読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ふにやんま ー 世界の小所低所からー

http://funiyanma.hatenablog.com/  

阿木燿子『さよならの向う側』

音楽

唐突で申し訳ありません。

今回は、山口百恵氏のCDジャケットから始まります。

GOLDEN☆BEST 山口百恵 コンプリート・シングルコレクション

GOLDEN☆BEST 山口百恵 コンプリート・シングルコレクション

 

 以前、松本隆氏について触れました。 

 

funiyanma.hatenablog.com

 

 今回は松本氏と同じぐらいに好きな作詞家、阿木燿子氏についてです。

阿木燿子 作詞一覧  出所:阿木燿子の歌詞一覧(50音順)

http://www.evesta.jp/lyric/artists/a7960/lyrics/

 

夫である宇崎竜童氏への歌詞提供が目立ちますが、その他にも

数々のメジャータイトルが含まれているのに驚きませんか?

『港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ』ダウンタウン・ブギウギバンド

微笑がえしキャンディーズ

『想い出がいっぱい』H2O

『キッスは目にして!』ザ・ヴィーナス

『魅せられて』ジュディ・オング  etc.

私と同年代のかたには、懐かしさにむせび泣くタイトルばかりではないかと。

 

でもですね、私にとっての阿木燿子氏は、やはり山口百恵なんです。

『夢先案内人』

『プレイバックPART2』

『イミテイション・ゴールド』

『乙女座宮』

『絶対絶命』

『美・サイレント』

つらつらと挙げていけばお分かりのように、山口百恵の代表曲は

ほとんど阿木燿子氏の作詞によるもの、と言って良いと思います。

作詞家としての阿木燿子氏のピークと、山口百恵の歌手としての

成長のカーブがピタリと重なった、奇跡のような時期でした。

 

阿木氏が山口百恵に提供した歌詞の中で、ベストを選ぶとしたら、

私は『さよならの向う側』を迷わずに挙げます。

(ちなみに次点は『夢先案内人』

長くなりますが、歌詞を引用してみます。

作曲は勿論、宇崎竜童氏です。 

何億光年 輝く星にも 寿命があると

教えてくれたのは あなたでした

季節ごとに咲く 一輪の花に 無限の命

知らせてくれたのも あなたでした

last song for you last song for you

約束なしのお別れです

last song for you last song for you

今度はいつと言えません

あなたの燃える手 あなたの口づけ

あなたのぬくもり あなたのすべてを

きっと 私 忘れません 後姿 みないで下さい

 

※Thank you for your kaindness

Thank you fou your tenderness

Thank you fou your smile

Thank you for your love

Thank you for your everything  さよならのかわりに※

 

眠れないほどに 思い惑う日々 熱い言葉で

支えてくれたのは あなたでした

時として一人 くじけそうになる 心に夢を

与えてくれたのも あなたでした

last song for you last song for you

涙をかくし お別れです

last song for you last song for you

いつものようにさり気なく

あなたの呼びかけ あなたの喝采

あなたのやさしさ あなたのすべてを

きっと 私 忘れません 後ろ姿 みないでゆきます

 

(※くり返し)

さよならのかわりに さよならのかわりに

 

思わず口ずさんでしまうかたも多いでしょう。

名曲を解説するのは野暮というものでしょうが、この歌詞の

凄みはどこにあるのか、少し考えてみます。

 

スターである山口百恵を、格調高く星や花に喩えたメタファー。

さらに芸能界から引退しても、ファンの心から山口百恵

消える事はないというメッセージを、織り込んだ巧みさ。

枝葉を挙げればきりがないのですが、

一番の凄みを端的に言うと、

・仮想の想い人(ややこしければ三浦友和氏で結構です)

山口百恵のファン

が、二人称の「あなた」の対象として巧妙に入れ替わりつつ、

それでも破綻すること無しに別れのラブソングとして成立

している、という点に尽きるかと。

 

ファンはこの曲の中に、三浦友和氏を恋慕う山口百恵の心根を

見ると同時に、彼女のファンへの熱い気持ちに触れる事が出来ます。

ファンは時に三浦友和氏となり、時に山口百恵の深い

感謝の対象となる。

そして、少々複雑なのですが、最後のリフレインでは、

山口百恵と自分が、完全に一体化したような感覚

・自分を含めたファンの気持ちを、山口百恵が代弁してくれている

かのような感覚

を、同時に覚える構造になっています。

二人称「あなた」の対象が、曲の最後の最後で、引退する山口百恵

スイッチするんですね。

あなたのやさしさ あなたのすべてを

きっと 私 忘れません 後ろ姿 みないでゆきます

ここでの「あなた」は、ファンにとっては山口百恵に他なりません。 

 

「主客の同一化」「2つの視点」の導入によって、本来は異なる

3つのテーマ、

山口百恵三浦友和氏への恋慕の情

山口百恵→ファンへの感謝の思い

・ファン→山口百恵の、彼女の幸せな引退を気丈に見送ろうという気持ち

 を、1曲の中に収めきっている訳です。実にしっかりした構成です。

これを見事に成し遂げた阿木燿子氏を、テクニシャンと言わずして、

何と言いましょう。

 

私が作詞家に関心があるのは、その仕事に陽が当たり辛いからだけでは

ありません。

楽曲に付随した要求に応え、商業ベースでも外さないLylicsを提供する。

その職人技に「プロの姿勢」を感じるから、といったところでしょうか。

                     以上 ふにやんま