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ふにやんま ー 世界の小所低所からー

http://funiyanma.hatenablog.com/  

『京都ぎらい』井上章一

読書

『京都ぎらい』井上章一(2015)

 

京都ぎらい (朝日新書)

京都ぎらい (朝日新書)

いきなりこういう書き出しもどうかと思うが、京都にはいやなところがある。私は京都市に生まれそだったが、二十歳をすぎたころから、つくづくそう思い知った。おかげで今も、この街のことは好きになりきれないでいる。
自分は京都市に生まれそだったと、私は屈託なく言いきることができない。
ほかの街に、こういう心のもつれでなやむ人がいない、とは言うまい。しかし、京都が周辺住民にもたらす葛藤は、また格別である。この本は、京都ならではの、街によどむ瘴気を語ることから、話をはじめたい。
誰でも似たような話を、出身地に絡めてひとつふたつは挙げられるのではないでしょうか。
 
私も京都と芦屋に住んでいた事があるので多少は分かるのですが、関西はエリアの格付けが、すごく狭い範囲でなされているのが特徴的ですね。
 
私も芦屋市在住時は、住まいを聞かれる度に、
阪神芦屋です。
と、わざわざ阪神を付けていました。
六麓荘とか阪急芦屋とかに住んでいるハズもないのですが、一応そこを言っておかないと、話が面倒くさいことになるに決まっているので。
住所は芦屋ですが、モノホンの芦屋ではないんですよ〜、という注釈を付ける。
地元のお約束みたいなものですね。
芦屋浜の人達も、同じようにしていたと思います。
 
兵庫県繋がりでもう一つ。
兵庫県西脇市出身の子が、東京では神戸出身だと自己紹介していると聞いた時、私を含めた神戸支店OB2名が同時に突っ込みましたね。
 
西脇は神戸とちゃうやろ!
西脇が神戸やったら、姫路も三田も余裕で神戸やんか! と。
西脇市に罪はないのですが、
中国自動車道の北が神戸のはずあるかい!
やはり物事は、ほどほどが良いようで。
 
でもこういった笑い話レベルのお話と、京都のそれとは格段に違います。
嵯峨あたりの人間なんて、見下されるのはあたりまえやないか。私にむかい、そうどうどうと言いはなつ者もいる。
宇治の分際で、京都を名のるな。身の程を、わきまえよ。そんな京都人たちの怒号を耳にして、私は心に誓っている。金輪際、京都人であるかのようにふるまうことは、すまい。嵯峨そだちで宇治在住、洛外の民として自分の生涯はおえよう、と。
私が京都人をなじりたく思うのは、私に差別意識をうえつけた点である。彼らは、嵯峨をはじめとする洛外を、田舎だ僻地だとあざけった。そして私に、洛中が中心となる地理上の序列意識を、すりこんでいる。おかげで、私は亀岡や城陽を見下す、おろかな人間になってしまった。京都的な差別連鎖のはしっこに、いつのまにかすえつけられたのである、
このへん、余所者として京都に住んだ経験のないかたには実感し辛い、にわかに信じがたい話だと思いますが、京都という街には、そういう排他的な性格が色濃くあります。
 
洒落にならんがなオイ!というレベルで街ごとプレッシャーをかけてくるんですね。
その一点で、私は自分にも京都を憎む権利があると、考える。私を妙な差別者にしてしまったのは、京都である。人を平等にながめられなくさせたのは、この街以外の何物でもない。
何を大袈裟な、と思われるかたが多いと思います。
でも、一度引っ越してみたらきっと後悔します。
 
あなたは死ぬか京都を出て行くまで、外人なんですよ
 
忘れてはいけないのが、京都へのカウンターとしての大阪の存在です。
大阪では、京都に近いことが、しばしばからかいの的となる。こういう揶揄がなりたつのは、大阪人があまり京都をうやまっていないせいである。統計的には語れないが、私の実感でも、京都をみくびる度合いは、大阪がいちばん強い。(中略)首都のメディアがまつりあげる京都のすかした部分を、ないがしろにしてもらえる。洛中人士のほこらしげなところを、他の誰よりもあなどってくれるのは、大阪人である。
京都の人が余所者に優しいのは、学生さん(基本的に京大生を指す言葉。起源は三高まで遡る)と修学旅行の生徒さんにだけや、と言います。
 
京都洛中にはびこる選良意識というか特別感。
それを冷ややかに見る大阪、神戸のポジショニング。
 
三都物語とはよく言ったもので、はたから見てこんなに興味深いエリアは近畿地方を置いて他にないですね。
県庁所在市と、県下No. 1都市の反目どころではない。
 
京都洛中と洛外、更には近畿三都の断絶を白日の下に晒したという点で、本書は星5つ。
 
奈良、和歌山、滋賀県民の皆さんの言い分がそれぞれ山ほどあるのもよく分かります。
近畿で一括りにするな!
と言えるだけの歴史的経緯を持った府県が揃っていますしね。
 
『京都ぎらい』は実は『東京目線ぎらい』
言い得て妙だと思いました。
 
以上  ふにやんま