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ふにやんま ー 世界の小所低所からー

http://funiyanma.hatenablog.com/  

『1984年のUWF』 第17回 「新・格闘王」

スポーツ

 『1984年のUWF』 第17回「新・格闘王」

タイトルから分かるように、今回はアキラ兄さん、前田日明の回です。

1986年の有名なセメントマッチ、前田vsアンドレ戦から始まり、なかなか刺激的。

リングサイドにいた星野が「アキラ、行け行け」と声を出した。すると前田は「行っていいんですか!?本当に行っていいんですか!?」と構えながら何度も星野に言葉を浴びせた。声に詰まる星野・・・!

長州蹴撃事件、猪木蹴撃事件(蹴ってばっかりだな)と並ぶ前田の武勇伝として語り継がれる試合ですが、正直私あんまり興味がなくて・・・。YOU TUBEとかで動画が残っているようですが、未だに見たことがないです。

せいぜいさすが喧嘩自慢の星野勘太郎(既に亡くなってしまいましたが)ここでアキラ兄さんに声をかけられるとは、やはり一目置かれてたんだな!ぐらいしか思いつきません。特に感慨なし。

ちなみにこの後、星野勘太郎

俺に聞くなよ・・・

と目を逸らせたという説がありますが真実は如何に? 

ちなみにこの説の出所は下の本です。徳光康之氏サイコー。買ってね。

『プロレスのコトバ』徳光康之

プロレスのコトバ
 

1985年の新日本プロレスはボロボロになっていた。

40歳を越えたアントニオ猪木は衰えを隠せず、人気絶頂のタイガーマスクを失い、長州力マサ斉藤谷津嘉章小林邦昭ら維新軍が全日本プロレスに去り、ダイナマイト・キッドとデイビーボーイ・スミスのブリティッシュブルドッグスも全日本に奪われてしまった。

長州らを得た全日本プロレスが軍団抗争で盛り上がり、ロード・ウォリアーズがセンンセーションを巻き起こす一方、新日本プロレスの「ワールドプロレスリング」の視聴率は急落していた。

この時期にUWF勢が新日の興行の目玉になったのは事実であり、新日最大の危機を乗り越えさせたのはアキラ兄さん以下の殊勲甲。

なにしろ、1987年には新日の経営環境はここまで悪化します。

ワールドプロレスリング」は月曜8時から火曜8時にさらに移り、バラエティ色の濃い「ギブUPまで待てない!ワールドプロレスリング」がスタートした。(中略)10%ほどあった視聴率は5%台にまで落ちた。

新日暗黒時代の始まりですね。 

結局この時期の前田日明って、業界内ですら評価が二分すると思います。

暗黒時代の救世主と見るか、

業界秩序の破壊者と見るか。

猪木は前田を信用することができなかった。これまで前田は何人ものレスラーを傷つけ壊してきた。たとえ相手を負傷させても、少し頭を下げればそれで済むと考えている。職業意識が低く、観客の満足よりも自分の感情を優先させてしまう。

柳澤氏、ナイス。いい文章です。

職業意識を通常の概念で使うならば、確かに前田にその意識は低かったでしょう。

この時期、極めて職業意識の高い藤原喜明が、試合内容のコントラストでファンの前田びいきに拍車をかけたことは否めません。猪木に雇われた立場として、忠実に与えられた役割を演じる藤原と、青臭く「誰が一番強いか決めたらエエやん」とまで主張する前田。

リング上で猪木からアキレス腱固め公開指導の辱めを受けても、決してキレたりしない藤原と、その試合後にリングに駆け上がり、猪木だったら何をやっても許されるのか!と雇用主を蹴り飛ばす前田。

そんな前田がファンにとって魅力的に見えたのは当然でした。藤原には逆に同情と過大評価が集中したのですが、それはここでは置いておきましょう。

危険で強いごんたくれ。

でも素顔は純でいいやつ。

後者、実は大事です。

それまでのプロレスで、レスラーの人間的な資質に脚光が当たる(しかもプラスの方向で)という事はなかったはず。

ファンは前田のエピソードを求め、肉声を求め、思想を求めました。私も筋金入りの前田ファンだったのでよく分かります。前田日明は若きカリスマでした。

選ばれしものの恍惚と不安、ふたつ我にあり。

このプロレス史に残る引用は、ファンのニーズにドンピシャだったからこそ、当時熱狂的に迎えられた訳です。

ちなみに金で魂を売って全日へ移ったとファンに見られていた当時の長州は、前田の引き立て役であったという点では、藤原と同じだったと言えるでしょう。マサ斉藤なんか、タイツに ”JAPAN" って刺繍入れてましたからね。そりゃあレガースに ”UWF” と入れていた前田日明たちが高潔に見えますって。

評価二分のうち、業界内の反発の声も紹介しておきます。

ケロちゃん(分からん人ドンマイ)による「前田蹴撃、長州お岩さん事件」評。

かー、最悪。日明兄さん対アンドレ先生以来の最低試合。その時の気持ちを言葉で表すと『つばを吐きたくなる』感じ。もっと怖いのはこれを ”これこそホンモノだよ” と受け入れてしまう客。あーた達はどこまでプロレスに求めるんだい。殺人ゲームかい。冗談じゃねーや。それなのに終了後の "マエダ” コール。涙がでてきたわ。プロレスが死んじゃうよ。

見事に死んじゃいましたけど。

やはりプロレスの大きな分岐点として、UWFの存在があるのは間違いないでしょう。

オールドスタイルのプロレスがいずれ飽きられ、ファンの興味が総合格闘技へ向かっていくのは必然且つ時間の問題だったと思います。

思いますがやはり、時代の針を一気に進めたのは前田日明を始めとする新生UWF勢だと痛感した今回でした。

 

補)前田のベストバウトは、新生UWFの旗揚げメインイベント、山崎一夫戦だと思います。今見ると良かれあしかれ "プロレス" ですが、観客を最高にヒートさせた試合でした。

さらに補)前田って身長がある上に手足が長いので、技に見栄えがするんですよね。アキラ兄さんのフライング・ニールキックだけが大車輪キックと呼ばれるのも、その迫力故に納得です。浴びせ蹴りっぽい感じで、やや縦回転なのが独特。まあ危険極まりない蹴り方で、受け手にしたら相当腹立つと思います。

以上 ふにやんま