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ふにやんま ー 世界の小所低所からー

http://funiyanma.hatenablog.com/  

『キリンビール高知支店の奇跡』田村潤

ビジネス 読書

キリンビール高知支店の奇跡』

田村 潤(2016)

ビールというのは変わった商品で、シェア発表が毎度毎度ニュースになるのは他には自動車ぐらいしか思いつきません。

それだけ万人の関心があり、暮らしに深く入り込んでいる証拠なのでしょうが、シェアによって株価は勿論、社員の士気にまで影響が及ぶそうですから罪作りなものです。

本書は元キリンビール株式会社代表取締役副社長の手によるエリアマーケティング、セールスフォースマネジメント(横文字ですいません。これって適当な日本語が無い概念なんですよね)の実話本、成功本という事でだいぶ売れているようで。

「勝利の法則は現場で拾え!」

勇ましいサブタイトルも魅力的。

 

で、読後の感想。

どこの会社も同じようなもんだな〜

今のキリンビール(ホールディングス化してしまいましたが)がどうなのかは知りませんが、キリンビールのような名門企業でも日本の会社というのは本質的に変わらないんですね〜。

成績が悪くなるほど、本社では会議が連日続き、営業の現場へはこれをやれ!あれをやれという指示が増えていきます。そうなるとその指示をいかにこなすか、忠実に守るか、という受け身の営業スタイルに陥り、言われたことをこなすだけで精一杯となるのがよくあるパターンです。ますます自分で主体的に考えて動くことが難しくなってしまいます。

あるある!と営業の経験があるかたならば絶対に膝を打ちますよね。

本社は現場をまるで分かってないし。

現場の声なんて初めから、聞く耳自体がないし。

日本株式会社ではごく当たり前の飲み会でのやり取りでしょう。

あのキリンビールでさえそうだった(今を知らないのであくまで過去形)んですから。

大多数の会社においておや。

何を恥じることがありましょうか!

次々に下りてくる施策に対しても「達成できたか、できなかったか」「なぜできなかったか」という検証ができていませんでした。そして「やることが多すぎて、それをこなすだけで大変なのです」という言い訳をします。責められると、返事だけは「はい、はい」と言いますが、自分たちとしては一生懸命やっているつもりだから、夜飲んでぐだぐだ言って、一日が終わる。で、翌日またスタートする、という繰り返し。

リーダーはリーダーで、それを黙認し、「現場は一生懸命やっているんですよ」と言い訳する。悪いのは、できもしない目標をどんどん下ろしてくる本社であり、能力の低いメンバーにも問題がある、と責任が転嫁されていたのです。

だんだんキリンビールの話だとは思えなくなってきましたでしょう?

何故うちの会社の事を知っているんだ?

そんな感じではないかと。

Why Japanese companies !

よい百の会社には、百通りのよい理由があるけれど、ダメな百の会社は皆等しくダメだと。

結局そういうことなんでしょうね。

 

本書の普遍的なところの次は、やや特殊なところを一つだけ。

ほとんどのお客様は味にはそれほど差がないと思っていることでした。

(中略)

では、なぜ売れるビールと売れないビールに分かれるのか。

それは、情報です。

「美味しそう」

「元気がいい」

「売れている」(中略)

ビールとは波のようなもので、こうしたイメージが大衆心理に押し寄せるのです。一度、波が起こるとメーカーの手を離れ、大きなうねりのようになります。そうなると手の施しようがなくなります。

つくづくビールはこわい商品だと思いました。(中略)

マーケティングの教科書に取り上げられる理由がわかりました。

大衆消費財にして嗜好品、なおかつ多分に情緒によって購買が決定される。

それがビールだと。

厄介な商品ですが、厄介さを逆手にとった営業のやり方がある。

新味に乏しいのがやや残念なところではありますが、商品での差別化が難しい営業パーソンには、大いに役立つ本だと思います。

待てよ。

商品での差別化が難しい=大多数の日本の営業パーソンに共通でしたね。

ちっとも特殊じゃないじゃん。

 

ところで、華々しい2009年のビールシェア再逆転も結構ですが、その後に色々ありましたよね。

サントリーとの合併決裂、ブラジルでの大型買収案件による特損計上などは、キリンHDの迷走と言って構わないでしょう。

耳に心地良い価値営業、お客様本位、現場主義は経営には生かされなかったの?と超名門企業に一言だけ嫌味を。

ちょっとこの本、カッコ良すぎるので。

以上  ふにやんま