ふにやんま ー 世界の小所低所からー

http://funiyanma.hatenablog.com/  

電鉄系スーパーはなぜ経営が苦しいのか?

小売・外食業界が好きです。

その時その時の消費者心理が如実に表れるので、業界そのものが「時代の鏡」として変わっていくのが面白いなあと。

それぞれの業界で気になる経営者を一人だけ挙げるとするならば、どちらも故人ですが中内功氏と藤田田氏ですね。ビジネスでも人間性でも、興味が尽きないおふたかたです。

 

今日は「電鉄系スーパー」について。

電鉄系スーパーと聞いてもピンとこないかたが多いと思います。

「八社会」という電鉄系スーパーの団体がありまして、その加盟企業の主な顔ぶれは、

小田急商事株式会社   

・株式会社京王ストア    

・株式会社京成ストア

・株式会社京急ストア   

相鉄ローゼン株式会社   

・株式会社東急ストア

・株式会社東武ストア 

・株式会社広電ストア 

といったところ。

八社会には加盟していませんが、関西だと阪急オアシス、静岡には静鉄ストア、九州だと西鉄ストアなんて企業もありますね。

『電鉄系スーパー』と一括りにするのはちょっとまずくて、昨今はJR各社もキヨスクの改廃、大手コンビニとのタイアップなど、小売事業で独自のアクションを起こしているので、まあ「私鉄系スーパー」と捉えて頂いて結構です。

一連の企業名を見ると、何となくイメージが湧いてきませんか?

電鉄系スーパーには概ね共通項があります。

・同系列とすぐに分かる百貨店がある

・何となく高級感がある(百貨店効果)

・私鉄沿線に店舗が集中している 

そして、

・なべて経営が苦しい

 

個々の企業の損益等は置きまして、最後の「経営が苦しい」理由について考えてみます。

①そもそも電鉄本体と系列不動産会社による地域開発の一環、沿線価値向上の為の生活インフラとして生まれた事業なので、「採算性への関心」が極端に薄い体質が創業から染みついている。それがなかなか抜けない。

 

②店舗の賃料(家賃ですね)の支払先が、系列不動産会社であることが多い。公的には否定されるでしょうが、小売事業は電鉄系ではかなり格下。いわば「余業」扱いです。従って賃料の値下げ交渉なんてものには応じてもらえないので、平均賃料がバカ高い=固定費が高い。

昔は「どうせグループ内で金が回るのだから、小売事業(百貨店は含まず)はトントンで十分」と公言して憚らない私鉄経営者もいたぐらいです。さすがに時代は変わりましたが。

首都圏にPASMOが導入された時、私鉄系スーパーなのに支払いに使えない事に驚いた記憶はないですか?来店するお客さんは、ほぼ100%PASMOSUICAを持っているというのにですよ。

実は、あれはクレジットカードと同様、お店には手数料負担が発生します。

賃料含め高コスト体質の私鉄系スーパーとしては手数料が惜しい。惜しいと言うより、払えないというのが正直なところではなかったかと思います。

注)PASMO支払いへの未対応店舗を残す私鉄系スーパーは、今でも複数あります。

 

③格下事業のトップは、言い方は悪いですが当然ながら電鉄本体からの天下り。系列会社の社長とはいえ、当人にしてみれば本線から外れた(駄洒落じゃないですよ)という認識しかありませんから、一念発起してスーパー事業を盛り立てようなどという意欲はさらさら無し。

小売業について素人ならば、勉強するなり人を招くなりすれば良いのですが、結局「鉄道屋さん」から一皮剥けることなく任期満了。社内の軋轢を恐れない大胆な「改革」なんて夢のまた夢。これでは下も変わりません。

 

④「ロケーション(立地)」というスーパーマーケット最大の武器を持っているので、何もしなくても対競合で圧倒的に優位です。駅ナカ、駅チカと立地は抜群に良いので、放っておいてもお客さんはガンガン来ます。

なので「もっといいスーパーになる!」「新しいお客さんを開拓する!」といった主体な意識が芽生えにくいんですね。

 

⑤最大の毒は、私鉄系スーパーの中に「親会社は腐っても〇〇電鉄」「潰れることはない」という親方日の丸意識がはびこりやすい事。

系列に百貨店もあったりするので、お客さんも勝手に「やや高級なスーパー」のイメージで見てくれますから、エリア最安値を求めたりはしません。

かくして「うちはいい物を、適正な価格で提供するのが使命」とかいう耳触りのいいフレーズが社内に蔓延していきます。いい物を本気で探したり開発したりする行動を伴わずに。そこには危機感が伴いません。

 

⑥補足的な要素ですが、私鉄系スーパーは沿線の開発と同時に出店するパターンが多い為、商圏内の世帯構成が似通っている事も弱点になります。

開店時は消費意欲の旺盛な若いファミリーが多かったのが、時が経てば一斉に高齢化を迎える訳です。客層が様々な店舗に比べて、これは不利な上に自力で対処しようがありません。

開発が同心円状に広がっていかない限り、売上げは緩やかな下降線をたどる事になるでしょう。

 

なんかキツイことを書き連ねましたが、あくまでも一昔前の話であって、今や各社ともにこうした旧態依然の体質から脱却しようと必死です(だと思いたい)

阪急オアシスなんて、ここ数年で見違えるように店舗が良くなりました。

元々体力はあるので、本気を出せば伸びるのが電鉄系スーパー。

愛と期待を込めての叱咤激励と、大きな心で受け止めて、どうか怒らないでくださいね。

 

f:id:funiyanma:20151229070430p:plain

       以上 ふにやんま