ふにやんま ー 世界の小所低所からー

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『ぼぎわんが、来る』澤村伊智

『ぼぎわんが、来る』澤村伊智(2015)

ぼぎわんが、来る

ぼぎわんが、来る

 

第22回(2015年)日本ホラー大賞の大賞受賞作。ちなみに23回(2016年)は大賞が「該当作なし」でした。

この賞、それが結構多いんですよね。なにしろ栄えある第1回からいきなり大賞は「受賞作なし」ですから。最初ぐらい仕込みとかしないものかしらん。

選考のこうした厳しさが示すように、この賞の受賞作は文句無しに質が高い。まして〈大賞〉ならば鉄板です。

本作も十分に面白い。保証します。

ぼぎわんも怖いし。

作品の面白さを支えているのが、まず澤村氏自身が相当なホラーマニアであると思われること。

知見のストックが伺える部分が随所にあり、古今東西のホラー作品に通じているのが分かります。プロの読み手が、自分が読みたいものを書きました!という感じ。

次にキャラクターのひと捻り。分類上は土俗系、民俗系ホラーになると思いますが、『ぼっけえきょうてえ』三津田信三(作者が好きな作家の一人だそう)の作品との既視感を感じさせないのは、登場人物の現代的な味付けによる部分が大きいかと。

ネタバレにならない範囲で書きますが、まさかホラーでイクメンが出てくるとは。霊能者とか護符とか、まあまあベタなものも出てきますが、本作はことさらホラー好きではないというかたでも抵抗なく読める、ジャンルを超えた作品に仕上がっていると思います。

注)読んだ後で「もろホラーやんけー」「怖かったがなー」とか言わないで下さいね。本格ホラーであるのは当然で、その上でチャレンジをしているという話ですので。過去の大賞受賞作でもある『黒い家』とか、思いっきりホラーですが読まれた方は多いでしょう?あんな感じ。

で、本題です。本書の一番の推しは、宮部みゆきの選評です(澤村さんごめんなさい)

最終選考委員は超豪華で、なんと綾辻行人氏、貴志祐介氏、そして宮部みゆき氏の3名。人気、実力ともに一流どころを揃えました。凄いっ。

中でも宮部みゆきの選評は出色の出来。

本作のどこが優れているのか、ツボを外さず余さず文章化してくれていて、感嘆のひと言。この人に選ばれたならば、受賞の喜びも倍増でしょう。良かったなー澤村さん。

エピソードの進行に沿って一人称的三人称の視点人物が交代してゆく構成が、とても巧く機能していることに感心しました。

うんうん、首も折れよとばかりに頷く私。

小説的な遠近法が効いてくるので、読み手も登場人物たちと一緒に、「ぼぎわんがやってくる」恐怖を現在進行形で味わうことができます。

ダメ、もう折れた。「小説的な遠近法」については省略。

そして本作で最も印象に残る台詞、

あんなもんは呼ばなければ来ない

もキッチリと抜粋。

そう、その台詞、最高ですよね!

もう首、付け根からブラブラです(ホラーっぽい表現に傾きがちな事をお許し下さい)

冒頭でプロの読み手という表現を使いましたが、宮部氏は超一流のプロの書き手であると同時に、超一流のプロの読み手でもありました。

他の二人の選考委員も本作を大賞に推しており、満票ということで選者各位の目利きは確かなのですが(ぶん殴られるかな)、宮部氏の作家としての誠実さと言いますか、原稿用紙があれば常に最善を尽くすという姿勢には、ぼぎわん以上の凄味を感じましたね。たとえ悪っ。

1ページ弱の選評ですが、そこにたどり着くのを楽しみに読破するのも、本作の読みかたとしてお薦めかと。

やっぱり超一流は凄いっす。

以上  ふにやんま