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ふにやんま ー 世界の小所低所からー

http://funiyanma.hatenablog.com/  

ダイナマイト・キッドとステロイド

スポーツ 読書

アメリカで知名度の高い「ステロイド・レスラー」と言えば、代表格はハルク・ホーガン、そしてダイナマイト・キッド(以下、キッド)でしょう。

クリス・ベノワが死去した2007年には、CNNの取材によって、現役時代のステロイドと鎮痛剤の使用について語った。
2013年、ドキュメンタリー映画 "Dynamite Kid - A Matter of Pride" が完成。2月24日にマンチェスターのヒルトン・ホテルで行われたイベント試写会において、公の場へ久々に姿を見せた。

出所: ダイナマイト・キッド - Wikipedia

日本でもファンの多いキッドは、初代タイガーマスク最大のライバルとして、1980年代に数多くの名勝負を繰り広げました。

相手の攻撃を受けきる体力、キレ味のいい大胆な攻撃。初代タイガーマスクの華麗な動きと並び、キッドのプロレスラーとしてのセンスは、当時の新日ジュニアヘビーの中では突出しており、今なお「目標とするレスラー」に、キッドの名前を挙げるレスラーが多いのも頷けます。思えばハイスパートレスリングの先駆者として、ヘビー級の試合運びにも大きな影響を与えた一人でした。

解説だった山本小鉄氏も「キッドは本当に運動神経抜群の選手。彼ならプロレス以外のどんなスポーツでも、必ず成功したはず」と絶賛していたのを思えています。

売り出しと言えばそれまでですが、当時のキッドのファイトには、それだけの説得力がありました。

当時のキッドらしい写真を1枚選んでみました。

よく鍛えられてはいますが、ナチュラルな筋肉に見えます。不自然な感じはありません。

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出所:ダイナマイト・キッド | プロレス桃源郷へのいざない

キッドは日本人受けする、しっかりしたレスリングテクニックの持ち主でしたが、彼の身長は公称で173~178cm程度。とてもじゃないですが、ジュニアヘビー級より上で戦えるサイズではありません。

しかしキッドは盟友デービーボーイ・スミスと共に、アメリカの2大メジャープロレス団体のひとつ、WWFのリングで1985年に大きなチャンスを得ます。

ヘビー級タッグチーム、「ブリティッシュブルドッグス」の結成です。これがキッドの人生の転機になりました。

 「ブリティッシュブルドッグス」 当時のキッド(右側)

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上の写真と比較すれば、筋量の尋常でない増大、とりわけ上腕二頭筋や大胸筋の異常な発達ぶりが分かるかと。

出所: 個別「ブリティッシュ・ブルドッグス」の写真、画像、動画 - あまりにバディな - hiyakkoikiton's fotolife

武士の情けでしょうか。ステロイドでパンパンだった頃のキッドの画像は、ネット上には殆ど残っていません。

キッドの身体は、WWF入団後、その成功にあわせるかのように、徐々に筋肉で肥大していきます。

↓ 相方の、デービーボーイ・スミスの写真が参考になるでしょう。かれも公称181㎝と、キッドとほぼ変わらない身長でした。

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出所: デイビーボーイ・スミス/レスラーノート/ダークロHP

撮影用にバンプアップ済みである点を差し引いても、見る人が見れば一目瞭然だと思います。

正面から見た時の僧帽筋(首から肩へつながる三角形の筋肉)が、"ステロイドクリーン” か否かの見極めになるそうで。

この筋肉、極めて鍛えにくい部位らしいのですが、ステロイドを使うと容易に発達するそうです。

肥大させた筋肉と、最小化させた脂肪による体表への血管の浮き出しかたも、ステロイダーには独特のものがあります。

 ↓ この写真もそうですね。デービーボーイ・スミス、自分はステロイダーだと誇示しているような身体です。

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出所:ALAS, 廿軒家プロレス : デイビーボーイ・スミス DAVEY BOY SMITH - livedoor Blog(ブログ)


キッドの有名なエピソードとしては、「末期には馬用のステロイドを使っていた」というのがあります。自伝でも触れられていますので、おそらく事実でしょう。


『PURE DYNAMAITE -ダイナマイト・キッド自伝』

PURE DYNAMITE―ダイナマイト・キッド自伝 (BLOODY FIGHTING BOOKS)

PURE DYNAMITE―ダイナマイト・キッド自伝 (BLOODY FIGHTING BOOKS)



自伝では「たまたまヒト用のステロイドが手元に無かったので、馬用のステロイドを使ったら卒倒した」 と書いてあります。

私はこれも怪しいと睨んでまして、

◇ヒト用ステロイドが効かなくなったから、ウマ用に手を出した。

◇非人道的な処方をした人間or組織をかばう為に、自伝では偶発的な使用ということにした。

のだと、勝手に思っています。

ステロイドが耐性を持つのかどうかは知りませんが、医学関係者の保証無しに、ウマ用の薬物を身体に入れますか?

 

日本人レスラーでは、船木誠勝氏が若き頃のヨーロッパ修行中、ステロイド使用していたことを自著で告白して、プロレス界に衝撃を与えました。

船木誠勝のハイブリッド肉体改造法」1996年

船木誠勝のハイブリッド肉体改造法

船木誠勝のハイブリッド肉体改造法



個人差があるのでしょうが、船木氏にとってのステロイド効果は絶大で、本人も驚くほどの効果があったそうです。

◇大好物のスナック菓子主体の食生活なのに、筋肉がバンバン付いた

◇上腕が太くなり過ぎて、トレーニングや試合中に腕が回らない

◇しつこい湿疹や、吹き出物に悩まされた(よく効く人は、副作用も強いのでしょうか)

と自著の中で記しています。

アメリカのプロレス界で、レスラーがまず求められるのは「金を取れる身体であること」です。

プロレスラーである為には、スーパーマンばりの筋肉を誇示して、観衆、プロモーター、レスラー仲間を納得させなければならない。

身長180cm以下だからと言って、「SCHOOL BOY!」といった野次で舐められようものなら、翌日から仕事が無くなってしまう厳しい世界です。

イギリスから這い上がった「ブリティッシュブルドッグス」は、アメリカンドリームを一度は手にしたものの、その後の人生は悲惨でした。

デービーボーイ・スミスは2002年にカルガリーの自宅で心臓発作を起こし、39歳の若さで死去。

長らく行方不明だったキッドは、2013年に久しぶりに公の前に姿を現しましたが、まだ50代半ばのはずなのに、老人のような姿となっていて世間を驚かせました。

40歳を前に車椅子生活を余儀なくされていたそうで、時期的には相方のスミスの死と重なります。

キッドの場合、現役中の椎間板の大怪我という別要因もありますが、二人の晩年に、ステロイドの副作用が暗い影を射した事を疑う業界関係者はいないでしょう。


自由意思、自己責任でのプロレスラーのステロイド使用は、何ら非難される謂れはないというのが私の考えです。

しかしながら、名レスラー、ダイナマイト・キッドの車椅子姿の画像を、ここに掲載する気には到底なれません。

「爆弾小僧よ永遠なれ」

そう願うと共に、アメリカのスポーツビジネス、ショービジネスの世界の、闇の深さに嘆息するばかりです。                           以上 ふにやんま