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ふにやんま ー 世界の小所低所からー

http://funiyanma.hatenablog.com/  

なぜ日本ではいいQBが育たないのか?

スポーツ

アメフトが好きなので、NHKーBSでNFL中継を全試合見るのは勿論ですが、余裕がある週末には大学の地方リーグ戦なんかも見に行ったりします。一生懸命、且つ微笑ましいプレーが見られてなかなか面白いものです。

リーグ戦も終盤になると、負けたチームが競技場の外で大きな体を並べて、膝を抱えて泣きじゃくっていたりします。やっぱりアメフトはいいなと感じる光景です。

関東や関西のように指導者に恵まれていないので、プレーのレベルはとやかく言いませんが、概して部員の数と選手のサイズ、サポートスタッフに恵まれた国立大学のチームに向上心がなく、少人数の私立大学のほうが気持ちが入っているように思います。今や制度がとても良いほうに変わって、全国全ての大学(厳密には1部にいないと無理ですが)に甲子園ボウルへの道が開けているというのに、実に勿体ない話です。みんな真剣にやろうよアメフト。

 2014ー15年シーズンは、国内アメフトのTV中継が地上波から完全に消えた、大変残念な年になってしまいましたが、それもやむを得ないと思っています。

甲子園ボウルもXボウルもライスボウルも、新しいアメフトファンを作れるだけ魅力的か?と聞かれれば、ノーと答えるしかないですから。いくら私がアメフトファンでも、そこまでは庇いきれません。


比較自体がナンセンスなのは承知の上ですが、日本のアメフトとNFL別のスポーツと言って良い程の差があります。

競技人口があれだけ多いアメリカで、「フットボール・モンスター」と呼ばれるNFLプレーヤーは、アスリートとしての身体能力、フットボールのスキル共に、日本のアメフトとは桁が違います。

ポジション別に桁の差はありますが、やはりQBのスキル差が歴然なのが、見る側とすれば大きいですね。

「客を呼ぶのはオフェンス、勝敗を決めるのはディフェンス」とNFLでは言われますが、ゲームの面白味という点では、QBが左右する比重が圧倒的に高いです。

日本にいいQBが現れないのは、単純に選手の競技歴が浅いという事もありますが、QBのポジションスキルの特異性に拠るところが大きいかと。

日本のカレッジQBは野球経験者が多いので、狙ったところにボールを投げる感覚は体に染み込んでいます。だからスローイングの練習をみっちりすれば、ショートパス、ミドルパスなんとか投げられるようになります。

ただ日本人は概ね手が小さいので、いくら野球では強肩で鳴らした選手でも、パスのスピードが上がらないというのが私の持論です。手のひらを広げた時の親指と小指の先端の距離、いわゆるスパンが小さいとボールに十分なスパイラルがかからないので、必然的にヘロヘロパスになるはずなんですね。

スパイラルを意識し過ぎてか、手首をコネて投げる癖がついた学生QBを見ますが、あれは直らないまま現役を終えることが多いのでしょう。

レッドスキンズのRGⅢはやたらと手が大きくて、ボールにレースが無くてもスパイラルがかけられると、アメリカのTVでやっていたそうです。その番組見たかったなあ....

 

社会人も含めた日本人QBが、NFLに決定的に劣るのがロングパスですね。

うまくディフェンスを振り切り、プレーコール通りのルートをレシーバーが走って、QBに手を振れるぐらいのワイドオープン、いわゆる「どフリー」にならないと、まずロングパスは出ません。

日本で見事ロングゲイン!というシーンでは、パスの軌道は大概、最短距離の直線です。野球の投球のような感じですね。

アメリカ基準のQBは、ロングパスひとつ取っても、要求されるバリエーションが非常に多彩です。「狙った場所にコントロールよく、ズバッと投げる」ピッチャー的なパスは基本中の基本。それとは軌道が全く異なるパスも投げられないとダメなんですよ。

追いすがるCBにカットされないよう、レシーバーは全力で走る。レシーバーが目いっぱい伸ばした手の、さらにその指の先に、頭越しにピタリとパスが収まる。観客席は総立ち。いわゆる「 NFLパス」というやつです。

 

↓ 動画が分かりやすいかと。1分32秒からの6位と5位のタッチダウンパスがイメージに近いですね。滞空時間が無いとレシーバーが走れないので、そもそもロングゲインにならないのが分かるはず。

