ふにやんま ー 世界の小所低所からー

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『機龍警察』月村 了衛 大人のエンターテインメント!

『機龍警察』〔完全版〕月村 了衛(2014) 

人体を模して設計された全高三・五メートル以上に及ぶ二足歩行型軍事専用有人兵器『機甲兵装』。

キモノとは着物、すなわち〈着用する得物〉から来た警察特有の隠語で、機甲兵装全般を指す。

ややトンデモ系の米軍の研究開発情報でたまにニュースになりますし、『ゴルゴ13』でも登場したことがありました。軍事目的の人型破壊兵器。人間が身にまとう強化アーマースーツが実現した社会。当然ながらブラックマーケットに出回る密造品で、悪党共は大暴れします。

警察官のピストル程度で太刀打ち出来る相手ではありません。何しろ軍用兵器ですから、圧倒的な破壊力と防御力を兼ね備えています。

そこで登場するのが警視庁自慢の未分類強化兵装『機龍兵』(ドラグーン)3体。「世界最高水準」と称されるその実力を如何なく発揮するために、警視庁はその搭乗員として身内ではなく傭兵と契約。閉鎖的な警察組織内で白眼視されながらも、機龍兵を擁する特捜部は立て籠り事件に対峙する・・・。

待って下さい!

大人の読むものじゃないな

私には関係ないジャンルだわ

と今思ったかた、トバさないで。いや、このブログはトバしてもいいので『機龍警察』を本屋さんで見かけたら、斜め読みだけでもして貰えませんか?

もしもあなたが面白い本をお探しならば。

 

本書は巻末でSF研究家の堺 三保氏が看破しているように、

現実ギリギリの世界観が生み出す緊張感が魅力の近未来SF 

です。これ以上に適切な表現はちょっと思いつきません。

そして堺氏も補足しておられますが「近未来SF」とは言っても未来的なのは機甲兵装だけで、時代設定は基本的に「今」です。今の世のなかに忽然と機甲兵装が出現したイメージで読んでいける。これが大きい。

ご安心ください。パトカーが空中を飛び交ったり、警官がボディスーツとヘルメットを着用したりはしておりませんので。

煙草も喫えば缶コーヒーも飲む。青島刑事が出てきてもおかしくない設定であることが一つ。

もう一つは、機甲兵装同士の戦いや装備メインの小説ではないということ。

レーザービームが目から出たり、3体が合体したり、ジェットストリームアタックを敢行したりはしません。

機甲兵装については、作者が意図的にカタカナ表現を最小限に抑えたと見ます。

 

この二点でだいぶ抵抗感がなくなりませんか?エンターテインメントに関しては一流の、月村了衛氏の代表作。初めからシリーズごと捨てるのはあまりに勿体なさすぎる!

作者自身もこう語っています。

そもそも私は本作の着想を得たときから、説得力のある作品として成立させるためには警察官、それもキャリア官僚への取材が不可欠であることを大いに自覚していた。

ご安心ください。エンターテインメントの神様は才能あるものの味方。作者はとびきりの適任者への取材が可能になり、本書に活かしています。

本作でデビューする数年前に私は結婚していた。妻にはシステムエンジニアの弟がいて、彼の前職がなんと警察官だった。何かの折に、警察を辞めた理由を訊いたことがあるのだが、義弟は「警察は自分が思っていたような所ではなかった」とだけ答えた。正義感の彼にとって、実際にまのあたりにした警察の実態はそれほどショッキングなものであったらしい。

うんうん。そういう組織観、「権力は必ず腐敗する」という前提が抜けた警察フィクションこそが、大人の読むに値しないものだと思います。

警察小説を書いておられる先輩作家の方々も同じだろうと思うが、よく訊かれる質問に、「警察って本当にこうなんですか」「まさかここまで酷いことはないでしょう」といった類のものがある。

それらに対する回答はこうだーーー「実際はもっと酷い」

あとがき的な位置づけの、巻末の『自作解題』からの引用ばかりになりましたが、本書『機龍警察』が書かれた前提をまずは知って頂かないと、抵抗感の強いジャンルかと思いまして。

 

機龍兵初登場の場面で、特捜部の傭兵メンバーが現場で浴びせられる罵倒です。

「帰れ!」制服警官の間から声が上がった。「現場泥棒が!」

「外注のクセしやがって」

「素人はオペレーションの邪魔だ」 

「ゴロツキが、テロを食い物にしやがって」

「警察にはSATがあるんだ」

「貴様らなんか警察官じゃない」

 

本書の中盤では、精鋭舞台のメンバーとしてピックアップされた特捜部メンバーへの同僚達のやっかみが噴出する場面もあり、暗澹たる気持ちにさせられます。警察って絶対こんな感じなんだろうなあと。

それこそがリアリティですよね?


SFとはいえ、現代のリアリティをギリギリのラインで保ちながら警察小説としてもしっかり読ませる『機龍警察』シリーズ。

まだ1作目しか読んでいないので『自爆条項』『暗黒市場』『未亡旅団』『火宅』とあと4冊も読めるのです!

今月の3連休が楽しみだぜっ!ということで。

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【おまけ】

昨日読み終えた本。本格推理ものはアタマが受け付けないことを再認識。お好きなかたにはたまらないのかも知れませんが、正直ダメでした。 タイトルはスタイリッシュで最高だと思いますが。

定説「SF好きと推理小説好きは重なりが少ない」どおり。読了した自分を褒めてあげたい。

その可能性はすでに考えた (講談社ノベルス)

その可能性はすでに考えた (講談社ノベルス)

 

以上 ふにやんま