ふにやんま ー 世界の小所低所からー

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北大路公子の誘惑

『面白ければ何でもあり』

を信条とする私にとって、北大路公子氏の本に引き寄せられたのは必然と言えば必然なのかと。

長澤まさみ榮倉奈々がファンだと公言している札幌在住のエッセイストだと言えば、思い当たるかたが多いのでは?(どうも美人を引き寄せる傾向があるような気がしますがが、そこはスルーで)

今年6月発売の最新刊は明日ご紹介するつもりですが、まずは既刊3冊から。これを読んでからのほうが、より楽しめますので。

元々、日記形式のブログから北海道で人気に火が点いたかたですから、ブログを書くかたにはそこも参考になるかと。

 

日常からネタをピックアップするセンスと、軽妙な語り口。北海道中が騒然となった(憶測です)のも納得です。この世界では東海林さだお氏級の逸材ではないかと。

真似しようとして出来るものではありませんが、メジャーデビューにまで至る、本物の「人気ブロガー」のレベルの高さを伺い知ることが出来ます。

 

『苦手図鑑』北大路公子(2013)

苦手図鑑 (単行本)

苦手図鑑 (単行本)

 

テレビが古くなり、音声が徐々に失われていく「テレビクライシス」は、爆笑。

 とにかく以来、電源を入れた最初の数分間だけテレビが無音状態に陥るようになったのである。(中略)

だが、それを故障と呼べるかどうかは微妙であった。なにしろ最初だけである。(中略)

 そんな私の楽観論を嘲笑うかのように、しかし事態は悪化していった。無音時間は徐々に長くなり、気がついた時には十五分もの長きにわたるようになっていた。つまり一時間番組を見ようとテレビをつけると、そのうちの四分の一が音声なしということである。四分の一。刑事ドラマであったら、殺人事件が起きて、被害者の身元が特定されて、彼のマンションから不審なメモが発見されて、それを手にした主人公が驚いたような表情で同僚に言う。「・・・・」。すると相手もまた驚愕の表情で「・・・・」、そこへ事件を知った友人がやってきて「・・・・」と結構なところまで話は進み、しかし肝心の台詞は聞こえないのである。

うーん。やはり抜粋してしまうと面白みは半減してしまいますね。この後テレビは電源を入れてから5分程度は画面が現れず、音声回復まで含めて正常な視聴まで20分を要するように。そして20分は30分へと伸びていくのですが・・・。

 

もう一つさわりだけ。「おでんの記憶」

【一食目】(冒頭略)

 透き通ったたっぷりの汁に、美しい造形のタネ。人生そのものを肯定するような優しい湯気が私を包む。ひたすら歓喜へと向かう料理、おでん。おおよそ十五人前のそれを、両親と三人で幸福のうちに食す。

【二食目】(中略)

煮込み料理を厳として支配するのは、大鍋信仰のみではない。そこには翌日信仰もまた脈々と息づいている。二日目のカレーと並び、人々の心を魅了し続けてきた「翌朝のおでん」。実際おでんは一夜の眠りを経て、成熟の度合いを増している。(中略)

【三食目】

現代日本においては一日に三度の食事が一般的となっているが、たとえば夕飯から朝食までの間と朝食から昼食までのそれとでは、時間的な幅が大きく異なる点についてはどうか。どうかと言われても困るだろうが、つまりは「ついさっきもコレ食べたよね」という、理性とはまったく別の場所から湧き上がる思いを昼食の食卓でどう処理すべきか、ということである。

 もちろん今はまだ騒ぐほどの問題ではない。おでんは十分に美味で、私と母はそれを食べた。しかしすべての破綻は小さな違和感から始まることもまた事実だ。三食目のおでん。それはまるで凶兆を思わせるように、タネの角がところどころ欠け、汁が濁り始めている。

ここから一気に【九食目】のオチまで突っ走るのですが、我が家では子供達も含めて、しばらくは「おでんは4日目からが美味しいんだよね」という北大路ネタがブームとなりました。

本格的なおでんシーズン到来の前に読んで欲しいなと。あ、もう来てましたね。

 

生きていてもいいかしら日記

生きていてもいいかしら日記

 

  

頭の中身が漏れ出る日々 (PHP文芸文庫)

頭の中身が漏れ出る日々 (PHP文芸文庫)

 

 

下の3冊は、冒頭の3冊と時系列では逆になりますのでご注意を。こちらのほうが先に、札幌の出版社から刊行されています。単行本デビューは2005年。

枕もとに靴―ああ無情の泥酔日記

枕もとに靴―ああ無情の泥酔日記

 

  

最後のおでん―続・ああ無情の泥酔日記

最後のおでん―続・ああ無情の泥酔日記

 

  

ぐうたら旅日記―恐山・知床をゆく

ぐうたら旅日記―恐山・知床をゆく

 

 

人に良かれと思って面白かった本を勧めたら、「こんな不真面目な本のどこがいいの!」と呆れられた事が何回もある。そんなあなたには、どれもうってつけの本だと保証します。

『笑わない自信があったのに・・・。』という椰月美智子氏の帯(『頭の中身が漏れ出る日々』)が、全てを物語り秀逸でありました。

                              以上      ふにやんま