ふにやんま ー 世界の小所低所からー

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『卑怯者の島』『土漠の島』 戦争もの2本立て

『卑怯者の島』小林よしのり(2015) 

卑怯者の島: 戦後70年特別企画

卑怯者の島: 戦後70年特別企画

 

 ずっと読みたかった本をようやく。『戦争論』系譜のノンフィクションもの、舞台は沖縄だと勝手に思い込んでいたのですが、全く違っていました。

架空の島の設定ですが、あとがきによるとパラオペリリュー島を参考にしたとのこと。そして物語は完全なフィクションで、史実に基づく登場人物は皆無。ひたすら現実の戦闘の残虐性、戦地の非人間性を描いたもので、読み進めるのにはそれなりの覚悟がいると申し上げておきましょう。『戦争論』で思い知らせれましたが、バンザイ・クリフ沖縄戦での母子の岬への身投げなど、大コマを使った小林氏の戦争描写はキツい。本当にキツい。文章表現にはないキツさです。

本作、日頃の小林よしのり氏の主張と一番重なるのは作中で「隊長」と呼ばれる矢我欣也少尉の、次のような台詞でしょう。

盗っ人でも帰りたがるその国を守るために・・・

明治以来、膨大な数の若者が死んでいったのだ!

そしてここで我々が玉砕を恐れ逃げることが・・・

帰るべき祖国を永久に失う結果につながるかもしれん!

今、この時、祖国の存続を誰が保証する!

まさか、米国が保証するときさまたちは言うのかっ!?

多分に戦後史観に基づくストーリー漫画として割り切って、

「そんなこと、当時の日本兵が言うかい!」

とか突っ込まずに読んで欲しいと思います。

『卑怯者』とは誰なのか。

『卑怯者の島』とは何処なのか。 

なかなかに考えさせられる長編でした。ラストは台詞も含めて減点対象ですが。

日本人必読!とかいうレビューもありますが、そこまで言うつもりはないです。

 

 

『土漠の花』月村了衛(2014) 

※ネタバレあり

土漠の花

土漠の花

 

続いて読んだのがこちら。意図せずして戦争ものが続いてしまいました。文庫化もされているベストセラーですよね。厳密に言えば自衛隊が海外ソマリアで、民族間の紛争に意図せず巻き込まれる話で戦争とは言えないかもしれませんが。

順番的に不謹慎の誹りを受けそうなのが辛いところですが、純粋なエンタテイメントとして、これ面白いです。350頁を一気に読ませる疾走感と緊迫感に溢れています。

月村氏の本を読むのは初めてですが、流行作家だけのことはありますね。他の本も読んでみたくなりましたので、『槐(エンジュ)』を早速買ってきました。『機龍警察』とかタイトルだけで拒否反応が出ていたのですが、どんな話かぐらいは調べてみようと今は思っています。

本作に戻りますと、

自衛隊が保護するアスキラ(虐殺された部族の生き残りの姫)が善、対立する部族が悪という勧善懲悪の構図が単純過ぎる上、最後までひねりが全く無い。

自衛官一人一人の書き込みに対し、ソマリア武装民兵の描写があまりに画一的。みんなこんなに北斗の拳レベルの、分かりやすい悪者ばっかりなのか?

・ご都合主義が露骨。ストーリーの要を握る、貴重な移動手段の車やバイク、ガソリンがそんなにアフリカにはポンポン放置されているのか?運よく助かる間一髪シーンが多すぎないか?一応精鋭という設定の自衛官が、戦闘中に薬莢で滑って命拾いしていいのか?

自衛官ですので、仲間を助ける為に心ならずも自分がやられるという事はあるでしょう。しかし自爆とか、バイクで機銃掃射の雨をぶっちぎっての人間火炎瓶アタックとかは非現実的過ぎないか?それなりに動機の伏線は張られていますが。

といった細かな疑問が積み重なっていくものの、戦闘シーンの目まぐるしい変化と映像的な描写で、有無を言わさず読者を引き込む、グイグイ感に溢れています。

これ、映画にして欲しい!

と唸らせるシーンが何回もあります。

自衛官が海外でバンバン死に、ソマリア人の民兵をバンバン殺す映画ですので、相当作りにくいとは思いますが。まず自衛隊の製作協力は得られないかと。

頭を空っぽにして物語のハイスパートに身を委ねる。そんな読み方が一番お勧めの「ハリウッド系小説」ですね。

「あー面白かった、久々にドキドキしたよ」

それがこの本への最大の讃辞でしょう。

 

以上 ふにやんま