ふにやんま ー 世界の小所低所からー

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(前編)『1985年のクラッシュ・ギャルズ』 柳澤 健

『1985年のクラッシュ・ギャルズ』 柳澤 健(2011)  

1985年のクラッシュ・ギャルズ

1985年のクラッシュ・ギャルズ


正直、クラッシュのことって記憶に無いです。
本書のタイトルにあるように、クラッシュ全盛の1985年前後って、男子プロレスでは第一次UWFが旗揚げして、新しいプロレスの時代が来た! ということで非常に盛り上がっていた時期なんですよね。
なので私の女子プロレス歴は1990年代から始まっており、本書にはかなり遅れている事が分かりました。

全女で言うと、覚えているのはブル中野北斗晶豊田真奈美井上京子あたり。FMWやJWPの試合も観に行きましたね。懐かし。
なのでクラッシュの現役時代(復帰前)の記憶が全く無いまま、話を進めます。
 
【トピック】
①全女スタイルの謎が解けた!
長与千種やっぱりすげー 
 

全女の知られざるルール

当時、若手のために用意されたタイトル、すなわち新人王、全日本ジュニア、全日本シングル王座のすべては、驚くべきことに独特の押さえ込みルールの下に行われる真剣勝負であった。 
全女流の「押さえ込み」は、次のような手順で行われる。(中略)
あらかじめ決められた時間までは、ごく普通のプロレスを行う。
五分の時もあれば、十分の時も、十五分の時もある。
リングアナウンサーの「〇〇分経過」のコールを合図に「押さえ込み」が始まる。
たとえばボディスラムでAがBをマットに投げつける。仰向けになったBは相手が触るまでは動いてはいけない。AがBの上に乗り、相手の両肩(肩甲骨)を三秒間マットに押さえつければAのフォール勝ちである。ただし、相手に乗る際に膝をついてはいけない。(中略)
押さえ込みルールの試合は、観客が見て面白いものではまったくない。 
今、膝を打った方いらっしゃいませんか?
私もプロレスファンの性として、TVで女子プロレスがやっていると一応見ておりました。
志生野温夫の実況、へったくそだなー」とか言いながら。
そうすると、この奇妙な展開が、やおら始まる事が確かにありました。
下になった選手が必死でブリッジで返す。攻守交替してまた押さえ込み、みたいな。しかも延々と。
この子たちは何をしているのだろう?
ずっと不思議だったのが、ようやく謎が解けました。
あれは決まりだったんだ!

全女が選手に求めるのは 、女同士のリアルなケンカである 。リング上では激しいケンカを見せるものの 、試合が終われば和気藹々 。冗談ではない 。女にそんな器用なことができるはずがない 。リング上で激しい戦いを見せるためには 、普段から険悪な人間関係を作っておく必要があるのだ 。そのように考える松永兄弟は 、選手たちの精神状態をコントロ ールして 、常に関係を悪化させる方向へと誘導していく 。強いライバル心をお互いに抱いている若手ふたりを見つけると 、すぐさまどちらかを抜擢する。
どうして全女は会長以下、誰も彼も松永なんだ?と思っていたら、なんと松永四兄弟だそうで。おそ松さんかっ!
一九八六年にジャパン女子が旗揚げするまで 、女子プロレス団体は全女ただひとつしかなかった。全女を去ることは、そのままプロレスラー引退を意味する 。ジャンボ堀は新人の頃 、足首を粉砕骨折する重傷を負い 、 「痛いから病院に行かせて下さい 」とコ ーチに必死に頼んでも 「サボるんじゃないよ 」と縄跳びをさせられた 。
全女キツいなー。しかも当時の全女って、年間250興行ぐらい打っていたんですよ。まるで女工哀史.....

デビューして売れるまでは給料も雀の涙、寮生の食事で、与えられるのはなんと米のみ。信じられん。プロレスラー志望の食べ盛りの子供達ですよ。
新人の基本給はわずか一万円 。合宿所は自炊で 、米だけは支給されるが 、おかずや調味料はすべて自費で購入する 。
仕方がないので夜中に近くの酒屋で空き瓶をカッパらって、昼間にその酒屋で換金してジャガイモを買ってふかしたり、マヨネーズを御飯にかけて食べたりしていたそう。戦後か!
「あんた達は米を食べ過ぎる」と経理から怒られる事まであったそうで。涙。
酒屋のおじさんはすべてを知っていて騙されてくれたのだろう 、と千種は今になって思う 。
ヒトの心の優しさが、身に染みますね〜。いくら逆境は人を育てると言っても、食い物の恨みは恐ろしいぞ。

一方、同期の中から抜擢されたエリート候補生も、巡業先では苦労が絶えません。
抜擢された選手は遠征に同行して 、百戦錬磨の先輩たちと試合を行う 。長時間のバスによる移動中も 、会場に着いてからも 、旅館に宿泊する時も 、一番下の後輩として朝から晩まで先輩から無数の雑用を言いつけられ 、虫の居所が悪ければ殴られる 。
試合中はもっと緊張する 。いくら危険を感じても先輩の技は受けなくてはならない 。受ける前にディフェンスすることは決して許されない 。相手の技を避ければ罰金を取られる 。頸椎損傷が一番怖い 。必死に受け身を取るものの 、頭から真っ逆さまに落とされればどうしようもない 。相手が受け身を取れるように落とすことはレスラ ーにとって最低限のル ールだが 、ル ールを守るかどうかは先輩の胸三寸なのだ 。
全女こえー。
そう言えば巡業のバスの中で、下っ端は先輩から「頭付けていいよ」と言われるまで、背もたれに頭を付けてはいけないという不文律もあったとか。それって先輩後輩だと当たり前なんでしょうか?寝れんがな。

全女でメインを張るようなレスラーは、皆このような苛酷な環境に負けず、試練を乗り越えてきた訳です。そりゃ強い筈。メンタルなんか筋金入りでしょう。


という事で、話は半分も終わってないまま、長くなってきたので次回に続きます!
全2回で。多分。

以上   ふにやんま