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ふにやんま ー 世界の小所低所からー

http://funiyanma.hatenablog.com/  

あるほどの菊投げ入れよ棺の中

短歌

あるほどの菊投げ入れよ棺の中 

親交のあった女流歌人、大塚楠緒子 (おおつか くすおこ) が35歳の若さで亡くなった際の漱石の追悼句です。

深い悲しみが命令形の激しさに乗って切々と伝わる名句であり、漱石の俳句の中ではベストだと思います。

 

文豪漱石も、俳句だけはお世辞にも上手いとは言えないというのが私の見立てです。うわ、怒られそう。

漱石の句はどうも理が勝るというか、理屈が通り過ぎて面白味が無い。

膨らみが無いんですよね。

しかも正岡子規という最高の師匠に恵まれながらですから、直接子規に指導されたと思われる年月の短さを差し引いても、やはり俳句に向かない性格だったのでしょう。

漱石にしてみれば、大きなお世話だと思いますが。

 

漱石は句集もあり、数だけは結構な俳句を残しています。

しかし後世に残るような句は、残念ながら見当たりません。

俳人漱石 (岩波新書)

俳人漱石 (岩波新書)

 

 しいて挙げるならば、

菫(すみれ)程な小さき人に生れたし

ぐらいのものでしょうか。

これもロンドン時代のエピソードや、陰々滅々とした漱石の気質についての伝聞を知ればこそ、はじめて句の可憐さと漱石像のGAPに惹かれるのであって、予備知識なしに聞いたら決して名句とは言えませんよね。

漱石の句」という前提があるからこそ生まれる面白みであり、句自体の自立性、自走性が無いのは明らかです。

 

では何故、冒頭の名句が生まれたかというと、この句もともとは

『あるだけの情け集めよ棺の人』

漱石が詠んだものを、当時漱石と師弟関係にあった与謝野晶子が、冒頭の句に直したという説があるそうで。

 

↓ こちらで知りました。回答者のかたが貼ったリンクは失礼ながら見る必要はありません。

detail.chiebukuro.yahoo.co.jp

 

研究者ではない為、真贋のほどは定かでないのですが、漱石の生硬で固い作風と、天才歌人与謝野晶子の添削の冴えが句の前後から伺い知れる、よく出来たエピソードで気に入っています。

晶子の添削に「うむ、良くなった」とか言いながら頷いている漱石の姿が眼に浮かぶようで。

ちなみに本当だとすると、漱石43歳、晶子32歳の時の合作になりますね。

誕生日まで確認していないので大体ですが。

晶子の処女歌集「みだれ髪」は、彼女の23歳の時の出版。その若さと、歌の完成度の高さには驚かされます。

 

でも本当は、「俳句だけは、お世辞にも上手いとは言えませんでした」と評する以外にない、漱石の文豪ぶりにあらためて驚いて欲しいというのが真意だったりするのでした。

 

今日(12月9日)は漱石忌

              

       以上    ふにやんま