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ふにやんま ー 世界の小所低所からー

http://funiyanma.hatenablog.com/  

『人間臨終図鑑』 山田風太郎 全4巻ようやく読了!

読書

『人間臨終図鑑』全4巻 山田風太郎(1986)

人間臨終図巻 1 (徳間文庫)

人間臨終図巻 1 (徳間文庫)

 

 1月7日に1巻を読み終わって、更に2巻を9日に読了。で、そこからが長かった。

全4巻ようやく読破しました。

著名人の臨終の模様が全部で923名分。本のボリュームだけでも大したものなのに、ついつい興味を惹かれてその人のことをwikipediaとかで調べてしまうんですね。それでなかなか前に進まない。おまけにKindle版で買ったので、一人一人のWEB検索がすぐ出来てしまう。楽は楽なんですが、これも良し悪しかなと。

 

「死を語ることは生を語ること」

詰まるところ生あっての死であり、死あっての生だということがよく分かりました。若い皆さんには漠然とした言い方に聞こえるかもしれませんが、40代も半ばを過ぎたおじさんぐらいの歳になって初めて分かる事もあるのですよ。なのでこの本は、若い方に強くは薦めません。ずっと持っておいて生涯何度も読み返すつもりなら別ですが。

 

本書、十五歳で亡くなった八百屋お七から、百二十一歳で亡くなった泉重千代まで、臨終の際の年齢の順に並んでいます。「毎年自分の誕生日には、自分と同い年で死んだ人物の生涯を辿るようにしている」というなかなか含蓄に富んだ読者レビューがありましたが、そういった読み方はすごくいいと思います。著名人であればあるほど、志半ばで逝った人が多い訳で、自分を省みる材料にはなりますね。

本当に今際(いまわ)の際の模様だけしか触れられていない人もいれば、熱くその生涯を語られている人もいて、山田先生の関心度、興味の持ち具合によって各自の記述の長さはまちまちです。

時折挟み込まれる山田先生の人物評が、寸鉄人を刺すものから心温まるものまでバリエーション豊富でまた面白く、先にも言いましたが本書⇔wikipediaの往復となること必定です。

 

亡くなられた年齢ごとの、章頭に置かれたアフォリズムがまたいいんですよ。

山田先生自らの手によるものも、半分ぐらい含まれています。

神は人間を、賢愚において不平等に生み。善悪において不公平に殺す。

ーーー山田風太郎 

生が終わって死がはじまるのではない。

生が終われば死もまた終ってしまうのである。

ーーー寺山修司

幸福の姿は一つだが、不幸のかたちはさまざまだ、

トルストイはいった。

同じように、人は、生まれて来る姿は一つだが、

死んでゆくかたちはさまざまである

ーーー山田風太郎 

おいとまをいただきますと戸をしめて

出てゆくやうにはゆかぬなり生は

ーーー斉藤史『ひたくれない』

 「いまだ生を知らず、いずくんぞ死を知らん」

ーーー論語ーーー 

「人間は、他人の死には不感症だ、といいながら、

なぜ『人間臨終図鑑』など書くのかね」

「・・・・・いや、私は解剖学者が屍体を見るように、

さまざまな人間のさまざまな死をみているだけだ」

ーーー山田風太郎

 「死を無と断定することは、人間の心を侮辱することだ」

ーーーパストゥール

自分が消滅したあと、空も地上もまったく同じ世界とは、

実に何たる怪事。

ーーー山田風太郎

「人生は生きるに値しない」と幸福な若者は無頓着に歌った。

が、八十五のときロバに蹴られると。この男は叫んだのだ。

「早く医者を呼んでくれ」

ーーーハン・ソーパー

このアフォリズム、年齢ごとに置かれているので結構な数です。

山田先生、決してシニカルな性格のかたではないので念のため。 

 

923名、しかも古今東西の有名人ばかりですから個々人については抜粋しようがないのですが、山田先生ご自身が他の著書でも触れているかたを二人ほど。

◇勝 海舟[1823-1899]

何にも申しませんが、ただ『コレデオシマイ』と申しました、(中略)

さすがは生涯人を食った海舟で、人間最後の言葉の中の最大傑作。

近松門左衛門【1653-1724】

「・・・・市井に漂いて商買知らず、陰に以て陰にあらず、賢に似て賢ならず、物知りに似て何も知らず、世のまがい者、唐の大和の数ある道々、技能、雑芸、 滑稽の類まで知らぬ事なげに、口にまかせ筆に走らせ一生を囀り(さえずり)散らし、今わの際に言うべく思うべき真の一生事は一字半言もなき倒惑」

大作家として、これ以上真率痛切の言葉はあるまい。作家の「最後の文章」中の最高作であろう。

まあ、変わった本であることは間違いありませんね。

奇書とはこういう本のことを言うのでしょう。

 

Amazonレビューを参考に、『妖異金瓶梅 

も読んでみましたが、こちらは途中でかなり飽きがきました。中国の古典に通じたかたならば、原作とアレンジの対比を面白く読めるのかもしれませんが。

 

私としては甲賀忍法帖路線のほうが、やはり好みですね。

 以上 ふにやんま