読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ふにやんま ー 世界の小所低所からー

http://funiyanma.hatenablog.com/  

エンターテインメントを満喫せよ 『ガンルージュ』 月村了衛 最新作!

『ガンルージュ』 月村了衛(2016)

ガンルージュ

ガンルージュ

 

本物のエンターテインメントの迫力は「無茶な設定」の違和感を凌駕する。

これが私の持論なのですが、月村了衛氏はいつも、これを地で行く弾けっぷりで楽しませてくれます。

好きだなあ、月村了衛

本作もAmazonレビューだと「5」と「3」で真っ二つの様相。

私のようなエンターテインメントに理屈はいらないぜ!派の人は満点。

いやいやいくらなんでもある程度のリアリティは必要でしょ?派の人が3点。

というのが私の見立て。

面白ければなんでもありが、フィクションの世界の価値基準だと思うのですが。

 

本書の粗筋紹介。Amazon「エディターレビュー」から引用。

韓国の大物工作員キル・ホグン率いる最精鋭特殊部隊が日本で韓国要人の拉致作戦を実行した。事件に巻き込まれ、人質となってしまった中学1年生の祐太朗。日本政府と警察は事件の隠微を決定した。祐太朗の母親で、かつて最愛の夫をキルに殺された元公安の秋来律子は、ワケあり担任教師の渋矢美晴とバディを組み、息子の救出に挑む。

 「あたしたち、最強の相棒。」

韓国最凶の特殊部隊が日本に潜入。

迎え撃つは、元公安のシングルマザー&女性体育教師!?

ちなみに秋来律子さん、かつては公安一の腕利きで、FBI人質対応部隊でも最高の成績を修めた実力者だったという設定です。 

過去を捨て、ひとり息子の祐太朗君にも、自分と同じ公安だった父親の事すら一切語らず、市井のシングルマザーとして暮らしてきました。

しかし政府からも警察からも、かつて自分が身を置いた公安からもすら見棄てられようとしている息子の絶体絶命のピンチに、13年のブランクを破って立ち上がる!

 

引きました・・・?

月村了衛氏の作品って、粗筋紹介すると大体引かれるんですよね。

ちょっとご都合主義が過ぎない?

それって大人が読むもの?

 漫画の原作? 

 

本書の場合だと、

韓国特殊部隊って分かってる?軍人だよ軍人。まして精鋭だけを選り抜いた特殊部隊に、いくら公安№1だったとか言っても女性が敵うわけないじゃん。

女性担任教師って何だよ?一般人なんか秒殺だって。

とか言われるに違いない訳ですよ。

 

ですが、断言しましょう。 

月村了衛をなめんな!

著者コメント

「(アクションorサスペンスor興奮に)手に汗を握りつつ、泣いて笑ってしんみりと。私の持てる技術をありったけ投入した、あなたのためのエンターテインメントです。」

 

結論から言うとものすごく面白い一冊です。無茶な設定も、なんとか合理性を持たせる工夫が施されています。

自分が訓練を受けたFBIのHRTは人質対応部隊であって暗殺部隊ではない。殺人技術に関してはソバンサの方が圧倒的に上回っている。

だが、自分は絶対に負けるわけにはいかない。

ネタバレになるので詳しくは書けませんが、母親として相討ち覚悟で向かっていく律子さんの、超人的な活躍は決して荒唐無稽ではないのです。

捨て身の母親ほど強いものがありましょうか?

正面から敵と対峙する機会の少ない、夜の山中を闘いの場に設定してあることも、本来劣勢な女性コンビにはプラス材料になります。

腕力よりも、勘と機知に勝るほうが生き残る。冴え渡る律子さんの戦場勘。

 

一方、女性体育教師の美晴さん。

彼女の活躍については理屈でフォローしきれません。

金属バットで〇〇〇〇〇〇を〇〇〇〇ところを筆頭に、突っ込みどころは多々あります(一番好きなシーンですけどね)

※美晴さんの金属バットは冒頭で伏線として使われていて、最後にうまく回収されるのがまた気持ちいい。

でも本書を一級のエンターテインメントにしているのも、彼女の貢献大なので、目をつぶってあげて欲しい。

実に愛すべきキャラクターです。

  

読み終った後に、大声で笑いだしたくなるような快作。スカッとします。

「なんか面白い本ないかなー」とお探しのかた、この週末にお薦めですよ。

 

【補足】

月村氏の『機龍警察』シリーズもエンターテインメントファンのかたにはたまらないかと。

GWに、シリーズの2、3巻にあたる下の2冊を読んで面白さを再確認。

どちらかと言えば『暗黒市場』のほうが話が練られていて、作品としては上だと思います。ロシア警察のストーリーとか、そのまま渋めの映画のシナリオになりそう。

誉田哲也楡周平を足して、ガンダムで割ったような(読まないと、何を言っているのか決して分からないと思いますが)オリジナリティ溢れるシリーズです。

好き嫌いが分かれること請け合いなのが難と言えば難ですが、そのぐらい個性的なほうが、無難な本よりも100倍いいでしょう。

 

機龍警察 暗黒市場 (ミステリ・ワールド)

機龍警察 暗黒市場 (ミステリ・ワールド)

 

 以上 ふにやんま