ふにやんま ー 世界の小所低所からー

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『虚人魁人-国際暗黒プロデューサーの自伝-』康芳夫

『虚人魁人-国際暗黒プロデューサーの自伝-』康芳夫(2005)

虚人魁人康芳夫 国際暗黒プロデューサーの自伝

虚人魁人康芳夫 国際暗黒プロデューサーの自伝

 

前々回に紹介した『虚人のすすめ』ですが、本書と内容が丸被りでした。内容的には本書『虚人魁人』『虚人のすすめ』を完全にincluse(包含)する形ですので、本書を読めば『虚人のすすめ』を読む必要は殆どありません。申し訳ございませんでした。

ただし私のような極度のもの好きは、その限りにあらずで。

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康氏の経歴その他は過去エントリと重複しますので省きますが、本書の「推し」はなんと言っても 、

人食いトラ対極真空手

虎と空手武道家の死闘ショー 

の件(くだり)。聞いただけで顔をしかめるかたもあろうかと思いますが、この話チョー面白い上に、「虚人のすすめ」では完全にカットされていました。10年の歳月が、こういった荒唐無稽の、いささか道義的に疑問符が付くようなアイデアへの許容度を変えてしまったのではないか。。。あらためて本書を推薦する所以であります。キリッ。嘘っぽいな。「ただの面白がりでは疑惑」浮上。

真面目な話、野生動物は強いらしいです。 かの大山倍達氏が著書の中でそう述べておられました。もう持ってませんが、たしかこの本です。よく覚えているでしょう? 

大山空手もし戦わば (1979年)

大山空手もし戦わば (1979年)

 

大山倍達氏曰く。記憶から引用。間違ってたらどなたか教えてくださいね。覚えてないじゃん。

野生動物は強い。命懸けの局面では、その強さは更に倍化される。密室の家屋の中なら、人間は日本刀を持ってやっと野生の犬と互角だろう。

鶏や猫も、決して侮ることなかれとまで説く大山氏。すごいよゴッドハンド!そんなことまで考えていたのか! この事実を十分に頭に入れてから考えてみてくださいね。

素手で虎と闘う

無茶です。かの "牛殺し” 大山氏でも、絶対に選ばなかったであろう対戦相手。それを真剣に実現にこぎつけようとした康芳夫氏。ダメだ面白すぎるっ。メートル(死語)上がりまくりっ!

国士舘大学 空手部師範(当時)山元 守氏

「康先生、私はどんなものが相手でも、空手で倒す自信がありますよ。康先生が準備してくれたらトラとだって闘ってもいい。絶対、一撃で殺してみせます」。

うわーっ。こいつマス大山の本読んでないのかよ。まして相手は康芳夫氏。死亡フラグ立てて一人でビーチフラッグやるようなもんじゃん。絶対長生きしないぞっ。

この発言、実は国士舘大学空手部の忘年会で交わされたもの。この時のエピソードがまた秀逸。ちなみに康氏は山元氏に興味があっただけで、国士舘大学とも空手部とも全く関係がなく、客として招待された身であります。

私が忘年会の会場に出向くと、両側にいかにも狂暴そうな顔と体格をした連中が二〇人ずつまっ黒の詰襟を着て整列している。その間を歩くと「オッス!」といっせいにドスのきいた声が響きわたる。私が中央の上座に座ると、その後しばらくして山元師範が入ってきた。

すると、何と彼はその両側に並んだ連中たちをボカボカと本気で殴りながら入ってくるのだ。

殴られた部員たちは血を流しながら必死で体勢を立て直し、顔を正面に向け「オッス!」と大声で答える。両サイドにいる約四〇人の頭や顔を本気でぶん殴り、山元守は私の横にどっかと座ったのだ。

しかもその後「何故殴ったのか」の説明なし。 腹痛い。

康氏の “受け” もまた凄いです。

私も山元をにらみかえし、じっと彼の眼を見ながらこう言った。「本当か。そうか、よし、やろう。これは命がけの世紀の対戦だ。君が素手でトラと闘うなら三〇〇〇万円出そう。ただし、いっさいのインチキはなしだ。武器は何も持たず、素手で闘うのが条件だ。トラも本物で何も細工しない。死んでも補償はしないがいいか」。

当時の三〇〇〇万円はいまの一億五〇〇〇万円以上の価値があるだろう。彼が本気ならそれぐらいやってもいい。私は迷わず彼に提示した。 

いや迷えよ。 ギャラの問題じゃないし。

世の中的に、こういったキワモノ企画への受容性がまだまだあったんですね。

案の定、この計画を大々的に記者発表したとたん、日本では東映がドキュメンタリー映画として制作したい、と申し入れてきた。 

大ヒット映画「地上最強の空手」公開が1975年、このトラの話が1977年ですから、東映が食いついてきたのも分かります。ちなみに山元師範、大山倍達氏の直弟子、それも高弟だったそうで。

見かけ倒しだったら、トラを見て逃げ出してしまうかもしれない。私はそのあたりを極真会館総裁の大山倍達に、直接電話で聞いた。すると彼は私に「山元は強い。ホントに強い。もし俺が彼とやったら俺が負けるかもしれんよ」

続いて同じように彼の実力を危惧して、稽古合宿に同伴した東映のプロデューサーからの電話。

「康さん、びっくりしました。やつはすごい、すごいですよ。やっぱり本物ですよ。練習であの獰猛なドーベルマンをたったの一撃で殺しちゃったんですよ。一発、眉間に拳を入れたら、ドーベルマンがぎゃふんと跳ねあがって 白目をむいてしまった。これはいけますよ」

今なら「ドーベルマンが可哀想」の大合唱で、稽古自体が即刻中止でしょう。

何はともあれ、実力はお墨付きの空手家ということで、本格的に動き出す康氏。

NBCがさっそくTV衛星による全世界への放映権を申し込んできていた。(中略)いまなら約七五億円ほどという巨額の放映料だ。 

「おいしいとこだけ、さらえばいいじゃん」「主催じゃないから責任ないし」何を期待しているのかモロ分かりのオファー。これが興行の世界と言えばそれまでですが。

これだけ危険が予想される試合?になると、当然問題が浮上します。

◉開催の許可を出してくれる国が無い

これは当時、世界中でブームとなって支部を拡大していた極真会館の全面協力で解決されます。すごいぞ極真!一枚岩だ!(現状への皮肉ではありません)

でですね、ここからが目茶目茶に面白いのですが、さすがにネタバレなので詳細は控えます。ノンフィクションにネタバレがあるのか?という高尚な議論になりそうですが(ならんって)、ヘッダーだけ引用しますので流れを想像してみてください。

特注フェンスのリング

山元の頬が引きつる

トラの爪は出刃包丁

 ブリジッド・バルドーの介入

 結論:虎すげー

装丁の写真から既に「只者ではない」感を漂わせる、かの康芳夫氏も霞む 虎の凄さ

やはりゴッドハンド・大山倍達氏の言われる事に間違いはないのでした。

「野生動物をね、侮ってはいかんよキミぃ」

以上 ふにやんま