ふにやんま ー 世界の小所低所からー

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『キャプテン・アメリカはなぜ死んだか』 町山智浩

キャプテン・アメリカはなぜ死んだか』町山智浩(2009) 

リベラル社会派ブロガーみたいなエントリが続いたので(そんな大した内容じゃないですが)、本来の?毛色の変わった本を。

本書は『週刊現代』連載コラム 「アメリカで味噌汁」 を中心にまとめたもの。 

キャプテン・アメリカはなぜ死んだか (文春文庫)

キャプテン・アメリカはなぜ死んだか (文春文庫)

 

まあ「アメリカ人って本っ当バカだよな」

という肩の凝らない本です。

パリス・ヒルトンとかグーグルのオフィスとか、ネタがやや古くなってしまっているのが難ですが、アメリカ地場ネタは古びようがないので面白い。

例えば chapter6 被差別戦隊『マイノリティーム』

民族的ステレオタイプというのがある。アイルランド人は酒飲み、イタリア人はヤクザで、ポーランド人は....バカ。こりゃヒドい。
これらはまったくの差別と偏見なので、出版したり、テレビで放送しちゃいけない。(中略)『マイノリティーム』はそのステレオタイプを笑いのめす不良番組だ。
マイノリティームは『X-MEN』とか『ファンタステイツク・フォー』と同じスーパーヒーロー軍団。少数民族がそれぞれのステレオタイプを駆使して悪と戦う。アジア人は計算が得意。ユダヤ人はコンビニかガソリンスタンドを経営し、黒人は逃げ足が速い。なぜなら泥棒だから、だって。やっぱりヒドい!
敵は少数民族の社会進出を拒む白人たちの秘密組織ホワイト・シャドウ。
敵の秘密基地に入ろうとしてマイノリティーはハシゴを登るが、どこまで上がっても上の階に上がれない。それもそのはず、そのハシゴは「社会的地位ハシゴ」という、白人以外はいくら努力しても絶対に上れないハシゴだったのだ!

難関を突破した彼らの前に立ちはだかるのは「アメリカ市民権テスト」という怪人(アメリカの市民権はペーパーテストで取る)。
「キリストを殺したのは誰でしょう?」
ユダヤ人が答える。「直接殺したのはローマ人だ」

「ブーッ!アメリカではユダヤ人ってことになってる!」

「次の質問です。赤青黄の交通信号を発明したのは誰でしょう?」

黒人が答える。「ギャレット・モーガンというアフリカン・アメリカンだ」

「ブーッ!正しいが、白人はその答えが嫌いだ!」

ははは。オモロイ。

ちなみに製作スタッフは、全員メキシコやアジア系だそう。

自分たちで作ってるんだからいいだろう!ときっと開き直っているのでしょうね。

 

このように完全脱力系と思いきや、ところどころ鋭くシリアスだったりするので、油断が出来ません。

chapter6 特殊メイクで白人が黒人、黒人が白人に!

ケーブルTV局「FX」開局以来の人気番組『ブラック.ホワイト』は、白人一家を黒人一家に、黒人一家を白人一家に変身させ、違う人種としての生活を体験させるリアリティTV。しかし、これは非常に危険な番組だ。なぜなら、アメリカでは白人が顔を黒く塗って黒人のフリをすることは「ブラックフェイス」と呼ばれる黒人を揶揄した行為で、基本的にタブーなのだ。 

ふーん。そうなんだ。

確かに聞かない話だもんなー。

シャネルズは該当しないのかな。白人じゃないもんな。

黒人になったブルーノ父さんはうれしそうに言う。

「白人が黒人のことをニガーと呼ぶのは絶対のタブーだけど、こうして黒人になれば、ニガーって言っても大丈夫だね」

それを聞いて黒人のブライアン父さんは「普段絶対に言うことを禁じられている言葉だから、言いたくてしょうがないんだな」とあきれる。

白人のカーメン母さんもはしゃいで言う。

「黒人の女性たちはよくお互いのことをビッチって呼んでるでしょ。ねえ、ビッチ!」

メス犬呼ばわりされたレニー母さんは当然怒る。

「それは自分で自分がタフな女であることを主張するために使ったり、本当に親しい友人間でふざけて使うけど、普通は相手に対して言ったら黒人同士でもケンカになる言葉よ!」

叱られたカーメン母さんは「私は今まで黒人の友達は誰もいなかったから、そんなこと知らなかったの」と言い訳しながらベソをかく。

白人娘のローズは生徒が全員黒人の、ラップ塾に通います。

差別と自由をテーマにしたラップが歌えないローズ。

彼らと親しくなるにつれて彼らを騙す罪悪感にかられ、ついに自分が白人であると告白してしまうローズ。

ローズを同胞と信じて気持ちを打ち明けたりしていた生徒たちは心底傷ついた。彼らを傷つけたことに傷ついて涙を流すローズ。ひどい番組だなあ。

悩んだローズは今度は白人として友人になろうと自宅に彼らを招待する。今度は心の底から本音を言いあって、打ち解け、抱き合う高校生たち。それを見て感動した白人カーメン母さんは思わずこう言ってしまう。

「あなたたちは、ほんとに素敵なブラック・クリーチャーね!」

全員が凍りつく。(後略)

この後どうなったかは、皆さんの予想通りです。

英語を全く知らない私でも、それは絶対に使わないWordだろうとピンときましたが。

どこまで演出なのか、町山氏の文章だけでは全く分かりません。

分かりませんが、白人と黒人の間の同じ ”英語” の大きな溝によって、両者の社会的な壁、距離感が生々しく伝わるコラムです。

レニー母さんがこう言う。

「私たちマイノリティは社会で生きていくためにマジョリティである白人を学び、マネをしてきたから、白人になることは大した苦労ではありません。でも、マジョリティは、ファッションや音楽や食事以外では、マイノリティに興味がありません。マイノリティの立場など想像もつかないでしょう」

全体的な評価としては「眉をひそめるべきお下劣本」ということになるのですが、 なかなかどうして骨太なところも見せてくれる一冊です。

 

万人向けでないこと間違いなし。

可愛いのは表紙だけです。

 

以上 ふにやんま