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ふにやんま ー 世界の小所低所からー

http://funiyanma.hatenablog.com/  

『ミライの授業』瀧本哲史  

 

ミライの授業

ミライの授業

 

"ビジネス大賞2012" を「僕は君たちに武器を配りたい」で受賞した、瀧本哲史氏の最新刊です。

未来に生きる14歳のための特別講義と銘打たれた本書。今Amazonで見たら「学習指導」カテゴリでベストセラー1位になってました。

中学生向けの講義だからといって、レベルを落としたつもりはない。本講義の根底に流れるのは、ふだんわたしが京都大学の学生たちに向けて語っているのと同じテーマであり、問題意識だ。

講義のタイトルは「未来をつくる5つの法則」

断言します。

これは大人こそ読むべき。

前途洋々、希望と可能性に溢れた中学生に独り占めさせるのは、あまりに勿体無い。中学生諸君は時間はたっぷりあるのだから、もっとくだらない本を読むように。それはないか。 

本書はまず、一般的には著名とは言えない複数の人物を、変革者として取り上げているところがいいですね。社会的意義がある行為として、瀧本氏も評価されるべきでしょう。

急にスポットライトが当たったかたの子孫は、比喩ではなく泣いて喜んでおられることと思います。

 

5時限目まである本文の1時限目では、フローレンス・ナイチンゲールが登場します。

今、めっちゃ有名やないか〜い!

おまけに、

子孫が読むわけないやないか〜い!

と重ねて突っ込みましたね?

でもクリミアの天使としてのナイチンゲールは有名ですが、彼女が数学や統計学を駆使して、近代衛生医学に多大な貢献を果たした事はあまり知られていないはず。

ちなみに私、これは珍しく知っていました。林修先生の番組かっ。

なお、子孫のことは一旦置かせてください。出来ればもう忘れて欲しい。

戦場の兵士たちは、戦闘によって亡くなるのではなく、劣悪な環境での感染症によって亡くなっていくのだ。それがナイチンゲールの結論でした。

こうしてナイチンゲールは、ヴィクトリア女王が直轄する委員会に1000ページ近くにもおよぶ報告書を提出します。どんな権力者であろうと反論できない、客観的な「事実」を突きつけたわけです。

もし、彼女が数学や統計学の素養をもたない、善良なだけの看護師だつたなら、目の前の患者を助けることに精いっぱいで、医療態勢や衛生管理の構造的な欠陥に気づくこともなかったかもしれません。また、仮に気づいたとしても、それを裏づけるデータがなければ彼女の意見に耳を貸す人はいなかったはずです。

世界を変え、世界を一歩前に進めたナイチンゲールの武器はデータだった。

権威や常識を疑うことができるかどうか

事実をベースにしてものごとを考えられるか

課題をこなす人より、課題を見つける人になる

実は、この章のタイトルはこうです。

世界を変える旅は「違和感」からはじまる

 

本章ではナイチンゲール、「自動車王」ヘンリー・フォード、「地球を動かした男」コペルニクスに並んで、海軍軍医 高木兼寛が登場します。

日本軍を長年にわたり苦しませた脚気問題に対し、文豪にして陸軍軍医で最高位にあった森鴎外と、海軍 高木兼寛のアプローチが如何に対照的であったか。

もちろん一軍医だけに原因を帰するべき問題ではないのですが、日本軍の行く末を暗示するような話で、実は本ブログでも取り上げた事があります。 

funiyanma.hatenablog.com 

海軍の高木兼寛は、のちに「日本の疫学の父」として称えられ、海外での功績が高く評価され、コロンビア大学フィラデルフィア医科大学などから名誉学位を授与されています。

歴史の中で埋もれてきたけれど、実は貴重な仕事をした人が脚光を浴びる。

いいなと思うんですよね。

敢えて経歴には触れませんが、本書では他にもベロタ・シロタ・ゴードン、高橋至時緒方貞子大村智といったあまり知られていない改革者達(すごく有名な人も混ぜてしまっているような気がしますが、ドンマイで。ドンマイじゃないって)が、多数の世界的有名人に混じって登場します。彼らのエピソードを知るだけでも、本書の価値は十分にあります。

瀧本氏が冒頭から述べているように、中学生向けとは言えおそろしく密度の高い本です。

わたしはきみに、そしてすべての「かつて14歳だった大人たち」にこの本を贈りたい、たとえ何歳であろうと、未来をあきらめることは許されないし、わたし自身が未来を信じているからだ。

子供達にも読ませました。

かつて自分が14歳だった事すら、嘘のように思える今日この頃ですが。

未来は僕らの手の中®️

以上  ふにやんま