際の事件のモデル小説というのは、読み手のイメージが膨らまず、却って難しいなとー

摂氏零度の少女 (幻冬舎文庫)

摂氏零度の少女 (幻冬舎文庫)

 

 『銀行籠城』

ーこれもそうですね。描きやすいのかもしれませんがー

銀行籠城 (幻冬舎文庫)

銀行籠城 (幻冬舎文庫)

 

『無間地獄』『ろくでなし』はどうした?と訊かれそうですが、ジャンル的に多分読まないと思いますわ〜。

以上  ふにやんま

『幻夏』太田愛

『幻夏』太田愛(2013)

幻夏 (単行本)

幻夏 (単行本)

 

太田愛氏の紹介にはウルトラマンティガで脚本家デビュー、『相棒』『TRICK2』などを手がけた後、『犯罪者 クリミナル』で小説家としてデビューとあります。

脚本の世界で功成り名を遂げたかたとはいえ、本書は小説デビューから2作目とは思えない完成度。文句なしの傑作です。綿密に練られたシナリオの精巧さ、パズルを解きほどいていく手際の鮮やかさは、さすが一流の脚本家と言うべきでしょう。

終盤になってから、新たな事実をドカンドカンと読者にぶつけていく手法は、本格好きの方にはお気に召さないかも知れませんが、エンタメ好きの私に言わせればサービス満点。このあたりもヤマ場作りを心得た、人気脚本家らしい味付けなのかも。

舞台は西稲城市(一応架空ですね)。興信所を構える鑓水(やりみず)のもとに女性から奇妙な依頼が入ります。

23年前の9月2日に消えた長男を探して欲しい。

事件当時、小学校六年生だった長男は水沢尚、三年生の弟は拓。尚は夏休みが明けた始業式の朝、「忘れ物をした」と言い残して正門から忽然と消えてしまいます。その日の夕方に、自宅から8キロ離れた川沿いでの目撃情報を残して。

翌日、その川沿いで尚のランドセルが発見されます。捜索が行われるも水難事故の形跡は無し。不思議な事に、尚のランドセルに入っていた時間割は失踪当日の金曜日のものではなく、何故か土曜日のものでした...

なかなか魅力的なスタートでしょう?

尚と拓の父親は殺人犯として服役していた。しかし刑期を全うした直後に冤罪だったことが明らかに。己れの潔白が証明されたその当日に、父親は兄弟が住む街で人知れず事故死。それは尚の失踪の4日前のことだった....

現在進行形で少女失踪事件まで起こります。序盤は積みあげられる情報に茫然とするばかりで、パズルがパズルに見えません。これって本当に一つに繋がるの? 風呂敷をここまで広げておいてから、各々の伏線を破綻なく回収し、シナリオを収束させられるだけでも大した力量です。技巧面だけでも本当に素晴らしい。

冤罪も本書の大きなテーマです。犯人を組織ぐるみで捏造して恥じることなく、発覚すれば徹底的に自己防衛に走るという警察や司法の醜悪さ。無辜の市民の人生が、権力によって不可逆的にズタズタにされることの理不尽さ。フィクションとしての誇張や時代設定の要素はあるとは言え、こうした骨太なテーマを盛り込み、作品全体を通じて活かしきっているのは特筆すべきことでしょう。ネタバレになるのでボカしますが、ある人物のを衝かれるような行動に、動機として深く絡んでいます。そんなバカな!と思わせない説得力をもたらしているキーワードが冤罪です。

本書の魅力として、最後に映像的で鮮やかな夏の表現を挙げたい。作者は2本のストーリーを並行して走らせていますが、うち1本は少年たち3人の夏休みです。Stand  by Meよりも少し下の世代。この3人を囲む夏の風景の描写が、イキイキとしてリアルで実に良いのです。蝉の声や草いきれ、秘密基地の中の湿り気までもが伝わってくるかのよう。台風の夜に3人だけで一夜を明かすシーンなどは、滅多にしないことですが、その哀切さに思わず読み返してしまいました。

「月だ!」

見ると、水面に満月が映っていた。拓は噴水に飛び込み、水を蹴立てて何度も満月を両手に掬った。

尚は突然駆け出すと、運動靴の白い足跡を残して軽々と流線型の車体の屋根に立った。足下の黒いクーペはまるで尚に従う忠実な獣のようだつた。(中略)

尚は全身の力を込めて指笛を吹き続ける。

どこまでも強く長く響きわたる音に、相馬は尚の肺が真っ赤な血を噴いて破れてしまうのではないかと恐ろしくなった。 

どうせなら季節まで合わせてしまいましょう。盛夏の読み物としてはピッタリかと。

~夏の幻だったのか。夏が幻だったのか〜

装丁もとても良い。読前も読後も同じ感想を持ちました。

角川書店 good job.

