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ふにやんま ー 世界の小所低所からー

http://funiyanma.hatenablog.com/  

『1984年のUWF』柳澤健 第21回「クリス・ドールマン」

 『1984年のUWF柳澤健  第21回「クリス・ドールマン

クリス・ドールマンまで来てしまいましたか。言わずと知れた前田日明の盟友。彼の存在がなければ後年の "オランダ・ルート" もなく、『リングス』は誕生しなかったはず。

先走りは置いときまして、大阪球場に2万3千人を集めた1989年のドールマン戦。ちなみに私もこの2万3千人の中に含まれております。懐かしいのう(お爺さん口調)

今号の白眉は

◉『水かけザムライ』 こと松浪健四郎氏のドンデモ発言

前田日明ゆるゆるボディの秘密

の2本でございまーす。サザエさん風。

松浪氏については、30年前の発言をどうこう言うのも気がひけますが、本人ももう覚えていないでしょうから構わないでしょう。

前田たちUWFのレスラーに本物志向があり、他の格闘技に学ぶ姿勢を持っていることは評価できる。ただし、現状ではレスリングについては、構えひとつを見てもからきしなっていない。

前田とニールセンの試合もリングサイドで見たが、前田はイチからレスリングを勉強したほうがいいと思った。猪木も同様。そのことを口に出せないアマチュアレスリング出身者の谷津嘉章ジャンボ鶴田長州力の腹の中は、大変なものがあるに違いない。

 ねーよ。

アマレスの全日本3位ぐらいで、プロレス語ってんじゃねーぞ!と、血気盛んな当時の私だったら激怒していたはずですが、今なら笑みを湛えて松浪氏のコメントを楽しむことが出来ます。歳月は人を大人にし、プロレスは少年を男にする。しないか。

もう耳タコの話なので控えますが、「プロフェッショナル・レスリング」は「プロ化したアマチュア・レスリング」じゃないので。あしからず。新生UWFの団体キャラ的に、アマレス経験者の松浪氏にコメントを求めに行ったのは分かりますが、ズレズレな発言連発で大変楽しい。誰か教えてやってほしかった。

プロレスっていうのは、強いレスラーよりも客が呼べるレスラーが偉い世界なの。

今では松浪氏も理解してるかなー。たとえば全盛期のカレリンがプロレスに参戦、来日しましたと。前田の引退試合云々はこの際抜きで。最初は死ぬほど客が詰めかけるけど、まあ半年でサヨナラでしょう。いくら「カレリンズ・リフト」で相手をブン投げても、面白くもない試合にファンはやがて見向きもしなくなるはず。強けりゃいいってもんじゃない。怪獣は1回見れば十分です。

オクタゴンにカタルシスを求める精神構造って、日本人には基本的に無いので。「日本人」が言い過ぎならば訂正します。少なくとも私には無い。

「ソープ・オペラ」と称されるアメプロ(アメリカのプロレス)よりも、ガチのMMA系ってはるかに野蛮だと思うんですよ。あれは趣味悪いわ。以上私見。全部私見だけど。

次。前田日明の身体が新生UWFでどんどん緩んで、ポヨンポヨンになっていった件。これは認めます。批判されて然るべきだし、オンタイムで試合を見ていた私も嫌でしたもん。

レスラーの身体って、説得力を失っちゃいけない。トップの前田自ら、プヨプヨに腹をたるませていたら「格闘技」もへったくれもないでしょう。実戦向きかどうかなんてファンにはどうでもよくて、身体が厳しく鍛えられて、シェイプされている(ように見える)こと。これはUWFのレスラーにとって最低条件だったはず。この時期の前田の心身の緩みが、後の船木の過剰な肉体改造の遠因となったと見ますがどうでしょう。

だが、前田はあまりにも多忙であり、道場にいることはほとんどなかった。

今やタレント並みのハードスケジュール(といっても、試合の前後一週間、そして毎日の練習時間は外しているそうだが)

テレビ局からも引っ張りだこで「わくわく動物ランド」「おいでやす」「バトルトーク」と3日連続でテレビ収録を行ったこともあった。

まさに時代の寵児。 「笑っていいいとも」で前田を観て驚いたり、街に前田がおんぶ紐で赤ちゃんをしょっているポスターが溢れたり(何のポスターか思い出せず・・・)したのはこの時期でしたね。私も前田の自伝とか、この時期に読みましたもん。 

パワー・オブ・ドリーム (角川文庫)

パワー・オブ・ドリーム (角川文庫)

 

で、こうなる訳です。

すでに前田日明の練習不足は誰の目にも明らかだった。胸も腹も腿もゆるみ、もはやドン・ナカヤ・ニールセン戦の時のような精悍さはどこにもなかった。

うん、よくぞ書いてくれた柳澤氏。これは絶対に誰かが記録として残しておくべき一文。高く評価したい。

前田って基本的に太りやすい体質だと思うんですよね。佐山ほどじゃないですが。若手時代にウエイトが上がらず、非常に苦しんだという高田なんかは逆に太りにくい体質のはず。総統ゆるんでなかったし。

皮肉なもので、新生UWFの人気に火が点いてから、前田のファイトに後世に語り継がれるようなものが無くなってしまったのは、ここに原因があると睨んでいます。

スピード、スタミナ、瞬発力など、UWFのファイトスタイルに求められる要素をトップの前田が維持できなくなっていく。必然的に対戦相手に色々と妥協を要求せざるを得なくなる。この大阪球場からUWFに参戦した船木も、「この時期の前田さんは、試合中や試合後に、いろんな事を指示してくるのでうっとおしかった。(プロレス的な指示の)意味が分からなかったし」と語っていましたから。

夢と希望を抱いて参戦してきた船木と鈴木、そしてベテラン藤原喜明

急にメンバーが充実したUWFが、実は内部崩壊の予兆を抱え始めていたことが伺えるという点で、貴重な今回の前田の身体論でした。

ここから切ない話になっていく気がするなー。

 以上 ふにやんま