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ふにやんま ー 世界の小所低所からー

http://funiyanma.hatenablog.com/  

ムツゴロウを甘く見てはいけない

読書

ムツゴロウと聞いて、何を連想しますか?

有明海の干潟にいる変な魚じゃなくて、作家 畑正憲氏のほう。

フジテレビ「ムツゴロウとゆかいな仲間たち」のムツゴロウさん、
通称「ムツさん」と言えば分かりますよね。
 
頭に浮かぶのは、動物達に囲まれてデレデレになって戯れている姿でしょうか。
映画『子猫物語』の監督?
ライオンに噛まれた、変なおじさん?
 
どのムツゴロウ氏も、ニコニコ笑っていると思います。
ですが、断言しましょう。
それは全てTV版「ムツゴロウ」であり、演じられ、作られたもの。
ムツゴロウ氏の本質ではありません。
実際のムツゴロウ氏は、激情と芯の強さ、さらにプロの作家に相応しい洞察力を備えた、かなりの硬骨漢です。会った事ないですが。
 
ひとつエピソードを。
さる女流漫画家が、ハイレベルな麻雀大会で、初めてムツゴロウ氏に会ったと。
そのかたはテレビでのムツゴロウ氏しか知りませんから、競技麻雀に臨むムツゴロウ氏の、テレビでの姿とのギャップに大いに驚かれたそうです。
日本プロ麻雀連盟相談役で、麻雀漫画にも「ウツゴロウ」として登場し、麻雀についての著作もあるムツゴロウ氏ですから、無理も無い話ですが。
その日のムツゴロウ氏は非常に不機嫌で、遅れてきたにも関わらず終始無言。
(「謝ったりすると勝負の流れが悪くなるから」というのが後日の説明)
煙草を片手に「チー」「ポン」と発声する際のドスの効き具合と、勝負師の迫力に、それこそ震え上がったと、ご自身のイラスト付きで紹介しておられました。
 
勘違いしないで欲しいのですが、テレビでの「ムツゴロウ」氏を非難するつもりは毛頭ありません。動物王国の維持費用だけでも、どれだけの大金が必要だったか。
知って欲しいのは、ムツゴロウ氏の著作が、本好きが読むに値する内容だということ。
「ゆかいな仲間たち」での姿や、お笑いでのネタ扱いに惑わされて、「作家」 畑正憲に触れないのは惜しいということです。
 
読書家で知られるラサール石井氏が、「若者に薦める本」で、畑正憲氏の
『ムツゴロウの少年記』
『ムツゴロウの青春記』
を挙げていました。 
ムツゴロウの少年記 (文春文庫 (108‐17))

ムツゴロウの少年記 (文春文庫 (108‐17))

 

 

ムツゴロウの青春記 (文春文庫)

ムツゴロウの青春記 (文春文庫)

 

「おっ!ラサールさん分かってるね」と思いましたよ。

開拓団の医師だった父と共に、満州で過ごした幼少時代から、東大理科Ⅱ類への入学を経て、大学院で博士号の取得、更には学究への道を断念するまでを描いた2冊。
「珠玉の文章」という表現で、紹介しておられました。
 
ムツゴロウ氏はかなり多作ですが、フィクションは不向きなようで、正直お薦めしません。
エッセイスト向きなのでしょう。
ルポも良いです。
自然科学の知識と、王国での経験が大いに活かされています。
 
野生の小熊と無人島で1年間、ひとつ屋根の下
どころか同じ部屋で暮らした日々を綴った、
『ムツゴロウの無人島記』 (正・続)
ムツゴロウの無人島記 〔正〕 (文春文庫)
 

中学校の同級生だった奥様との、長いお付き合いの顛末を描いた

『ムツゴロウの結婚記』 
ムツゴロウの結婚記 (文春文庫)

ムツゴロウの結婚記 (文春文庫)

 

 エッセイはどれも楽しめると思います。

 

毛色の違ったところでは、大人向けの指南書「ムツゴロウの人生〇〇」シリーズなどもあり、よく読むと武勇伝と自慢話ばっかりだったりして結構笑えるのですが、若い頃から変わらぬムツゴロウ氏の熱さに触れることが出来ます。 ほとんど絶版ですが、見つけたらいっときましょう。

ムツゴロウの人生上達の術

ムツゴロウの人生上達の術

 

ムツゴロウの人生航海術

ムツゴロウの人生読本

 
著作の紹介はこれぐらいにして、ムツゴロウ氏の慧眼と、人柄が伝わる文章をいくつか挙げてみます。
私の記憶ですので、正式な引用ではない事をお許しください。
 
◯刻苦勉励型の人間はギャンブルには向かない
作家の人を見る目は凄いものだと唸りました。
ギャンブルをされるかたならば、誰しも納得されるのではないでしょうか。
コツコツと積み上げて何かを達成するのが得意な人は、確かにギャンブルに適性が無いと、私も乏しい経験から思います。
「ヤクザな奴のほうが博打には強い」と伊集院静氏も書いていましたが、ギャンブルに強い人よりも、弱い人の傾向を見抜くほうが恐らく難しいでしょう。
ことギャンブルに関して、これ以上の至言を私は知りません。
 
その話を聞いて、私は慟哭した。そしてその慟哭はなお、私の胸の中で続いている。死ぬまで止むことはないだろう。
満州で仲の良かった同級生が、終戦後に引き揚げきれず、父親に銃で頭を射抜かれて最期を遂げたという話を伝え聞いて。
「そこに座りなさい。目をつぶって、頭の後ろで両手を組みなさい」
父親に言われて、その子は黙って従ったと。
情に篤い、ムツゴロウ氏の人柄を伺わせる文章です。
 
 〇僕は男だからね。うちにいた人間が作った借金は全部責任を持ちます。
これは下に引用させて頂いた記事(週刊新潮がソースのよう)から。
あきる野市の「東京ムツゴロウ動物王国」破綻で生じた借金を、ムツゴロウ氏が完済した際の弁です。
齢70才を越えてから3億円の借金を保証人として背負い、8年かけて完済したというのですから、すごいバイタリティです。
自己破産を選んでもおかしくない金額と年齢ですが、ご本人曰く
「やれる仕事は何でもやった」と。
強いですねえ、ムツゴロウ氏。

出所:www.gruri.jp 

ライオンに右手中指の第一関節まで食いちぎられても、

「こんなの怪我のうちに入りませんよ」

「スタッフには、私に何かあっても死ぬまでカメラを回し続けるように言ってあります」

と笑って豪語した、ムツゴロウ氏。

「おー、よしよしよしよし♪」だけの人ではないのです。

甘く見てはいけません。

是非、ムツゴロウ氏の著作にてお確かめください。

          以上 ふにやんま