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ふにやんま ー 世界の小所低所からー

http://funiyanma.hatenablog.com/  

『1984年のUWF』 柳澤 健が熱い! 第11回「チキンウィング・フェイスロック」

スポーツ

『Number』6/2号(902号)から。

『1984年のUWF 柳澤健 連載第11回
「チキンウィング・フェイスロック」
シブいタイトルだなあ。
①前田エース体制から、佐山エース体制への変更を、なんとゴッチから勧められる。
 
1984年8月、佐山はタイガージムは続けながらも、UWFとは直接契約を交わし、所属選手としてリングに上がることを明らかにします。
 
ビッグネーム佐山の加入が後押しとなり、日本人レスラーだけでも藤原、前田、高田、佐山、山崎、マッハ、ラッシャー、剛の総勢8名までキャストを整えたUWFに対し、TBSやテレビ東京が非公式ながら接触してくるように。
 
さらに藤原喜明の要請で、タンパからカール・ゴッチがコーチとして来日し、帯同を開始。勢いづくUWF
 
しかしそのゴッチは、数回興行に帯同した時点で、当時UWFのコーディネーター的地位にあった更級四郎氏に意外なアドバイスを口にします。
「このままでは、UWFがつぶれるのは時間の問題だ。サヤマをエースにしないといけない」
ゴッチは佐山聡のスーパータイガーを飛び抜けたエースにすることが最善の策だと考えた。
佐山が誰よりも強いから、ではない。佐山が誰よりも客を呼ぶ力を持っていたからだ。
ゴッチは団体の精神的支柱である前田日明でも、新たにリーダーとなった藤原喜明でもなく、観客にアピールする力を持つ佐山聡をエースにする以外に、UWFが生き残ることはできないと考えたのである。
レスリングの事ではなく、団体運営の最重要方針にゴッチが口出しするというのはよくよくの事でしょう。
 
可愛い弟子に、哀れな末路を辿らせたくない。
少しでも長く団体を続けさせてやりたい。
 
自分を慕い続ける日本の愛弟子達に対する、ゴッチの格別深い愛情が伺われるエピソードです。
ゴッチもプロレス界で長く飯を食ってきた人間ですから、その時点でエースに相応しいのは誰か、スターに相応しいのは誰かはすぐに見抜いたことでしょう。
以後、前田は団体のエースから一歩退く形になった。
若い前田が観客を魅了するだけの表現力を身につけるまでの間、UWFはスーパータイガーの佐山聡藤原喜明が牽引することになった。
 
②チキンウィング・フェイスロックによるフィニッシュは佐山のアドリブから始まった。
 
1984年9月7日、後楽園ホールメイン
イベント「UWF実力ナンバーワン決定戦」のカードはスーパータイガー対藤原喜明
スーパータイガーの蹴りは、これまでにないほど強烈で、レガースを装着していたこともあり、藤原の身体に当たるたびに派手な音を立てた。
ボクサーへの転向を考えたことのある藤原のフットワークは軽快で、スーパータイガーのボディにパンチを入れ、アームロックやフェイスロックでは佐山に何度も悲鳴を上げさせた。
佐山に派手に蹴らすのは、演出として不可欠。実力的に佐山と遜色ないところを印象づけるためにも、藤原には関節技中心に見せ場を作って貰わなければならない。
 

関節技の応酬に、佐山の非プロレス的な蹴りを加えた新しいファイトスタイルが観客をヒートさせていくのが目に浮かぶようです。

当時、誰もこんなスタイルの試合を観たことがなかったはず。
さらに大きな衝撃を与えたのは、その試合のフィニッシュだった。ハイキックを入れても立ち上がってくる藤原に業を煮やしたタイガーは、スタンドからのチキンウィング・フェイスロック(ハンマーロックとフェイスロックを同時に行う複合技)を極め、ついに藤原はギブアップした。
非常にUWFらしい、斬新なフィニッシュですよね。ところがこれ、なんと佐山のアドリブから生まれたものだと。

「キックでダウンした藤原さんはピクリとも動かず、試合続行不可能でレフェリーストップになるはずだったんです、本当は。

佐山さんの談話も、あらかじめ用意しておきました。

『これだけ蹴っても倒れない。僕のキックは藤原さんには効かないんじゃないか、と思っていたらようやくダウンしてくれた。藤原さんは凄い」

ところが、藤原さんが立ち上がってきちゃったから佐山さんは困った。

とっさに浮かんだのがチキンウィング・フェイスロック。このあたりが佐山さんの天才的なところです。 

ほとんどのファンが見たことなかったから、ビックリしていましたね。

藤原さんも「ああ、ここで終わりなんだな」と思ってギブアップした」(更級四郎)
予定外のチキンウィング・フェイスロックは、以後、UWFを代表する技になっていく。

ここで大事なのは、フィニッシュホールドに説得力を持たせられるか否かはレスラー次第だということ。

ましてや当時珍しいなんてもんじゃなかった技です。
それを佐山がここ一番の藤原戦で繰り出し、ギブアップを奪った。
 
あの佐山が使う技!
 '' 関節の鬼 ” とまで言われる藤原がギブアップを!
(=きっとすごい技に違いない)
この二本立てで強烈な説得力が生まれたんですね。
疑惑の判定の後に、キャメルクラッチをフィニッシュに選んでしまう高田総統とはえらい違いです。
 
元々チキンウィング・フェイスロックって、見た目のインパクトにものすごく欠けるじゃないですか。
素人目には何処が極まっているのかよく分からないし、技をかけられているレスラーの顔が見えないというのが致命的。
苦悶の表情が観客に見えない技なんて、ショービズ的には絶対にフィニッシュになり得ない。
 
そこを敢えて逆張りで、チキンウイングをアドリブで選ぶセンス!
さすが佐山聡です。
そこにフォーカスした柳澤氏も、素人じゃないね?お客さん!(当たり前だって)
 
ということで、
チキンウィング・フェイスロックは効く
という、この試合で形成された世間の認知及び合意から、
            ↓
V1アームロック
アキレス腱固め
ヒールホールド
アンクルホールド   etc.
といった極めて地味なフィニッシュホールドが、UWFでは公認され、むしろ歓迎されていく訳です。
 
スタンドでの派手な蹴り合いから、関節技によるグランドでの地味なフィニッシュ
という典型的なUWFスタイルの源流が、この試合にあったという事は覚えておいて損はありません。
 
もちろん得も全くありませんが。
 
以上  ふにやんま