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ふにやんま ー 世界の小所低所からー

http://funiyanma.hatenablog.com/  

『3月のライオン』 から好きなセリフを選んでみた

コミック

3月のライオン羽海野チカ(2007-) 

3月のライオン 11 (ジェッツコミックス)

3月のライオン 11 (ジェッツコミックス)

 

上の11巻が最新刊ですね。つい最近読み始めましたが、あっと言う間に追いついてストックが無くなってしまいました。

連載が月間誌なので、単行本は1年に1冊強のペースでしか出ないんですね。

なんてもどかしいんだ!こんなに面白いのに!と全国の愛読者を等しく悶絶させているに違いない名作3月のライオンから、好きなセリフを選んでみようと思います。

なお、あまりに有名なコミックの為、作品紹介は省略させて頂きます。読者層の間口もとても広いですし。我が家では、家族全員が今や大ファンです。

未読のかたは損してますよー。ご注進しましたからねー。もう知りませんよー。

注意)以下、未読のかたは避けられたほうが賢明かと。コマの絵は使いませんが、それでも興をそがれるのは間違いないと思います。

 

 

【1位】11巻  Chapter110「大阪④」最終コマ

もういい黙れ・・・

ふざけんな

カッコウでもいいや」と思えるんなら

裸で木にとまって

虫でも喰ってろ

コミュ障気味で引っ込み思案の主人公、草食系にして「ひなげし」のように大人しい桐山君が、男として人間として大きな成長を見せる大事な1コマのセリフ。彼の生い立ちを知るもの(読者全員か)には痛切に響くセリフですね。不意に見せられる彼の飛躍に、涙したかたも多いのでは。文句なしの断トツ1位。

 

【2位】9巻  Chapter89「三月町の子」最終コマ

もうダメッ

がまんできないっっ

お願いひなっっ

ちょっとコレ持ってみて!!

おっおねいちゃんまでっっ わああん

高校に合格して、片思いだった野球部の高橋君と離れ離れになるひなちゃん。

思い切って入学前に美容室で「大人っぽくボブにして下さい」と言ったのに、前髪が座敷わらしかこけしか、という仕上がりになった際のお姉ちゃんとのやり取り。ひなちゃんのセリフは青字にしています。

お姉ちゃんのセリフの小さな吹き出しの中に、ドロップ缶の絵が。ドロップって火垂るの墓』の節子かっ!という技ありの1コマ。大笑いしました。

川本家三姉妹の明るい毎日の象徴のようで、大好きなセリフです。これも思い入れがありまして、オートマティックに2位決定。

 

【3位】6巻  Chapte55「告白」

母が死んでからは

私が ひなとモモの母親のかわりだった

私は19歳でわからない事だらけだった

でも 母に頼まれたの

だから必死に頑張った

「周りの事もちゃんと考えなさい」

「ひとには親切にしなさい」とか

えらそうな事

言い続けてきておいて

いざとなったらこの有り様・・・

正義なんてどーでもいいから

逃げて欲しかったって

思ってしまった

ひなが友だちの為に

精一杯がんばっているのに・・・

私は・・・

中学校でいじめにあった友達を助けたことで、やがて不登校になったその友達の代わりにいじめられるようになった妹を思う、3姉妹の長女あかりさんの桐山君への告白です。

すげぇ勇気だ!!

大人にだってめったに出来る事じゃねえ!!

お前はすごい!!

俺の自慢の孫だ!!

お前は何ひとつ間違っちゃいねえ!!

友だちを助けたんだ!!

胸をはれ!! 

次は自分がやられる事になるかも知れないって思いながらも

それでも友だちの側を離れなかった

ひなの勇気とか正義を

褒めてやるべきじゃねーのか?

というおじいちゃんの言葉とのコントラストに読者は一瞬戸惑いますが、次女ひなちゃんへの二人の同質の愛情を感じる名セリフ。形は違えども、ひなちゃんを案ずる気持ちは一つ。川本家の強い絆に胸を打たれます。ペアで第3位。

 

【4位】10巻  Chapte97「もうひとつの家」最終コマ

その晩私は夢を見た

零が ほんとの私の子供であった夢だった

ほんとの子供になった彼は

居間でだらしなく

寝そべってお菓子を食べ

テレビを見

「早く寝なさい」と言う私に

「うるさいなぁ」と口応えをした

ーーー私は

「なぁんだ コレじゃ歩や香子と同じじゃないか」

ーーーとがっかりしながら

心から

ほっとしていた

主人公:桐山 零君が家族を失ってから、一つ屋根の下で面倒を見てもらった幸田棋士の家を出て久々に(と言っても高校生なんですけどね。史上5人目の中学生プロ棋士という設定なので)訪ねた際の幸田夫人のセリフです。 

人生はいつも「立ち向かう」か「座り込む」かの二択だ

何もしないでいて救かる(たすかる)なら  僕だって そうした

ーーーでも そんな訳無い事ぐらい 小学生にだって解った

だから 自分が居てもいい場所を 必死に探した

自分の脚で 立たねばと思った

一人でも

生きてゆけるように

そう自分の生い立ちを振り返る桐山君は、将棋を必死に突き詰める事によって自分の居場所を見出し、それによって幸田棋士の家庭を結果的に崩壊させてしまいます。幸田棋士の娘と息子は桐山君と違って、将棋で父の期待に応えることが出来なかったから。

 

3月のライオンを傑作たらしめている所以は、実はこの4位のセリフの中にあるのではないかと。

自らの手でこしらえたに等しいような、人工的で危うい自我を抱えて生きる桐山少年(高校生ですが)。彼の生活の糧である将棋は、彼の全てであると同時に、瞬時に全く無価値なものに転じる危険を孕みます。

この引き裂かれた状態で、彼が将棋と自らの「生」の意義を如何に見出すのか。読者はハラハラながら見守る事しかできません。

”March comes in like a lion and goes out like a lamb"

ー3月は、ライオンのように荒々しい気候で始まり、子羊のように穏やかな気候で終わるー 

この英語の慣用句の前半が『3月のライオン』の表紙にはタイトルの英訳として印刷されています。

そうだ、ここまではまだ、桐山君のStrum und Drangシュトゥルム・ウント・ドラング)の時期なんだ、やがて将棋の駒が「成る」ように、彼の人生は劇的に変わるに違いない。そう期待して物語の進展を待ち続けるしかなさそうです。オールラウンダーの彼の棋風も、その時には闘志溢れるものに変わるのでしょうか。

 

キリよく5位で終わるのが普通でしょうが、下位からではなくいきなり1位から始めたのと同様、あえて定石を外して4位までで終わります。

この愛すべき将棋漫画に敬意を込めて。

 

以上 ふにやんま