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ふにやんま ー 世界の小所低所からー

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『路地裏のヒミコ』 飴村 行 ”粘膜” ファンなら読んでおこう

『路地裏のヒミコ』 飴村 行(2014) 

路地裏のヒミコ

路地裏のヒミコ

 

飴村氏の "粘膜"シリーズが好きで、過去にエントリしたこともあります。

お気に入りは『粘膜蜥蜴』『粘膜戦士』

すごい新人が現れた!と興奮したものです。

funiyanma.hatenablog.com

粘膜シリーズは角川ホラー文庫でしたが、こちらは文藝春秋ということで作品のテイストが ”粘膜” とはだいぶ違います。

文芸路線と言うのでしょうか?少なくとも、飴村氏の本は初めて読むというかたにも読了できるような内容。そんなに ”粘膜” シリーズがキツい訳ではありませんが。

表題作「路地裏のヒミコ」「水銀のエンゼルの二本の中編からなる本書。前者は書きおろし、後者は初出が「別冊文藝春秋」となっています。

いずれも時代設定は飴村氏初の「現代」で、新境地に挑む!みたいな位置づけかと。基本的に文章は上手い人なので、現代語?だと読みやすさに磨きがかかります。スイスイ読めてしまう感じ。

 

「水銀のエンゼル

物語の3分の2過ぎぐらいまで、割と淡々と進みます。

飴村ファンとしては「そんな訳ないだろう」と初めから分かっていますので、スムーズな話の運びを、微笑ましく見守るのが正しいスタンスですね。

「さあ、ここからどう持っていくの?」と。

この手のサスペンス・ホラーを読み慣れたかたなら、冒頭の編集者との会話の中に、伏線が張られていることに割と早い段階で気づくと思います。伏線のキーがどこにあるかも、「ああ、ここだな」と見破れるかたが多いのではないかと。

しかし最後の、作者渾身の一捻りまでは想定外ではないでしょうか?

やっぱり飴村行は才能あるなあ、と思わせる仕上がりです。

ちょっと気に入らないのはタイトルぐらいでしょうか。

いくつか削ったほうがスッキリするエピソードも挙げられますが、初めての中編ということで、そこはおまけ。

 

「路地裏のヒミコ」

こちらを本の表題にしたのは納得出来ますし、2編のどちらを評価する?と訊かれたら普通はこちらを選ぶでしょう。

「水銀のエンゼル」は、近しいストーリーを書ける作家が他にもいるかも、と思わせる常識(私の基準での ”常識” )的ラインですので。最後のラッシュを除いては、の限定付きですが。

飴村ファンで無ければ問題ないレベルですが、私の場合は期待値が高いので、本作への評価は「もう少し頑張りましょう」ですね。うわっ偉そう。。。

 

前半があまりにも冗長であること

結末が唐突過ぎること

この2点は多くの同意して頂けるのではないかと。

「冗長」と言っても、読んでいてダルいという意味ではなく(重ねて言いますが飴村氏、文章は上手いです)ボリュームの割に結末に活かされていないという点で。

結末は十分に楽しめるし納得性もあるのですが、最後のギアチェンジが激し過ぎて読者に違和感を与えます。

フィニッシュ寸前で急にスピードが上がる為、それまでのテンポとのズレがしっくりこないんです。ババババッと話を終わらせました、みたいな相当に作者としては不本意であろう印象が拭えません。

 

だったらこの話、もっと短くていいじゃん!

そう思わせたら、中編ではマイナスだと思うのです。

 

飴村氏は好きな作家なので、どんどん新しい領域、新しい作風にチャレンジして欲しい。

飴村行は ”粘膜” だけじゃない!と自信を持って薦められるような傑作を待ってます。

 

以上 ふにやんま