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ふにやんま ー 世界の小所低所からー

http://funiyanma.hatenablog.com/  

『いぬやしき』 から目が離せない

『いぬやしき』奥浩哉(既刊:6巻)

 

いぬやしき(6) (イブニングKC)

いぬやしき(6) (イブニングKC)

 

 

奥浩哉氏のGANTZに続く新作。2014年から連載が開始されています。

今週4月22日に最新刊の6巻が出ました。コミックと電子書籍が同時発売されるありがたい作品です。みんなこうして。
 
GANTZ既読のかたには話が早いと思いますが、大体あんな感じの絵柄とお話(大雑把な紹介だな、おい)です。多分同じように、好き嫌いも分かれる作品でしょう。
 
GANTZ』は訳の分からないままに物語がドンドン進んでいくスピード感と、個性的な画風が、おーっ!新しい! と若者から火がついた作品。
 
感情描写を省いた?能面のようなキャラクター達が、洗練されたデザインのバトルスーツを身に付けて、バカにしたような設定のナントカ星人達と街中で闘う。
 
どうも粗筋だけだとステレオタイプな感じですが、マンガにおける表現の可能性を広げた、革新的な作品だと高く評価しますね。
 
人間描写はお世辞にも巧みとは言えませんが、無機物の描写には不思議な質感があり、とても魅力的。
説明不要。不条理でいいじゃん!という思い切った発想に基づくストーリーとあわせ、日本のマンガ全体に与えた影響は大と言って良いでしょう。
 
で、新作の『いぬやしき』です。
タイトルは主人公、犬屋敷壱郎さん(58)の苗字からとったもの(だと思います。これが何かの伏線だったらかなりビックリですが)
ちなみに犬屋敷さんのビジュアルはこう  ↓ 
いぬやしき(1) (イブニングKC)

いぬやしき(1) (イブニングKC)

 

ストーリーとタイトルのギャップがすごいのですが、奥浩哉氏は妙な諧謔趣味を自ら楽しんでいるところがあり、『いぬやしき』1巻でも

お前GANTZ信者じゃん
人殺しばっかのクソマンガ読んでっからさ
ネットでクソマンガ認定されてるぜ
あれ意味わかんねーし・・・
アマゾンとか2ちゃんとかで みんなボロクソ言ってんじゃん

というようなセリフが出てきます。横道に逸れましたね。

 

 『いぬやしき』では、

①家族からないがしろにされ続け、病で余命3カ月宣告を受けた老け顔サラリーマン 犬屋敷 壱郎

ペシミスト高校生 獅子神 皓(ししがみ ひろ)君

この両名が墜落してきたUFO?に巻き込まれて死亡。

痕跡を残したくない宇宙人?が、たまたま積んでいた、この星を滅ぼすほどの兵器ユニットによって二人を修復、何の情報も与えずに放置していく。

注)どんどん「これは大人の読むものじゃないな」という印象を強めているような気がするのですが、そんなことないですからね! 自分の筆力の無さがうらめしい・・・。

 

異文明によって圧倒的な能力(戦闘だけでなく、不治の病の人間を救ったりも出来る)を与えられた二人が、その力に徐々に目覚め、模索しながら使い方の方向性が見えてくる、というあたりまできているのですが、当然ながら二人は対立構造に置かれます。

何しろ地球を滅ぼすぐらいの力ですから、二人で意気投合して破壊神化されたら話が終わってしまいます。

ストーリー的には、拮抗した二人の力の交錯がこれからの見どころなのですが『いぬやしき』の私的おすすめポイントを2点。

 

ロボットとして変形する時のグラフィックが斬新

特に犬屋敷氏。ふつうのおじいちゃんが、超絶戦闘ロボットとして変形するインパクトは強烈。その変形の具合がまた、いかにも異文明を思わせる新奇なもので、これはもう奥浩哉氏、一種の天才の域ですね。

生物的な変形ではなく、メカニカルな精巧さを残しての変形としては、こんなグラフィックは世界的にも無いのでは?と思わせます。

小説ではとうてい表現不可能なレベルで、冒頭のマンガの表現領域を広げたという評価は、『いぬやしき』で不動のものになったと言っていいでしょう。べた褒め。

 

ディスプレイ経由の狙撃、というアイデア

何巻のどのあたり、というのはネタバレになるので触れませんが、 脅威の戦闘兵器としての白眉がこれ。パソコンやスマホでターゲットと会話した後に「おい、何かやれるもんならやってみろよ!」と挑発してくる相手を画面から狙撃。

不条理の極みと言えば極みですが、このアイデアには唸りましたね。これも文章で表現すると、絶対にその驚きが伝わらない。またしてもべた褒め。

「いや、それは元ネタがちゃんとあるで」という事でしたらごめんなさい。でも、仮に元ネタがあったとしても、『いぬやしき』並のインパクトが出せているかどうか。

 

という訳で、総括すると

『いぬやしき』の面白さはマンガにしかできない表現にある 

 

かの筒井康隆 御大もどこかで書かれていましたが、

小説には、漫画では決して出来ない表現が可能である」

とよく言いますよね。

互いに自負はあってよいし、それぞれの表現方法の可能性を追求してくれれば読者にとっては嬉しいのですが、『いぬやしき』はマンガ側からの強力なアピールになり得る作品だと思います。道徳的な内容である、とは言いませんが。

 

【補足】好きな言葉のひとつ
ジャンルに貴賤なし。あるのはただ、ジャンル内の貴賤のみ。

 

なお期限は分かりませんが、今(4/24)の時点ではAmazon電子書籍の無料コミックに1巻がエントリされています。

 

 以上 ふにやんま