ふにやんま ー 世界の小所低所からー

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『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方』

『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方』森岡毅(2016)

サラリーマンとして日々思うことを書こうというのも、本ブログの趣旨だったような記憶がかすかに。更新すらおぼつかない今日この頃。皆さん如何お過ごしでしょうか。

本書は今や『打率9割8分のマーケター』(分母も分子もよくわかりませんが)として名を馳せる森岡毅氏の、USJ改革の土台をなした考え方をまとめたもの。森岡流マーケティングの入門書としては最適かと。

周知の事実かとは思いますが、TDLに先行してチケット大幅値上げを断行した上での、来場者数V字回復それも"回復”どころか過去最高の年間来場者数(オープン初年度に記録)を更新し、前年同月比では今なお上回り続けているというから凄まじい。

USJの誕生以来のコンセプトである「映画」にとらわれず、ワンピース、エヴァンゲリオン進撃の巨人ハリーポッター(よく見ると全部映画になってますけどね)と、人気コンテンツを次々と導入。ゾンビを使ったハロウィン・ホラーナイトや、後ろ向きに走るジェットコースターなど、外部コンテンツに頼らない集客策でも異彩を発揮。国内マーケターとしてはまさに最高レベルの成果を既に挙げたかたです。

成功者のビジネス本ほど書きやすいものはない。何故なら後付け自由だから。

「文句の付けようがない」というチートの匂いが受け入れがたく、日頃から斜に構えている私ですが、本書を公平に評するならば、

読み易くて、為になった感じがして、なおかつ人に勧めやすい。

意外にオーソドックスで、奇を衒ったところがないんですね。感性だけでなく、数学的な分析手法を独自にマーケティングに活用、なんてくだりも企業人には刺さりそう。管理職や経営層の間でベストセラーになるのも分かります。さすがマーケターの書いた本。売上直結のゾーンを外さないわ〜。

ある人はカレーライスが良いと言う。別の人はすき焼きが良いと言う。そんなときに多くの会社では、誰かが頑張らないと「カレーすき焼き」を作って消費者に提供してしまうことになります。(中略)あなたが取るべき行動は、社内をカレーライス一本でまとめることです。決して「カレーすき焼き」を作らせてはいけません。 

本書で一番ウケた一文です。ここに本書の全てが凝縮されている感じ。サラリーマン経験のあるかたは身につまされませんか?できちゃうんですよね、カレーすき焼き。しかも頻繁に。

中庸を取るとロクなものは出来ない

みんな分かっているはずなのに、人が集まって会議をすると、何故か最後にカレーすき焼きができている。日本株式会社の構造的悲哀。

誰が何と言おうと、たとえ社長が「すき焼きが良い」と言っても、カレーライスで説得しなくてはいけません。消費者の求めるベストであるカレーライスで押し通す。それができなければ会社を勝たせることができないのです。こういうストレスのかかる環境で馬力が要求されるのもマーケターの宿命です。マーケティングをやる人は、そういう社内意思決定に関わる多くの部署や個人間のしがらみの中心に立たないといけません。

それってマーケターに限った話じゃないじゃん。とかいう突っ込みは野暮ですよね。結局、それぐらいでなくっちゃ駄目なんでしょうね。それが一番難しいと言えば難しいのですが。

あとは体験・体感主義ですかね。モンハンでもドラクエでも、自分で徹底的にやり込んでみる。労を惜しまず、コンテンツのコアな部分を自ら掴む。そうしないとファンのニーズに応えることが出来ない。

経年劣化していくコンテンツに毎年少しずつ投資していく(これまでの「映画」路線ですね)よりも、10年に1回「これだ!」というコンテンツに400億でも500億でも投資したほうが効果的だと言うならば、そのコンテンツにはまず自分が深く通じていなければならない。専任のコンテンツ担当じゃないですからね。そこは手を抜きたいでしょう、普通。既に流行ってるんだし。やはり大したものであります。

ビジネスで大きく成功する人って、自分の仕事への愛情というか自負がとても強い。マーケターとしての矜持が伝わってくるようで、なかなかいい本だと思いました。多分、誰が読んでも面白いですよ。

以上  ふにやんま