以上  ふにやんま

ココロも満タンに

注)あらかじめお断りしておきますが、今回はのっけからシモ系の話です。

先日 泌尿器科でレントゲンを撮ったところ、膀胱がすこし分厚くなっていると言われました。最初はハァ?という感じでしたが、要は膀胱の壁が肥大気味というんですか。弾力性を失って、全体が伸び縮みしにくくなっているとのこと。病気ということではなくて。まあ老化の一種と捉えるしかない。

「最近、急に強い尿意を催したりすることはありませんか?」と医師に問われました。まさに図星。そうか、あれにはちゃんと理由があったのか!単に歳のせいじゃなかったんだ!と得心しましたね。最近どころの話じゃないので。もう何年前から自覚していることか。夜中もたまに起きるようになったし。ノコギリヤシ

本来ならば貯水タンク(上品な言い回しに転換。遅いか)は、風船のように伸び縮みするもの。ところがタンクの外壁が硬化しているため、喫水線に達するや否や、尿意(ダイレクトだし)のスイッチがバチンと入ってしまうのだと説明を受けました。

Love Storyよりも突然に、不意に容赦なく訪れる尿意。泌尿器系に限らず、身体のことではもっと大変なかたが沢山おられるのは承知していますが、それでも言わずにはいられません。

歳は取りたくないのう。 

それでですね、喩えが悪くて申し訳ないのですが、歳を取ると膀胱と一緒で、ココロもなかなか弾まなくなりますね。もちろん個人差はあるでしょうが。

ふるえるぞハート!燃えつきるほどヒート!!

なんてことが心から言えるのは、やっぱり若さの特権だと思うのです。

昔から、若いうちの苦労と読書は買ってでもせよと言いますが(すいません、今勝手に作りました)、「フィクションに胸を躍らせる」なんていうのは年々ハードルが高くなってきました。いかんいかん。老化し始めておるんかのう、ココロが。

ご高齢の方で、若い頃に好きだった小説を楽しく読み返しています、なんていうのは本当に羨ましい。せめてココロぐらいは弾力性を保っておきたい。

という訳で(どんな訳だ)、わが家にはティーンエイジの子供達がいますので、ベストセラーやドラマの原作なんかも私が割と買ってきます。買ってきて、とりあえずそのへんに置いておく。そうすると、子供達や家内が勝手に拾って読む。撒き餌かっ。私は家族の後で、本のストックが切れた時とかに読む訳です。今ならばこんなのとか。  

陸王

陸王

 

こんなのとか。

アンマーとぼくら

アンマーとぼくら

 

こんなのとか。これ古いな。二巻もあった。

ちょんまげぷりん (小学館文庫)

ちょんまげぷりん (小学館文庫)

 

どれも未読ですが、いずれ読むと思います。

ところがですよ、近頃はその山の中に、これはもしかしたら永遠に読まないのではないか?と思う本が出てくるようになりました。以前はそんなことは全くなかったのに。

興味はあります。無ければ買ってきませんから。一応は読みたい、出来れば読みたい。子供に「なあ、これって結局どんな話なん?」って訊くのも何かに負けたみたいで悔しいし。

でもなあ、ちょっと純愛モノはキツいしなぁ。。。

と心の中で二の足を踏む今日この頃。

熱きココロに。

Forever Young.

ぼくは明日、昨日のきみとデートする (宝島社文庫)

ぼくは明日、昨日のきみとデートする (宝島社文庫)

 
君の膵臓をたべたい (双葉文庫)

君の膵臓をたべたい (双葉文庫)

 

 以上  ふにやんま

思いのほか当たり『エスカルゴ兄弟』

エスカルゴ兄弟』津原泰水(2016)

エスカルゴ兄弟

エスカルゴ兄弟

 

装幀でとても損をしている本です。おどろおどろしいというか、江戸川乱歩みたいじゃないですか? タイトルと相まって、なんだかグロ系のカテゴリだという誤解を生みやすいはず。そう言う意味での「思いのほか」ですね。

連想しましたもん。こんなのとか。

粘膜兄弟 (角川ホラー文庫)

粘膜兄弟 (角川ホラー文庫)

 

こんなのとか。 私だけ?

ムカデ人間2(字幕版)

ムカデ人間2(字幕版)

 

中味は全然違いますから。

どちらかと言うと明るいコメディ系。爽やかと言ってもいいぐらい。なんでこんな意味不明どころか、売上面で確実にマイナスに作用する装幀にしちゃったの?大丈夫か角川書店? 何があったの?

