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ふにやんま ー 世界の小所低所からー

http://funiyanma.hatenablog.com/  

『悩みどころと逃げどころ』 ちきりん☓梅原大吾 噛みあわない対談を満喫せよ

読書

『悩みどころと逃げどころ』 ちきりん☓梅原大吾(2016) 

悩みどころと逃げどころ(小学館新書)

悩みどころと逃げどころ(小学館新書)

 

【ポイント】

①第1章「学歴」第2章「競争」

ーこのあたりの二人の噛み合わなさが見どころ

ウメハラ氏、地頭の良さと言語化能力が半端ない

-書籍として最終的に「ちきりん氏監修」だと見るべきなのは目を瞑って

ウメハラ氏がゲーム業界の永続的な成長を目指す姿勢は圧巻

 

14歳で国内最強の地位を固め、17歳で世界大会に優勝。

アメリカの企業とプロ契約を結び、「世界で最も長く賞金を稼いでいるプロゲーマー」としてギネスに認定。

都立高校卒業まで「学校は寝るところだった」と言い切る "プロ格闘ゲーマー" 梅原大吾氏と、かたや学歴エリートにして "社会派ブロガー” ちきりん氏の対談。

 

足かけ4年に渡って、二人が語り合ったテーマは

「学校教育について」

これがなかなか面白いです。

序盤のちきりん氏のお嬢さんっぷりと、ウメハラ氏のリアリストぶりの噛み合わなさ。

ここを楽しめるかどうかが本書の評価の分かれ目になると思います。

中盤からは「いい人生とは何か」「幸せになるとはどういうことか」「職業と収入と時間」といった、二人の見解がかなり近い話題に移っていきますので、安心して読めるようになってしまいます。←否定的な言い方すんなよ、と突っ込み。

 

まずはちきりん氏の発言から見てみましょう。

私が見てきたのは「ちゃんと勉強したのにこんな悲惨なことになるとは知らなかった」って人たちなんです。

だから「大学に行くな」とまでは言いませんが、「大学さえ出ておけばなんとかなる」という考えは、明らかに有害だと思う。(中略)

しかもずっと「いい会社に入ること」が目標だったから、入った会社でむちゃな働き方を強いられても、「こんな働き方はおかしい」「やっぱり違う!」って、自分で判断してやめることもできない。

私の認識だと、今は生きていく力が強い人ほど学校に頼らない。ウメハラさんにしても、学歴を含め、経歴を何も開示せずに活動してる私にしても、その例でしょ。

いいえ、ちきりんさん。あなたの認識は間違っています。具体的な学歴を開示していない事と、学歴に頼っていない事はイコールではないでしょう。特にあなたの場合には。高学歴の示唆材料、多過ぎ。

親だって、教育熱心で経済力がある家ほど、公教育をあてにしなくなっている。で、インターナショナルスクールに行かせるとか、夏はアメリカで教育系のキャンプに参加させるとか、ネットで勉強させようとか。そういう動きが出てるのって、彼らが「日本の教育にはたいした価値がない」と思い始めてるからなんです。

どんだけ意識の高い家庭だよ!

それはちきりん氏のようなかたの周りには、そういう家庭を営む皆さんが集まる傾向があるかもしれませんが。

日本の家庭の大多数は、そんなレベルの高い事、考えてないと思うけどなー。

うちが「教育熱心でも経済力がある訳でもない」からでしょうか。反省。反省してもおそらく改善しないけど。

環境に恵まれていない人ほど、「この状況から抜け出すには、とりあえず学校だけは行かなくちゃ」みたいになって、経済状態が厳しくてもアルバイトをしたり借金をしてまで学校に行く。ところがその学校は、生きていくために必要な力をつけてくれるわけじゃない。だからますます生きる力の格差が広がってしまう。

教育って本来は、環境に恵まれない人にリカバリーのチャンスを与えるための制度なのに、今はそれとは反対のことが起こってると感じるんです。だからウメハラさんみたいに「とりあえず学校に行って、大学までは出ておいたほうがいい」とは、私は全然思えない。 

ちきりん氏、社会のことは見えても自分のことはあまり見えておられないようで。

お嬢さんの意見だと言うのは、そういうことです。

 

対するウメハラ氏は徹底してリアル。天下のちきりん氏を向こうに回して、議論が成り立つ理解力と言語化能力の高さには唸らされます。

キレる上に発想力と戦略性がある。

世界トップのプロゲーマーになる人は、やはり地頭が違う。

それを見抜いて対談相手に選んだちきりん氏の慧眼にも脱帽ですが。

「学校なんて行く価値ないから」って言えるのは、やっぱり頭がいい人だと思うんです。もしくは猛烈に好きなこと、やりたいことがある人。

ウメハラ ちきりんさんは自分に学歴があるから気がつかないんですよ。僕がいた世界では、バイトでさえ学歴で人を判断する人が多くて、それが本当に屈辱的でした。

ちきりん バイトで学歴差別があったってこと?信じられないんだけど。

なぜ信じられないのでしょうか?

狭い人間集団ほど、そういう事は生じやすいものでしょう。

あなたの歩いてきた道は、綺麗に舗装された上に、特別に平坦な道だったんですよ。

そう言われないと分かりませんか?お嬢さん。

ウメハラ 厳しくされるのと見下されるのは全然違うんです。しかも面と向かって言われるならまだいい。(中略)

たとえばレジからお金がなくなった時、学歴のない奴が真っ先に疑われるんですよ。わかります?

ちきりん あ~、そういうのがあるんだ!

ウメハラ 本社まで呼ばれましたからね。「レジ触った?」「監視カメラつけてるから、調べりゃわかるんだよ」とまで言われて。

学歴がないことで苦しんでる人は、現実にはたくさんいると思います。だから「学歴なんか今の世の中では関係ない」とは簡単に言い切れない。

確かに自分で食ってける人や、自分で考えられる人は、高校や大学に行く必要はない。でもね、能力勝負の世界は椅子が少ないんですよ。たとえば日本のプロ格闘ゲーマーってせいぜい10人です。その中でまともに食えてるのは4、5人ですよ。それを考えると、「俺、勉強嫌いだし、ウメハラには敵わないかもしれないけれど、そこそこいけるから、プロゲーマーにでもなろう」なんて考えたりしたら、これはもうひどい人生になります。本人が決めることではあるけれど、「おまえ、こっち来ちゃ駄目」って言いたくなることはよくある。

ウメハラ氏が23歳で一旦ゲームの世界を離れ、28歳で復帰するまでの社会経験が大きく氏の人生観、ゲーム観に影響を与えたと言います。

あのブランクが無かったら、今のプロゲーマーとしての自分は無かっただろうと。

 

プロゲーマーの先駆者として、若者の相談を受ける機会もきっとものすごく多いと思うんですよね。

この人は自分の発言の重み、他人の人生について示唆をすることの恐ろしさを、よく知っている人だという印象を持ちました。聡明にして誠実。

なかなかの人物とお見受けしたので、この本も購入しちゃいました。

まだ届いてませんが。ゲームって全く縁のない希少人種ですが。楽しみ。 

勝ち続ける意志力 (小学館101新書)

勝ち続ける意志力 (小学館101新書)

 

ちなみに私、ちきりん氏の著書は全部読んでおりますし、ファンだと呼ばれることにも、やぶさかではありません。

あのちきりんが、珍しくボケたことを言っている!

その点だけでも価値のある本書でした。

これはレア。

 

以上 ふにやんま