ふにやんま ー 世界の小所低所からー

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好きな短歌

観覧車回れよ回れ想ひ出は君には一日(ひとひ)我には一生(ひとよ
(栗木京子『水惑星』)

栗木京子歌集 (現代短歌文庫)

〇〇が選ぶ現代短歌10首 みたいなものには大概載っている、現代短歌 における名歌中の名歌。

栗木氏の中でもやはりピカイチだと私も思います。

※ネット上では「想い出」という誤記が多いが「想ひ出」が正解。

口語表現の中の旧かな混在に難を唱える評者もいますが、リズムを損なう訳ではないので問題ないというのが私の意見。

 

栗木氏の作から、もう2首ほど。

退屈をかくも素直に愛しゐし日々は還らず さよなら京都

(栗木京子『水惑星』)

京都大学 理学部卒の、氏の経歴を知れば解説は不要かと。

京都を他の地名に置き換えては、成立しないところがこの歌のミソ。

夏のうしろ、夕日のうしろ、悲しみのうしろにきつと天使ゐるらむ

(栗木京子『夏のうしろ』

夏のうしろ―栗木京子歌集 (塔21世紀叢書)

栗木氏の短歌は、秀歌の必須条件である愛誦性が高いものが多いですね。

 

現代短歌の第一人者、穂村弘氏から。

体温計くわえて窓に額つけ「ゆひら」とさわぐ雪のことかよ

終バスにふたりは眠る紫の〈降ります〉ボタンに取り囲まれて

「あなたがたの心はとても邪悪です」と牧師の瞳も素敵な五月

バットマン交通事故死同乗者ロビン永久記憶喪失

  (穂村 弘 『シンジケート』)   

   シンジケート  

忘れてはいけない、

現代短歌 中興の祖。俵万智氏。

「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ

「スペインに行こうよ」風の坂道を駆けながら言う行こうと思う

君を抱くティンカーベルになりたくてパールピンクのフラットシューズ

 (俵 万智『サラダ記念日』)  

サラダ記念日 (河出文庫―BUNGEI Collection)

サラダ記念日 (河出文庫―BUNGEI Collection)

                                                                                 

『オレがマリオ』も良かったなあ。

今は大分にお住まいだそう。

 

世の中には真の才人というのはいるもので、短歌・俳句いずれの定型も自在に操ってみせた寺山修二も外せません。

目つむりていても吾を統ぶ五月の鷹

 ーめつむりていてもあをすぶごがつのたか、と読みます(ふにやんま注)

 

マッチ擦るつかのま海に霧深し身捨つるほどの祖国はありや

(寺山修司寺山修司歌集」) 

海に霧―寺山修司短歌俳句集 (集英社文庫)

後者は寺山氏の代表作ですが、短歌としては上下(かみしも)の飛躍と距離感が絶妙そのもの。

 

余談ですが、私は晩年の与謝野晶子が、初期の自作の短歌を恥ずかしいと語っていたというエピソードが大好きです。

海恋し潮の遠鳴りかぞへては少女となりし父母の家

その子二十櫛にながるる黒髪のおごりの春のうつくしきかな

清水へ祇園をよぎる桜月夜今宵会う人みな美しき

柔肌の 熱き血潮に 触れもみで 寂しからずや 道を説く君

大丈夫です、晶子先生!

 (ファーストネームかよ。鉄幹氏も与謝野先生だから、まあいいか)

あなたの剥き出しの若さと激情を、これからもたくさんの人が愛してやみません。

ただ、柔肌の...はちょっとお気持ち分かりますが。

                                   以上 ふにやんま