ふにやんま ー 世界の小所低所からー

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『1984年のUWF』第19回 「スターティング・オーバー」

注)なぜか連載の付番が一つ跳んでいますが、理由は分かりません。増刊?

懐かしい。Starting Over は新生UWF旗揚げ戦の冠名ですね。胸をときめかせた新生UWF。わが青春に一片の悔いなし。

今回はタイトルに付けられた惹句が気になりました。編集者の手によるものだと思いますが。

ついに旗揚げした新生UWF。そこに新たな思想はなかったが、最強幻想を託すファンは地味な試合にも熱狂する。

最後の最後、地味な試合は大間違い。試合を自分の目で確認してから書いて欲しかったですね〜。仮にも umber の編集者なら、そのぐらいの実証主義は忘れずにいて頂きたい。本文に忠実に書きゃいいってもんじゃないでしょう。無理は承知の、理不尽な怒り。

前田と山崎の終盤の壮絶な蹴り合い、ノックダウンの応酬に会場が最高潮までヒートした素晴らしい試合でした。フラフラになりながら、何度も何度も立ち上がる二人。もういいよ! もうやめてくれー!といった観客の悲痛な声が途中から飛び交います。これが真剣勝負に命を懸けた男たちの闘いだと、胸が熱くなったのを覚えています。

あの試合の興奮、新しい時代が始まったという感激は、Uがプロレスだったと知った今でも色褪せることなく残っています。プロレスファンは純情なのですよ、死ぬまでね。

新生Uは前田日明の油が一番乗り切った時期で(お腹の脂も段々と溜まっていったのは嫌でしたが)、この旗揚げ戦はレスラーとしての前田日明のベストバウトだと思っています。佐山と袂を分かった山ちゃんも、ホントいい仕事をしました。

この1988年に前田は東スポプロレス大賞」特別大賞を受賞。翌年には初のプロレス大賞MVPに輝きますが、全てはこの旗揚げ戦から始まった流れです。

新生UWFの所属選手は旗揚げ時点でわずか6人。前田、高田、山崎、中野、安生、宮戸ですから、レガースとシューティングシューズの威光がなければ、しょっぱい試合しか出来ない選手が半分です。この面子でシングル3試合の興行を打って、満足して帰って貰うには、ファイナルで死ぬほど盛り上げるしかない。前田が新団体の命運をかけ、それこそ必死で山ちゃんとの試合に臨んだことは想像がつきます。

結果的に Starting Over の試合内容と共に、新生UWFが爆発的な賛辞でプロレスファンの間に迎えられたのは、ひとえにこのファイナルの賜物。佐山VS藤原戦と並んで、UWF史に残る一戦だと思います。

リアルの格闘技に通じた方ならば、この試合のおかしさには気づくと思いますが、当時のU信者は私も含めて純情でした。本当に死ぬまで蹴り合うんじゃないかと、ハラハラしたものです。今思うとそんなバカなと笑っちゃいますが、Uを疑うような情報など存在しなかった時代のお話なんですよ。遠い眼。

質問主は長州力

「山本、お前はどうしてUWFを応援するんだ?お前だってわかっているんだろう?UWFはこっちなのかあっちなのか、言ってみろ」

ターザン山本によれば、こっちとはプロレス、あっちとは格闘技のことだという。

とかくターザンによる名言捏造疑惑がつきまとう長州ですが、これが本当ならばちょっと見直しますね。非常ベルが鳴り響いてもこんな日が人生に一度くらいあっても構いません。

僕は『こっちです』と言った。UWFはプロレスです、と。

そうだろう、UWFはプロレス以外のものではないのに、どうして真剣勝負の格闘技のように見せかけているんだ、と長州は僕に文句を言った。そんなこと、長州以外の人間にはできませんよ。僕が週プロに『UWFは真剣勝負の格闘技』と書いたことは一度もないけど、長州からはそう見えたんでしょう(ターザン山本

なぜ長州にしか出来ないのかよく分かりませんが、大意は掴めます。最近の滅裂なターザン節には慣れていますので。

週刊プロレス』がUWFのチケットを表紙に使い、新生UWFを大々的に応援する姿勢を鮮明にすると、怒り心頭に発した長州は「週刊プロレス」の担当者に取材拒否を通告し「お前のところの山本は狂っている」と言った。

ターザン山本氏は笑いながらこう語ります。

「長州は正直で、自分の嫉妬心を隠さない。ナイーブでいい男なんです。取材拒否は筋が通っている」

この年の4月には新日、全日ともにゴールデンタイムの中継から追われており、二人は共に新しいプロレスのあり方を模索していたはず。長州もターザンも、互いに自分の行動に勝算があったということでしょう。

長州(小力ではない)のパラパラも、ターザンの公私にわたるリアル落武者化も、この時の二人には悪い冗談でしかなかったはず。いくつの順調な人生を、激しい奔流に突き落としたのか? まさに劇薬UWF

前田たちは典型的なプロレスラー。金と女とクルマにしか興味のない人人間。

UWFとは何か、UWFがどうあるべきか、UWFがどうあらねばならないか。

そんなことを真剣に考えている人間は、新生UWFにはひとりもいなかった。(中略)前田以下のレスラーたちは、神社長が作ったプランに乗っかり、佐山が作ったルールやレガースやシューズを借りてきただけ。(中略)

ファンはUWFの幻想を心から信じている。UWFのレスラーは誰も信じていないのに。ギャグですよ(ターザン山本

ギャグはお前だ。

この総括はおかしい。この連載の取材協力を、ターザン山本氏に仰いだこと自体が間違いだというくらいおかしい。

ほぼ全てのプロスポーツ選手が、金と女とクルマにしか興味がない。これは事実でしょう。競技への高邁な理想など無くても、その道の一流になる事は出来ますから。下手に若いうちに趣味なんて持っていると、プロにはなれないかも。

問題はターザンの言葉に、かつて自分が人生の全てをかけたプロレスへの敬意がもはや感じられないことです。ありし日のターザンならば、絶対にこう書いたはず。

前田たちはプロレスラー。プロレス以外には、金と女とクルマにしか興味の無い人間。

プロレスに興味を失ったというのなら、プロレスについてご自身の見解を語ることもやめて欲しい。晩節を汚すような道をなぜ選ぶのか? 昭和プロレスの語り部として、極力主観を排した証言で柳澤氏のサポートをするというのならまだ分かりますが。

批判的なエントリになってしまいましたが、UWF というムーブメントに意義がなかったはずはない。そこまで突きつめられるのか柳澤健? 俺は今までにないUWF 論を見せて欲しいんだよ!(ター山風)

今後を注視ということで、期待は続く。

以上  ふにやんま