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ふにやんま ー 世界の小所低所からー

http://funiyanma.hatenablog.com/  

肉体改造に憑かれた人々

スポーツ 読書

肉体改造には、基本的に中毒性があると思っています。

ダイエットでも顔面整形でも、痩身とか美容とか、本来の目的を逸脱したレベルまでいってしまう人が必ずいるじゃないですか。

「自分の身体が変わること」が、自分の中のコンプレックスの解消、代償行為になってしまうと、歯止めが効かなくなるのかと。「いくこところまでいってしまう」というやつです。

 今でこそマッチョ志向でタンクトップ大好きの長渕剛氏も、肉体コンプレックスが強く、ジム通いを始めた時にベテランから「胸板薄いんだね」と侮蔑された事が悔しくて、それが必死で身体を作る原動力になったというインタビュー記事を見ました。

「筋量が人間の評価基準」という、常人には理解しがたい世界だと、こういう事が起こる訳ですね。長渕氏が、その後極真カラテに走った話はここでは置きます。

 

ボディービルディングのノンフィクションでは、日本には秀作があります。

『果てなき渇望ーボディビルに憑かれた人々』 増田晶文

(2000年 文春・ベストスポーツノンフィクション 単行本部門1位)

果てなき渇望―ボディビルに憑かれた人々 (草思社文庫)

果てなき渇望―ボディビルに憑かれた人々 (草思社文庫)

 

ボディビルに興味がない人(私です)にも、一読の価値ありですよ。

「肉体改造」 という手段への関心が、人を惹きつけていく様子には鬼気迫るものがあります。

何しろ「筋量が多い=偉い」という価値感の世界ですから、人は簡単に薬物に手を出してしまうんですね。

「アナボリックステロイド(筋肉増強剤)」というやつです。

ボディビルの大会に出場する限りは、ステロイドは禁止薬物ですので、検査をかいくぐる為、常用者は必死で知恵を絞ります。

「ドライ」「クリーン」と呼ばれる、ステロイド断ちの期間を置くのが基本ですが、いかに筋量への影響を最小限に留めるか。

ボディビルは実際には筋量コンテストではなく、「カット(要は筋肉の形)」「全身のプロポーション」「ポージング」といった様々な要素で競う立派な競技らしいです。

ですが、本著に登場するような憑かれた人々は、何しろ肉体改造中毒者ですから、筋量アップが完全に生きる目的化しています。

副作用や将来の疾病、後遺症リスクの知識がいくらあっても、自分の行動に歯止めが掛からない。

そんな心の闇を描いた傑作です。

 

これがアメリカの場合、マッチョイズムが骨まで染みついた国ですから、ステロイドの蔓延が半端ないです。

スポーツでの競技力アップ、芸能人のステータスとしての肉体維持、といった現実的な成功に絡んできますので、余計始末が悪い。

 

『アメリカは今日もステロイドを打つ USAスポーツ狂騒曲』

アメリカは今日もステロイドを打つ USAスポーツ狂騒曲 (集英社文庫)

アメリカは今日もステロイドを打つ USAスポーツ狂騒曲 (集英社文庫)



ハルク・ホーガンホセ・カンセコミッキー・ロークなど、アメリカのスポーツ界、映画界の第一線で活躍するスターの背後には、数えきれないほどの落伍者と根拠のない筋肉信奉主義がひそんでいた!彼らを駆り立てるものは何なのか。

ときには命の危険も顧みずにアメリカンドリームに向かって突き進む、おバカで愛すべき人々の人間模様と、そこから見えてくるアメリカの実態を描いたエッセイ集。

※文庫裏表紙の紹介文から

アーノルド・シュワルツェネッガー(彼はボディビル出身ですが)、シルベスター・スタローンステロイド常用者として知られてますね。

芸能界ではステロイドは禁止薬物ではありませんから、自己責任で使用して構わないと。アクション・スターも大変です。


何しろハイスクールの有望なフットボール選手は、大学進学を夢見て常にステロイド使用の誘惑と闘わなければならない国ですから。

一部の世界では、アメリカンドリームとステロイドが、切っても切れない間柄というのも、何かげんなりしませんか?



『禁断の肉体改造』ホセ・カンセコ

禁断の肉体改造

禁断の肉体改造

 

・ バリバリの一流選手による、初めてのステロイド使用歴の告白

・「MLB(メジャーリーグベースボール)選手の85%が、ステロイド使用していると見ていい」

という告発で、アメリカではベストセラーになった本。

選手名がすべて実名で、「ここまで書いて大丈夫?」とこちらが心配に。

「マグワイヤとは、トイレやロッカールームで、ジョークを言いながら互いの尻に注射を射ちあう仲だった」とか、あっけからんと書いてあります。

投手なら球速が、打者ならスイングスピードとインパクト後のパワーがどのくらいアップして、成績面でどれくらいの効果が期待できる、といった具体的効果まで書いてあって興味深いです。

日本球界だと、愛甲 猛氏の告白がありましたが、きっと氷山の一角なのでしょうね。


『ただマイヨ・ジョーヌのためだけでなく』ランス・アームストロング

この本を読んで、大いに感動した自分は何だったのかと。。。

精巣癌になる前から、既にドーピング常習者だったんですよね?ドーパーの勝利に価値が無いというほど子供ではありませんが、ステロイド無しに勝てる競技は、まだ残されているのでしょうか?


芸能界と並んでステロイドが禁止薬物ではない、むしろ推奨される世界、プロレス界についてはまた稿をあらためて。

私の得意分野ですので、じっくりと。

          以上 ふにやんま