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ふにやんま ー 世界の小所低所からー

http://funiyanma.hatenablog.com/  

『抵抗の拠点から』 青木理

読書

『抵抗の拠点から』 青木理(2014)

朝日新聞慰安婦報道」の核心ーという副題が付いています。 

抵抗の拠点から 朝日新聞「慰安婦報道」の核心

抵抗の拠点から 朝日新聞「慰安婦報道」の核心

 

私、マスコミ業界って基本的に嫌いです。

生理的にあわない。

存在意義は理解するものの、昔からマスコミとか金融とか職業の選択肢に入れたことすらないですね。

「TV局は給料がめちゃくちゃいいんだぜ」

知らねーよそんなこと。

若いながらも、特にマスコミ業界にはうさんくさいものを感じておりました。

注)ちなみにここでマスコミ、金融にITを加えて3業種を「虚業」と言い切ってしまえば、あなたも手軽に伊集院静に。多くのかたを敵に回すこと必定ですが。

以上「あなたも伊集院静になれる」ワンポイント講座でした。

 

文学部卒でしたので、マスコミ業界希望者は周りに結構いましたけど、1社たりともハガキも出してないし面接も受けてない。

肌にあわないのが分かっていましたから。

公務員も眼中にありませんでした。

教員免許も取りませんでしたね。教師ってガラじゃないし。それだけでも世の中の役に立った気がします。

 

中でも読売新聞に就職するマスコミ志望者って、自己矛盾してないか?と学生時代から思っていました。

マトモな良識と批判精神があれば、あのナベツネ主筆である読売新聞は選ばないだろうと。

結局、大新聞社ならどこでもいいんだろう?

生意気でヒネた若者でしたねぇ。今から当時の自分に会えるなら、即ビンタです。


じゃあ朝日新聞は好きか?と言われたら答えはNO。

勝谷誠彦氏の「築地をどり」シリーズは全巻読んでいるぐらいで。

あっぱれ! 朝日新聞(笑) (WAC BUNKO)

あっぱれ! 朝日新聞(笑) (WAC BUNKO)

 

難関をパスしてきた高偏差値集団だけに、世の中を上から見やがって、こいつらホントしょうもねーなと。朝日に限りませんよ。 

本書で一番ウケたのが、2014年9月11日の朝日新聞・木村社長(当時)の誤報会見での以下の部分。

だが、この会見が異様だったのは、そうしたことごとばかりにあるのではない。

まずはメディアの謝罪会見をメディアが取材するという場での、当のメディア記者たちの自覚と自省の問題である。

たとえば読売新聞の記者を名乗る男性は会見で、気色ばんだ様子でこう詰め寄った。

「御社には、自発的に物事を検証する能力がないのではないか。自浄能力がないのではないかと感じる。そのことを社長はどうお考えか」

呵々。よくもこれほど厚顔な質問を吐き出せるものだとでんぐり返った。

正解フィクサーまがいの独裁的経営者に牛耳られ、社内言論の自由すら覚束ないメディアの記者が、ライバル社のトップに向かって「自浄能力がない」と詰め寄るマンガのような光景。お前が言うな、と野次のひとつも投げかけたくなる。

その読売の記者、なかなかセンスがあると感心しましたけどね。

自虐の精神を忘れては、ユーモアは成り立たない。

エスプリ利かせてんじゃん!と。

 

本書はインタビュ主体の「第3章 全真相 朝日新聞慰安婦報道』」が、リアリティを伴ったメディア論としてなかなか読ませます。

慰安婦報道に携わった朝日新聞OBは激しいバッシングを受け、教員として採用していた帝塚山学院大(大阪狭山市)と北里学園大(札幌市)には脅迫状が届けられ、学生や校内の安全を脅かすような記述により、結果として自主的な退職や契約更新の拒否に。

神戸松陰女子学院大では、内定を出していた朝日新聞在籍記者に対し、脅迫を理由に内定を取り消すという異常事態が発生しました。

大学は自治と学問の自由という大原則を高らかに掲げ、死守しなければならない。これを放棄する大学など存在するに値しないのだが、今回は複数の大学が無残に膝を折ってしまった。

情けないと言うのは簡単ですが、経営的に厳しい私学では難しい判断だったと思います。一方的に断罪するのは可哀想な面もあります。


双方(朝日新聞社とバッシング側)にとってなかなか大変な事態だった訳ですが、臆面もなく政権と同じ視点で「メディアによるメディア批判」に同調する大手の気骨の無さと、

もうちょっと作戦があってもよかったね。喧嘩の仕方を知らなすぎるんですよね、朝日は

そう元主筆のOBを嘆かせる朝日新聞社の戦略性の欠如、行き当たりばったりだった「誤報」対応が明るみに出た事には本書の意義があるかと。

 

かつて大手のメディア組織に所属する記者だった私は、すこし違う感慨も抱きながら市川氏の話を聞いていた。ああ、どの社も似たようなものなんだなと。ふだんはエリート然としてふんぞりかえっていて、紙面の影響力でも総合的な取材力でも社員の待遇面でも一頭地を抜いていたメディア組織の朝日にしても、所詮はこの程度のものなんだなと。そう記せば、読者のがっかり感をさらに加速させてしまうかもしれないけれど、朝日がこの程度なら、他社の内情は推して知るべきであり、これが日本のメディア界の偽らざる実情なのだろうと受けとめていただくしかない。

いや、別にがっかりしませんけど。

そんなもんでしょう、新聞社なんて。

自分たちの軽減税率適用だけさっさと決めるような業界に、期待なんかしてませんし。

 

知識人の転向は、新聞記者、ジャーナリストの転向からはじまる(丸山眞男

 

以上 ふにやんま