1位のキャム・ニュートンのTDも凄いです。彼はQBの上に身長196cm、体重110kg。このサイズでこの身体能力。まさにモンスター!

www.nfljapan.com

アメフトの、この種の「浮かせて落とす」ロングパスには、軌道だけでなく時間の概念が入ってきます。

QBはパスを投げる際、パスの軌道だけでなく、滞空時間も同時にコントロールしなければなりません。

この時間の概念というのが、他の球技には見られない特異なスキルで、日本人QBには体得しづらい難関なのです。言い切る割には完全に私見ですが。

似たものを強いて挙げるなら、サッカーのフリーキックが少し近いでしょうか。

FKの名手は、蹴る前にゴールネットへ向かうボールの軌道が見えるらしいですが、そこで求められるのは「時間」と言うよりも一定以上の「速度」ですよね。

GKが反応できない速度でさえあれば、多少のズレがあっても構わない訳で、QBのロングパスの発想とは厳密にはこれまた違います。

同じくサッカーですが、ではMFのラストパスはどうでしょう?DFの裏を取って走りこむFWに向けて、足元にドンピシャのキラーパスコース、スピードの両方が求められる訳で、これはFKよりはQBのパスに近いように思います。

バスケなら、ポイントガードが投げるアリウープパスなんてのもありますね。

ですがキラーパスにもアリウープにも共通するのは、

・パスの出し手と受け手の距離がアメフトほど離れていない

・受け手はボールの軌道を終始目で追いつつ、自分の速度をアジャスト出来る

と言うこと。

アメフトのロングパスの場合は40ydだ50ydだといった距離の長さに加え、レシーバーがパスの軌道から、頻繁に目を切らなければなりません。しかもDFを振り切るため、全力疾走です。

オーバーヘッドで飛んでくるロングパスのキャッチ直前には、ボールを「見る」「取る」がほぼ同時ぐらいの感覚でしょう。

レシーバーの走力及び捕球技術(ハンドスキル)の高さと、プレーが予めデザインされたアメフトならではと言えばそれまでですが、プレーコールを基に実際の敵味方の動きにあわせてパスをアジャストする能力は、さすがNFLのQBと唸らざるを得ません。

NFLのQBは地肩の強さも半端なく、ロスリスバーガーなんかポイッと軽く投げたと思ったらロングパスだったりしてよく驚かされます。あれはDFも相当守りにくいかと。セインツからスティーラーズに移籍したレシーバーが「今までブリーズが最高のパサーだと思っていた。でもロスリスバーガーの肩の強さには驚いた」とコメントしていたので、NFLのQBの中でも、トップクラスの強肩なのは間違いないでしょう。BSの解説で河口さんもそう言ってましたし。

ロスリスバーガーで思い出しましたが、マイケル・ビックの左サイドスローもすごいですね。ショートパスならほとんどノーモーションで、手首だけでビッと投げてしまう。ボールを肩より上に振りかぶることなく、かなり下手(したて)の変則的なリリースポイントで投げるので、相手DFがパスに反応出来ないシーンをよく見ました。まあ味方も慣れるのに大変だと思いますが。

今年(2015-2016)はロスリスバーガーの控えQBとして登録され、「スティーラーズ&ビック」のあまりの似合わない組み合わせに呆然としましたが、第4週マンデーナイト、チャージャーズ戦4Qのビックは良かったですね。久々に「走って投げる」ビックが見れて嬉しかったです。「ビック、まだまだやれるじゃん!」と全米が思ったはず。第3Qまではラン攻撃主体でイライラしましたが。

チャージャーズで思い出しましたが(きりがないですね)フィリップ・リバースもよく強肩QBで名前が挙がります。あれは顔で得してませんかね?剛腕顔とでも言うのでしょうか。

 話を戻しますが、今年のアメフトW杯でカナダのHCが、「カナダにはベースボール文化が薄いから、QBの育成が難しい」とコメントしていました。野球のスキルも、決して無駄にはならないようです。掛け持ちで野球もやっていたNFLのQBは多いですから。

詰まるところ「動く標的に向けてボールを投げる」感覚を、幼少から身に付けたアメリカ人QBにはかなわない、という結論に落ち着くのですが。

それを言っちゃあ、おしまいですかね? 

タッチダウンPro 2015年 10 月号 [雑誌]

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          以上   ふにやんま