本書はかの国民的グルメ漫画美味しんぼと、青春B級中華グルメ小説(そんなジャンルないって)の傑作『戸村飯店 青春100連発』(瀬尾まいこ 

戸村飯店 青春100連発 (文春文庫)

戸村飯店 青春100連発 (文春文庫)

 

を足して2で割ったようなお話です。かなり褒めてますよ〜。ちなみに『戸村飯店』の装幀は良いなー。こちらもお勧めですぜアニキ。戻れ話。

主人公、柳楽尚登は仏文科卒の若手編集者で、調理師免許を持つ料理好き。このへんで山岡士郎かよっという声が上がりそうですが、心を広く持ちましょうね。いいじゃないの。エンタメだもの。

皆さんおおかたの予想どおり、この尚登クンが社命を受け、本物のエスカルゴを使った料理店の立ち上げに奔走するというお話です。あえて本物というのは、日本のフレンチで使われる安価なエスカルゴは、そのほとんどがアフリカマイマイなんだとか。貝の缶詰の安いのも、よく見ると聞いた事のない貝を使ってますでしょう。あんな感じ。

 美味しんぼならばここでゆう子さん「まあ、私たちは知らないうちに全く違うものを食べさせられていたのね!」と口に両手を当てて驚くところですが、そのへんの薀蓄は抑えめです。

本書のいいところ。

・会話のセンスの良さ

→随所でクスリとさせられます。ナオノコトノボルとか。懇ろとか。しかもテンポ良く読ませるな~と感心しました。

「あ、僕のことも尚登でいいです。尚(なお)のこと登ると書きます」

「ナオノコトノボルってどんな漢字だ?」

「名刺をお渡ししてありますが」

「ねえナオノコトノボル」

「梓さん、それは名前じゃないです」

初対面での名前を巡るやり取りだけでも、実はひと捻り加えてもう一回あります。こんな小ネタがいっぱい。たまりません。

・料理を描く筆力

→この手の本は、読んでいてお腹がすくぐらいでないとダメですよね。作者は料理及び調理をかなり勉強されたと見ました。

・梓ちゃんのキャラクター

→誰それ?というのは置いといて。主人公の想いびと(死語使っちまったよ)であるソフィこと桜さんのキャラがイマイチ立ってないのに比べて、この子の魅力が際立っています。めっちゃチャーミング。お父さんも素敵だけど。

とにかく陰気くさい装幀とは裏腹に、とても良く出来たエンタメ系の一冊です。

夏のPASTIMEに是非。もう少し売れてくれて、別の装幀で文庫化されたら嬉しいなと。

以上  ふにやんま

『脱出』二題

ハラハラドキドキの冒険物が読みたい!ノンストップアクションを楽しみたい!というかたにお勧めの2冊。ただしとにかくスカッとしたい! というかたには不向きです。戦争とかテロリズムというのは、そんなに甘いもんじゃないんだよと言わんばかりのややビターな味付け。

『脱出山脈』トマス・W・ヤング

脱出山脈 (ハヤカワ文庫NV)

脱出山脈 (ハヤカワ文庫NV)

 

『脱出空域』トマス・W・ヤング  

脱出空域(ハヤカワ文庫NV)

脱出空域(ハヤカワ文庫NV)

 

いずれも同じ作者と訳者(公手成幸氏)のコンビです。作者にとっては「脱出山脈」がデビュー作、「脱出空域」が2作目となります。2作目の方が腕を上げた感じで出来はいいのですが、できるだけ「脱出山脈」からの通読がよろしいかと。

ネタバレにならないと思いますので補足しておきますと、2作とも主人公となる男女(パースン及びゴールド)が共通というなかなか雑な設定。両人ともにアメリカ軍人なのですが、こんな大事件に度々巻き込まれる奴いないって、という突っ込みは免れません。ダイハードじゃないんだから。しかも恐ろしいことに、3作目『脱出連峰』(未読)も同じキャストだそうです。どこまで寛容なんだアメリカ人読者。2人のPTSDとか心配してやれよ。

・いかにもアメリカ在郷軍人会が喜びそうな、米兵美化の利いたシナリオ。

・キャラクターのイメージが全く浮かばない、浅い人物描写。

にさえ目を瞑って頂ければ、とても楽しめる秀作です。スケール、アクション、リアリティいずれも文句無しの本格冒険小説。ページをめくる手が止まらない!ってやつですね。

隠し味になっているのが時折混じる変な日本語訳。

「あの酸素マスクをつけるように」彼が言った。「それへのヘッドセットの装着法は、ダンがやってみせてくれるだろう」

「それへのヘッドセットの装着法」 学生の英文和訳みたいで可笑しかった。  “ IT " を使った構文例みたいで。

返事がやおら「しかり。」とか。そこ、普通に「ラジャー」で良くないですか?  あと、機長と管制官の会話が常に「コピーした」で終わるのですが、これ冒頭で一回だけ「了解した」に「コピー」ってフリガナがしてあるんですよ。そんなのみんな覚えてないって。交信の雰囲気を出したいのなら、全部フリガナにすればいいじゃん。変なの。

以上  ふにやんま