ふにやんま ー 世界の小所低所からー

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伊集院 静の「覚悟」

 『別れる力  大人の流儀3』                                                                                           

別れる力 大人の流儀3

別れる力 大人の流儀3

 

私が生家を離れる前夜、父が私の暮らす棟に来て、父の生い立ちから、

生きることでの忠告 (いやあれは命令か) を受けた。

「倒れてはならん。生きて行くんだ。この先二度とおまえと私は

逢えないことが起きるのが生きるということだ」

まさか、と思って聞いていたが、今なら父の言わんとしたことがわかる。 

 

我々が当然のものとして受け入れている、日々の平和や家族の安寧が、

いかに儚く脆いものであるか。

「約束された明日は無い」

それを思い起こさせてくれる、大人にしか分からない名言だと思っている。

だからこそ氏は「大人の流儀」を語り、二十歳の若者に対して、

「大人の男」として必要な「覚悟」を説く。

 

氏の作品で、自伝的長編ならば

まず『海峡』3部作 を、

海峡―海峡幼年篇 (新潮文庫)

海峡―海峡幼年篇 (新潮文庫)

 

 

春雷―海峡・少年篇 (新潮文庫)

春雷―海峡・少年篇 (新潮文庫)

 

  

岬へ 海峡・青春篇 (新潮文庫)

岬へ 海峡・青春篇 (新潮文庫)

 

 

 次いで『お父やんとオジさん』か。  

お父やんとオジさん

お父やんとオジさん

 

厳しい時代を強く、したたかに生き抜いた父親との葛藤を乗り越え、

「大人の男」として、かつての父親と対峙する伊集院氏。

両作共に、氏の父親への深い尊敬の念を湛えた名作である。

 

短編ならば、デビュー作でもある「皐月」(「三年坂」収録) を挙げたい。 

三年坂 (講談社文庫)

三年坂 (講談社文庫)

 

 

近作では正岡子規を描いた長編、『ノボさん』か。 

ノボさん 小説 正岡子規と夏目漱石

ノボさん 小説 正岡子規と夏目漱石

 

 伊集院氏の場合、成人後の自著伝的な作品にはあまり惹かれない。

本質的に「自分を語る」ことが、苦手なタイプの作家なのだろう。

エッセイもあまり向いていないというか、偽悪的な文体が、

読みにくくさせている感があり惜しい。

                                                                            以上  ふにやんま