読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ふにやんま ー 世界の小所低所からー

http://funiyanma.hatenablog.com/  

『激安食品が30年後の日本を滅ぼす!』 河岸宏和

『激安食品が30年後の日本を滅ぼす!』 

河岸宏和(2015) 

激安食品が30年後の日本を滅ぼす!

激安食品が30年後の日本を滅ぼす!

 

去年の年末に出たばかりの、著者最新刊です。

河岸宏和氏は食品業界歴35年、紹介に

これまでに経験した品質管理業務は、養鶏場、食肉処理工場、ハム・ソーセージ工場、ギョーザ・シュウマイ工場、コンビニエンスストア向け惣菜工場、卵加工工場、配送流通センター、スーパーマーケット厨房衛生管理など多数。

とあるように、氏の食についての数々の警鐘は、豊富な実務経験に基づくものらしく非常に説得力があります。「〇〇という成分は危険だと海外では言われている」的な論調ではなく、素人にも「それは危ないよなー」と理解できる事例で訴えかけてくれる為、いちいち立ち止まって調べなくていいのが助かります。終始、懐疑的に本を読むと疲れますので。

大学を卒業し、大手ハムメーカーに就職すると、研修を受けることになりましたが、そこで私は、驚きの声を上げました。

ハムの原価計算の過程を見ていたときに、生の豚肉の価格よりも、製品として包装されるときの価格のほうが安価になっていたからです。

なぜかといえば、肉以外に、安価な植物性たんぱくなどをたっぷり使ったハムを作っていたからです。

私が大手ハムメーカーに入社したときは、肉100%に対して、植物性たんぱく、乳たんぱく、卵たんぱくなどで作成したピックル液を約60%程度注入し、ロースハムを作っていました。

「それがロースハム?」と思うかもしれませんが、日本の法律では、豚肉のロース肉を少しでも使用すれば、ロースハムと呼んでよいのです。 

 「えーっ!」と思いませんか?これが本当の水増しでは。「ロースハム」と聞くだけで高級感を持ってしまう私には、十分ショッキング。加工ハム・ソーセージに添加物が大量に含まれることぐらいは知っていましたが、ここまでやるかと。

ハムを卸している肉屋から「もっと安くならないか」と言われると、私の会社の営業部門は、生産部門や工場に対してハムの原価を下げることを要求してきました。(中略)その前線にいたのが私でした。

ピッケル液、水の注入量を増やせば単純に原材料コストが下がります。しかし、ただ注入率を上げたのでは、商品にならないので、着色料の色を増やし、化学調味料の量も増やすことで、現状品と食べ比べても違いのわからないレベルに仕上げていきました。

毎年10%ずつピックル液の注入量が増え、最終的には210%と、なんと豚肉の量よりもピックル液のほうが増えてしまったのです。

 「待てーい!」

さっき「肉100%に対してピッケル液60%」と言ったよね?その論法でいくと、210%は分母が肉だよね?ということは肉の2.1倍のピッケル液を加えたことになるよね?それは元の豚肉比で3倍になるということを示すんだよ、本当かい???

ハアハア (*´Д`)

この部分、常識的に考えて完成品のハムが元の豚肉比で210%、即ちピッケル液が豚肉比で110%ではないかという疑念が捨てきれないのですが。

後の章で、

このハム、50キロの肉で、100キロも出来上がるんです。

という問答が出てきますので、おそらく後者が正解でしょう。こういった点は本全体の信頼度に関わるので、誤解のないよう丁寧に書いて欲しかったところです。他に数字がおかしいと思われる部分はありませんでしたが。

それにしても豚肉が元の3倍(たぶん間違い)とか2倍とか、いずれにせよ異常ですよね。それはもうハムとは呼べないシロモノでは?

食品業界のタチの悪いところは、こういった消費者にとってマイナスの技術革新が、コストダウンになる限り必ず採用される為、歯止めがかからないという点でしょう。法律に触れない限り、消費者にバレない限り何をやっても構わないという経営者が生き残る。まさに悪貨が良貨を駆逐する状態です。

 

本書の中核は

『第2章 激安の現場を行く』で、

1 激安スーパー

2 100円回転寿司

3 激安焼肉屋

4 激安居酒屋

5 牛丼屋

6 弁当屋

7 立ち食いそば屋

8 焼き鳥屋

といった構成です。

冒頭の水増しハムの件(くだり)は『はじめにかえて』という前書きに相当する部分、しかもメーカーの話ですので、この本の中核、第2章で触れられる激安スーパー・外食企業の実態には驚かれると思います。確実に暗澹たる気持ちになりますが。

注)ちなみに告発ばかりではなく、褒められている企業もあります。実名が出ているのはロイヤルホスト大戸屋吉野家、鳥貴族です。

 

この種の本に付きまとうのが「安い食品を求めているのは結局消費者」「企業側はそれに応えざるをえないから、そうしているだけ」という論理ですね。 

ですが河岸氏の指摘は主に衛生管理、食中毒のリスク回避といった食の安全の基本的な面からなされている為、「それは供給側に都合のいい論理であって、安全が担保されていない安さの追及が横行しているのが現状では?」と反論することが出来ます。

既に日本の食は、消費者も賢い目を持ちましょうといった綺麗ごとでは済まない世界になっているようです。相手は食品加工のプロ。素人が太刀打ちできる相手ではありません。 

スーパーは潰さずに「育てることが大事」

この先、皆さんが歳をとったときのことを考えてください。スーパーは徒歩圏にあるべきなのです。

今営業しているスーパーは、地元の肉屋さや魚屋さんなどを潰した上で、成り立っているケースが多いのです。その責任をスーパーは絶対に負うべきなのです。ですから、スーパーに通いながら、そのスーパーを育てていくことが大事なのです。

食の安全に関わる問題について、多くの消費者が問いただしていけば、そのスーパーは、自分たちの行為について、はじめて疑問を持つようになり、正面から向き合うようになります。(中略)

ぜひ消費者の積極的な行動で、スーパーを育てていきましょう。

正論ではありますね。

「疑問に思ったことは、すべて店に問い質していけ」と筆者は結んでいるのですが、疑問が残りました。価格と安全がトレードオフの関係になっている現状下、それを容認したうえで経営を進めているスーパーに対して、意見することが果たして有効かどうか。

声を上げねば何も始まらないというのも正論なのですが、激安スーパー・外食企業の自浄能力にそこまで期待していいものでしょうか?

以上 ふにやんま