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ふにやんま ー 世界の小所低所からー

http://funiyanma.hatenablog.com/  

『1984年のUWF』柳澤健 第24回「総合格闘技の夢」

 『1984年のUWF柳澤健 第24回「総合格闘技の夢」  

Number(ナンバー)916号[雑誌]

Number(ナンバー)916号[雑誌]

 

なんか繋がりが悪いなと思ったら、第23回「崩壊」が間にあるようです。雑誌『Number』本体の番号は抜けていないので、別冊か増刊かで掲載があるということでしょう。まあいいや。どうせ単行本になったら買うし。初見の内容が残っていたほうが楽しいし。

ということで1回分跳びます。申し訳ありません。

推測ですが、前回「崩壊」は新生UWF末期の金銭的なトラブルが中心だったようです。いきなり前田日明「5か月間の出場停止」が出てくるので、ポカンとしてしまいました。たしか神社長と前田が揉めて、マスコミに前田が内紛をブチまけたために、会社批判ということで前田が会社から出場停止処分を受けて怒り狂った、という経緯のはず。

しかしプロレス団体というのは、ファイトスタイルやポリシーといったイデオロギー的な衝突で解散することは絶対にありませんね。

まずお金。必ずお金。ひたすらお金

確かにレスラー側も悪いっちゃ悪いんですよ。フロントを擁護すると、基本的にプロレスラー(当時の。今は知りません)というのは金銭感覚が一般人と全く違う上に、社会常識が無い。売掛金・買掛金の概念なんか全く無いので、興行で入ってくる日銭を見て錯覚するんですね。すっげー儲かってんじゃん!と。

会社経営にはいろんな経費というものが伴うし、特に興行の世界では収入・支出の管理が極めて重要で、チケットの売り上げを鷲掴みにして持ち出されたら、ボクらとっても困るんです!(大仁田のことです)という簡単なことが分からない。

まあ、分かるようなら最初からプロレスラーになんてならないし、なったとしてもすぐ辞めてしまうでしょうけどね。みんながみんな、ライフプラン上の一通過点としてプロレスを認識していた節がある(私見です)馳浩 元大臣のようであっても、それはそれでファンとしてはつまらんのですが。

12月10日、UWF選手会は渋谷で記者会見を開き、翌年3月の旗揚げを目指して新会社を設立することと、日本衛星放送(WOWOW)がUWF選手会との契約を希望していることを明かにした。放映権料は年間5億円。 

歴史に残る「前田さん!上がってきてください」発言があった松本大会の直後、1990年12月時点では、UWFにはまだこんなに目があったんですね。WOWOWスポーツコンテンツの目玉ですよ。今なら考えられない好条件。

ここで一枚岩になって頑張ればいいのに、というのはあくまで一般人の考えで、プロレスラーは決してそうはなりません。

自分たちが血を流して、命がけでファイトしているからこそ、お金が入ってくる。

と考えている皆さんですから、

大金が入ってくるならば、その管理はフロントではなくレスラー主導でなされて然るべき。

とうことに必ずなるんですね。彼らのアタマの中では。プロレスラーだもの。みつを。

とにかく自分がエースであり、王様であり、絶対君主でないと気が済まない。まっとうな金銭感覚を持って、堅実に(相対的にですよ)現役時代を過ごせば、相当な蓄財も余生の安泰も、十分に実現可能なはずなんですが。そんなタイプはほとんどいません。

猪木が社長時代に残した借金を黙って完済し、自らの社長就任のあかつきには簿記まで習ったという坂口征二が輝いて見えます。実家は床屋さんらしいですね。きっと親御さんが堅実にお育てになったのでしょう。息子は芸能人だけど。

団体を越えて馬場にも信頼厚かった坂口征二。猪木の引退時(どの引退の事やら)には、言い値で退職金を用意したというのもまんざら嘘ではなさそう。いかん、UWFからどんどん離れていく。。。

年が明けて1月4日、UWFの選手全員を前田が集めた場で。のちにパンクラス社長となる尾崎允実氏の証言。

「前田は自分がUWFの社長になり、自分に絶対服従する人間をフロントに入れて、神と鈴木の代わりにするつもりだった 」

まあ、当然そう考えるでしょうね。エースですから。

意見を求められた私は『せっかくWOWOWが5億円を出してくれるんだから、ひとつにまとまったほうがいい』と言いました。

極めて常識的なアドバイス。しかし、違う絵を描き始めている奴が必ずいるのがプロレスの世界。

反論は出なかったけど、不服そうな顔をしているヤツはいましたね。宮戸と安生(洋二)、特に宮戸です。

宮戸は、神社長と鈴木専務が去ったあとのUWFを自分で仕切ろうと考えていた。複数の証言から、私はそう感じていました。

既に火種はあったんだと。宮戸ごとき(失礼)にも、色々吹き込む輩がいたんでしょう。

それでも、宮戸は前田に面と向かって文句を言う事はできず、結局、前田主導下で一致団結することが決まった。

上手くいくと思います?思いませんよね。アキラ兄さんですよ、あなた。

 話し合いが終わった翌日、前田から私のところに電話が入ったんです。

『俺は納得がいかない。一致団結していない。特に宮戸と安生が』と怒っていました。(中略)

私は前田に言いました。『もう結論は出たんだから、これ以上何もしないほうがいいよ』と。

でも、前田は私の忠告を聞かず、自分のマンションにもう一度選手たちを集めたんです。

その時歴史が動いた

アキラ兄さんが、下っ端の宮戸・安生ごときに反抗的な態度を取られて我慢できるはずもなく。自分が新・新生UWFの実権を完全に握ってから、宮戸や安生なんか干しちゃえばいいじゃんなどという、チンケな策略に決して思いが至らないのが、我らがアキラ兄さんであります。直情径行。みんな、そこが好きなんですけどね。 

あとは皆さんご承知のとおり。フェイクか本気か知りませんが(本連載だと前田のブラフ説を採用しています)前田が皆の前で「俺を信用できないならUWFは解散だ」とブチ切れて、取り返しのつかないことになってしまう。 前田は再度の話し合いの場を作ろうと模索しますが、各自がバラバラに動き始めて時すでに遅し。選手達の気持ちが、前田から既に離れていた証拠でしょう。

I'm all alone.

まさにひとりぼっちになってしまった前田日明クリス・ドールマンへの電話で漏らしたというこのひと言を、本当ならばタイトルにして欲しいところですが、実は今回、紙面の三分の二がリングスについてなんですね。欲しいなあ、前田日明のインタビュー。

リアル「グラップラー平直之の証言から。

僕がリングスでやった試合は全部ガチです。前田さんには感謝しかない。外部は八百長だの何だのと言うけど、前田さんがプロレスで集客してくれたからこそ、僕たちは大勢のお客さんの前で格闘技の試合ができたんです。

前田さんは格闘技が大好き。でもヒザが悪くてガチはもう無理だった。だから、いずれ立場がなくなっちゃうだろうな、と。全部こっち(リアルファイト)に変わるからです。 

WOWOWの支援を得て、UWFインターや藤原組よりも好スタートを切ったリングス。ヴォルク・ハン正道会館勢(佐竹雅昭角田信朗といった新たなスターを生んだと言っても、結局は前田人気の一本かぶり。前田の衰えと同時進行での人気の衰退は、旧来のプロレス団体となんら変わらないものでした。

それは仮に、UFCPRIDEK-1のような総合格闘技の新たな流れが無かったとしても、やはり不可避的なものだったと思います。

残念ながら、リングス以降の前田のファイトには興味がないです。

以上 ふにやんま