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ふにやんま ー 世界の小所低所からー

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『超したたか勉強術』 佐藤優

『超したたか勉強術』 佐藤優(2015) 

超したたか勉強術 (朝日新書)

超したたか勉強術 (朝日新書)

 

本書は『超したたか勉強術 私が外務省研修指導官だったら・・・』という連載時の原題を覚えておいてください。ビジネスマン向けの汎用性のある勉強法、学習法の本らしく見せかけたタイトルですが、実際は佐藤氏得意の世界情勢分析、インテリジェンス寄りの内容です。ご購入の際はご注意ください。

 

佐藤氏の著作を読む場合、国家の罠』『獄中記』はマストですね。  

国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて

国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて

 

 

獄中記 (岩波現代文庫)

獄中記 (岩波現代文庫)

 

氏が如何なる人物か、何を是とし何を非とするのかを知るには必須の2冊。これらを踏まえずに氏の著作を読んでも、決して理解が深まらないと思います。

私の佐藤優氏評は、

「義に篤い」

「知的レベルが高く実践的」

「元外交官らしくモノの見方がごくフラット」

結果として総合評価は、

「信頼が置ける」

昨年(15年)2月にトマ・ピケティ氏が来日した際、佐藤氏が対談や解説に引っ張りだこだったことからも分かるように、氏の基礎教養の深さと論理的考察力は、今の論壇では断トツでしょう。宗教と民族面の理解も深く、社会科学系ではほぼオールマイティと言っても良いかと。

外務省での実務経験があり、同志社大学神学部時代からアカデミックな探求を独自に続けてきた佐藤氏のような経歴だと、池上彰のような存在は軽視しがちだと思いますが(根拠なし。決めつけです)、池上氏のことを認めて意気投合しているのも、フラットな見識を持つ佐藤氏らしいなと思って見ております。

 

補)『神学の思考』佐藤優(2015)

さっぱり分かりませんでしたが、挑戦することに意義はあったという事で。

神学の思考

神学の思考

 

 

『超したたか勉強術』 に戻ります。

仮想的な外務省研修官の立場で「世界情勢の読み解き方」「インテリジェンス思考法」をイギリスの歴史教科書から学ぶ、という内容ですが汎用の「勉強術」にも触れていない訳ではありません。 

「プレミアム商品」か「バーゲン品」か

あなたは、他愛もない話に見え隠れする、相手のユーモアのセンス、機転、教養など、また、自己顕示の程度などから、その人の「力量」を推し測っていることだろう。それは相手も同じである。あなたの実力がいかほどか、さりげなく測っている。

仕事相手として信頼できるか、尊敬できるか、もっと距離を詰めたいと思うこともあれば、ほどほどのお付き合いに、と思う場合もある。

具体的な商談はしていなくても、取引先との会食は、自分自身が「プレミアムのついた商品」にもなれば、「バーゲン品」にもなる、もう一つの商談の場だ。

話の流れによっては、政治や国際情勢にまで及ぶことがある。(中略)

会食相手の中で地位の高い人から、「イスラム国」についての話を振られたら、あなたはどう応じるか。

読者も肌身で感じていると思うが、サラリーパーソンとして仮に大企業に籍を置いていても、定年までの安泰は保証されない。それでも企業の一員である以上、利益の最大化のために組織の論理に従うことを求められる。しかし、唯々諾々と従うだけでは、やがて用済みとなってリストラされるか、冷や飯を食わされるリスクがつきまとっている。

あなたを取り巻く状況は、刻一刻と変化しているのだ。その変化を察知し、行方を予想して身の処し方をアップデートしていく必要がある。これは前述した、国際情勢や政治動向についての見立てをアップデートすることと構造的には変わらない。

組織の論理と折り合いをつけつつ、自分なりの仕事の羅針盤(視座)をもち、そのことが組織にとって有益だと認識させるだけの「したたかさ」がなければ、生き残りは難しい。

しかし、新聞や雑誌、ネットなどの情報をただ並べても、そこから新たな「声」は聞こえてこないし、自分なりの視座を獲得するような考え方の習慣は身につかない。

新たな「声」を聞くためには、まず基礎教養ー歴史、哲学、思想、宗教、文学、経済、数学(少なくとも高校程度)などーが必要だ。

ヒト・モノ・カネの越境が大前提になっている現在、ビジネスパーソンに国際的感覚が求められていることは言うまでもない。では、その国際的な感覚はビジネスの相手国についての知識をたくさん身につければ養われるのだろうか。あるいは、外国語を身につければ養われるのだろうか。

これらが必要なことは間違いない。しかし、海外事情や外国語を身につけても、それだけでは足りない。その人が拠って立つ基礎教養が備わっていなければ、ビジネスのカウンターパートからは決して尊敬されず、踏み込んだ関係は築けないだろう。

社会人としての根幹を作る必須の基礎教養のひとつは近現代史である。

このあたりは佐藤氏が、他の著作や対談で繰り返し述べている内容と同じですが。佐藤氏の本を未読のかた向けにピックアップしてみました。

本書では「勉強術」と謳った手前か、申し訳程度に一般論としての「勉強術」に関するコラムが4本収められています。多分、タイトルが決まってからの後付けだと思いますが。

①アナロジーや敷衍に磨きをかけ、脳の記憶容量を大きく変える丸暗記のすすめ

②デジタルデトックスで表現力と読解力を向上させる

クラウドと消せないボールペン

④「誤り」に向き合う、私のクラウド活用法

このコラムが意外と拾い物です。

 

あくまでイギリスの歴史教科書が、生徒の歴史観をいかに養うべく作られているかに関心がある事が前提ですが、なかなか読み応えのある硬派な本。買って損はなし。

以上 ふにやんま