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ふにやんま ー 世界の小所低所からー

http://funiyanma.hatenablog.com/  

『1984年のUWF』柳澤健 自分的に最終回-70億の鏡-

すっかり更新を怠っておりました。怠け者には福があるっ。

2/3(金)にAmazonから配信されて、すぐにアタマから読み直しました。単行本向けに結構加筆されていましたので、買って良かったかなと。

『Number』と両方読み比べる物好きもあんまりいないと思いますが、でも殆どの写真は単行本では見れませんからね。

1984年のUWF (文春e-book)

1984年のUWF (文春e-book)

 

タイトルに最終回と付けたのは、長きに渡って楽しませてくれた本連載の発刊にあたり、プロレスもののエントリには一旦区切りを付けようという意思表明でもあります。とか言いながら、次に読もうとしているのは 

1964年のジャイアント馬場

1964年のジャイアント馬場

 

だったりするのですが。

業が深いのう、プロレス。ぬはは。

突然ですが、自分では

『70億の鏡』

と名付けている空想上の道具がありまして。この鏡、ある種の質問に対しては全知全能で答えてくれる訳です。ドラえもんひみつ道具的な感じですね。

「世界で一番、野球の素質を持っているのはだーれ?」とか「ではサッカーは?」とか囲碁は?」とか。

そうすると、世界中の生きた人間の中から、バシバシ選んで鏡に映してくれる。略歴付きで。

存命中の人間に限定されるのは、単に死んだ人間では面白くないからであって、サーバーの負荷とか関係ありませんので。何故か競技に限定されているのかも同じ理由です。

「マジかよ!やっぱり大谷翔平が野球に出逢ったのって、神の配剤だったんだ!」とか、囲碁の天才ってジンバブエ人かよ!絶対宝の持ち腐れじゃん!死ぬまで碁石見ねーよ!」とか、「サッカー、よりによってアルプスの羊飼いで爺さんかよ!年齢的に取り返しつかねーじゃん!もしかしてペーター?」とか。相当楽しめそうでしょう?

スポーツの場合、世界一の素質の持ち主は、現役ないし引退した選手であるケースが意外に多いと思うんですよね。ヒトは出会うべくして運命と出会うもの、かな。

そしてプロレスラーの場合、鏡に映るのは我らが佐山聡先輩だと確信しております。結局そこかい。すいません、最終回なんでお許しを。次から馬場さんを褒めます。嘘ぴょん。

佐山聡は身体能力の化け物である。

TBS系列のドキュメンタリー番組『マイスポーツ』が、全盛期のタイガーマスクの体力テストを行ったことがあった。100m走12秒7、背筋力293kg、総合脚力はアルペンスキー日本代表の平均を上回る360ワット。全身反応時間は陸上短距離日本代表の平均を上回り、垂直跳びは走り高跳び日本代表の平均を超えた。

多少盛ってるんじゃないの?とかいう邪推は置いときまして。

昔、TVで新日の練習風景を映していて、カメラの前のおふざけですね。腕立て伏せから手をポンと床から離して、身体が宙に浮いている間に何回手を叩けるかという遊びをレスラー同士でやっていたと。

その時、パチパチと手を叩きながら、そのまま起き上がってしまったのが佐山だったと記憶しています(間違っていたらすいません。若き日の山田恵一とか一緒だったような・・・時代考証的にあってますかね?)。身体をまっすぐ伸ばしたままですよ。ドヒャッと思いましたもん。レスラーすげえって。

プロレスラーの価値は、スペックだけで測れるようなものではないのですが、佐山の身体能力にはやはり目を見張るものがあったんだと。個人的にはさもありなんという思いでしたね。

 前田日明は、佐山の身体能力は超人的だったと評している。

《ひとりのアスリートとして見ると、たぶん俺が人生で見た人の中で、一番運動神経がいいですね。世界中、ロシアとか全部を含めて。生まれながらの運動神経に関してはとんでもないものを持っている。スポーツならどこ行っても成功したでしょうね、あの人はね。天才的なものがありました。》

うんうん。盟友、小林邦明氏にも登場してもらいましょう。

タイガーマスクが入場する時に、エプロンからトップロープにひょいっと一気に跳び乗るでしょ?あれができるレスラーは、ほかにひとりもいないんですよ、いまだに。

「いや、〇〇も出来るし」「俺見たし」みたいな反論は的外れだと断言しておきます。

小林邦明(必ずフルネームで呼んでしまうのは私だけ?)の言いたいところは違うんですよ。コーナーポストに一発で跳び乗れるレスラーは他にもいるかも知れない。でも立ち居振る舞いというか、 全ての所作が美しく、観客を魅了する才能に溢れたプロレスラーは古今東西佐山聡だけなんだと。

勝手に小林邦明の言葉を翻訳しまくる俺、ナイス。一人称、いつの間にかオレだし。

前にも紹介したことがありますが、佐山の天才が光る動画を、最終回にもう一度エントリしておきたい。止めないでっ。


初代タイガーマスクの凄すぎるミサイルキック

ミサイルキックはもちろん凄いし、その前のドロップキックの 打点の高さとか、目を奪われるシーンが前後に多々ありますが、注目頂きたいのは動画53秒のあたり。佐山がコーナーポスト付近のトップロープに跳び乗って、ミサイルキックに踏み出す際の動きです。よく見てくださいね。跳び乗る跳び出す、が連続していますよね? タイミングとしては「ワン、ツー」の2拍。

これ、ありえないでしょう?

着地(ロープだけど)と同時に跳べって言ってるようなもんですよ。力学の法則に反してるし。

並のプロレスラーならば、①跳び乗る②溜める(膝をクッションにして沈む)③跳び出す、の「ワン、ツー、スリー」になるはず。仮にほぼ2拍でジャンプ出来たとしても、ロープに跳び乗ると同時に膝を折って、腰を沈ませてから、手を大きくスイングさせて跳び出すと思います。説明が分かり辛くてすいません。

膝のクッションを使い切らず、遊びを残してロープに跳び乗って、わずかなロープの反動と全身のバネを使って跳び出しているんだよ。

解説は出来ますよ。動画を見てからなら。

でも、真似は出来ないでしょう。誰かに再現しろって言っても、このレベルでは絶対無理。だって尋常じゃないことにすら気付きませんもん。自然過ぎて。天才佐山、恐るべし。

繰り返しになりますが、超人的な身体能力や、軽業的な跳び技だけが佐山のプロレスラーとしての才能を物語るものではありません。

世界のプロレス史に必ずや残るであろう屈指のタレント(Giftedと同義のほうで)が、実はプロレスが好きではなかった。自分が編み出した、自分にしか作れなかったファイトスタイルに、何の愛着も持っていなかった

UWFの長い系譜の中で、私がいちばん惹かれるのがこの皮肉です。プロレスラーとして『70億の鏡』に映るべき男が、実はプロレスを愛していなかったなんて!知ってたけど。神様って意地悪。

佐山もまた「タイガーマスクは裏切れない」という。

「道を歩いていると、45歳から50歳くらいの人が僕を見て、『佐山さん、やっと会えました!』って泣いちゃうんです。僕自身は過去に執着する人間ではないんですけど、泣かれちゃった以上は、タイガーマスクの雰囲気を出さないといけない。言われた瞬間にパッと変えるのは、結構キツいですけどね(笑)」(佐山聡

佐山先輩、人柄が現れてますね。

史上最高のレスラーのファイトは、かつてかくも深く少年達の心を打ったのです。佐山先輩がどう総括しようと、それだけは揺るがない真実。

私もきっと泣く。

以上 ふにやんま