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ふにやんま ー 世界の小所低所からー

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上原征彦氏 企業人向け「年頭所感」が素晴らしいので紹介

年頭所感      2015年1月5日

 
      組織の生存・成長を促す二大要素
      上原 征彦
      公益財団法人 流通経済研究所理事長
      明治大学専門職大学院教授

流研オピニオン:コラム - 流通経済研究所

はじめに
 年頭所感ゆえ、本年あたりから話題になりそうな新しいテーマを見つけ、有用なコメントをすべきだが、最近は、年のせいかもしれないが、今まで自分が注目してきたことが益々重要になってくると思うようになり、このことを皆に伝えたいという欲求に駆られてくる。今回は、こうした欲求にもとづき、仕事上の経験から、組織の生存・成長を大きく規定すると私が確信してきた二大要素について論じてみたい。それは「権力の腐敗を防ぐこと」と「情報を共有していくこと」の2つである。


権力の腐敗が組織を弱くする
 「権力は腐敗する」という言明はあまりにも有名である。それがどの程度の高い確率で生じるかは定かではないが、「腐敗する」という意味が、権力者の「汚職」や「権限乱用」などを指すだけでなく、当該権力者によって「組織の停滞化」「組織の雰囲気悪化」などが生じてしまうという事態も含むとすると、「権力の腐敗」は実に多いといえるかも知れない。私の知っている企業や大学でも、「最近、組織が暗くなった」「細かいルールが優先し、成果が上がらないのでやる気を失くす」という声をよく聞くが、それは「権力の腐敗」によるところが大きいといって過言ではない。
 上述のような意味での権力の腐敗が生じる1つの原因は、権力者が管理好きになることだ。凡庸な権力者ほど、メンバーを方向づける戦略を創造できないため、日常業務の管理に力を入れ、これによって組織を統制しようとする。そうでなければ権力者の地位を享受した気持ちになれないからである。
 また、権力者は、戦略構築力によって組織をリードすることができないとき、内外に「いじめ」の対象をつくることによって構成員を統制しようとする。たとえば、独裁者は、仮想敵国をつくって国民を奮い立たせようとするが、そのとき既に国は崩壊に向かっていることが多い。
 そして、権力者がルールに頼るようになると組織は脆弱化する。ルール(規則)をつくり、それを守らせることによって組織を統制することはきわめて効率的だと彼らは考える。ルールさえつくれば自動的に組織が動くと信じているのである。そこで、権力者は安易に組織を動かそうとして、ルールをたくさんつくり、それを固定化しようとする。しかし、組織は激変する環境に応じて変化しなければならず、そうした変化は既存のルールを破壊することを必要とする。「権力の腐敗」はこの変化に遅れる組織をつくり出すことになる。
 ところが、世の中をじっくり見ていると、権力が腐敗しても生き延びている組織も少なくないのに驚かされる。政治学者ラスキは「権力が機能するのは被治者がこれを容認しているからだ」というようなことを述べていた。腐敗している権力が持続できるのは、構成員がそうした権力を容認しているからである。誰もが権力者を目指すのではなく、それよりも、どんな人が権力者になれば組織がうまく機能するか、ということを真剣に考えることができる人の育成が必要となるであろう。


情報の共有が組織を強くする
 企業には、よく見ると、多種多様な資源が実に多く散在している。企業は、これらを関連づけた核(コア・コンピタンス)を創出し、それをベースとしつつ、需要家・消費者にアプローチすべきだ、というのが経営戦略論の現代的帰結でもある。これを実行していくためには、何よりもまず、組織の構成員が情報を共有する仕組みを用意することが必要とされる。
 最初に、優れた戦略研究者から聞いたことを紹介しよう。世界で最も強い軍隊(この場合の軍隊の強さは、武器を一定としたとき、一人あたりの戦闘能力がどの程度かという指標で測ることができるだろう)はどこの国であろうか?それはイスラエルだという。イスラエル軍において最も情報の共有化が進んでいるからである。軍隊は、ハイアラーキー型組織であり、上からの命令は下に届き易いものの、複雑な情報になるにつれ、軍全体での情報共有はきわめて難しい(これはハイアラーキーに拠るものであるが、何故かは読者が考えてほしい)。そこで、イスラエル軍では、参謀本部と並列させて戦史研究所と呼び得る機関を置き、そこに戦いの失敗と成功に関する情報を集約させ、必要に応じて構成員がこれにアクセスできるようにしている。これがイスラエル軍コア・コンピタンスの1つとして機能しているのである。
 情報の共有が進んでいないと、組織は疲弊すると同時に、革新力を喪失していく。第1に、同じ失敗を繰り返す確率が高くなり、成功体験とそこからくる感動を生み出す契機を狭めてしまう。第2に、失敗になれてしまい、失敗と断ずべき行為が慣行化してしまう(たとえば押し込み販売は明らかに失敗であるが、これが慣行化している企業は決して少なくない)。第三に、これが最も重要であるが、情報が共有されていないと、活発なコミュニケーションを阻害し、それが組織の革新力を失わせていく。
 別な側面から論じてみよう。情報の共有がないと、新しい情報に接することによる自己組織化能力を弱め、構成員は効率的に業務を処理することに重きを置くため、いきおい組織の慣行とルールにのみ依拠して業務を遂行することになる。そのことが創造力の醸成を大きく阻害していく。すなわち、情報が共有されて初めて、慣行やルールの変革の契機を見出すことが組織として可能になり、これが革新的な戦略の展開に結びつくのである。
 さて、企業には、いたるところに資源(儲けの種)がころがっている。構成員は、自分が所轄する儲けの種のみに依拠して、その需要適合を日々模索している限り、大きく飛躍することはできない。必要なことは、散在する多種多様な資源のどれとどれを結び付け、需要創造を展開していくか、ということへの挑戦であり、これが企業の成長エンジンとなっていく。

                                                                         以上   ふにやんま