ふにやんま ー 世界の小所低所からー

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『脱出』二題

ハラハラドキドキの冒険物が読みたい!ノンストップアクションを楽しみたい!というかたにお勧めの2冊。ただしとにかくスカッとしたい! というかたには不向きです。戦争とかテロリズムというのは、そんなに甘いもんじゃないんだよと言わんばかりのややビターな味付け。

『脱出山脈』トマス・W・ヤング

脱出山脈 (ハヤカワ文庫NV)

脱出山脈 (ハヤカワ文庫NV)

 

『脱出空域』トマス・W・ヤング  

脱出空域(ハヤカワ文庫NV)

脱出空域(ハヤカワ文庫NV)

 

いずれも同じ作者と訳者(公手成幸氏)のコンビです。作者にとっては「脱出山脈」がデビュー作、「脱出空域」が2作目となります。2作目の方が腕を上げた感じで出来はいいのですが、できるだけ「脱出山脈」からの通読がよろしいかと。

ネタバレにならないと思いますので補足しておきますと、2作とも主人公となる男女(パースン及びゴールド)が共通というなかなか雑な設定。両人ともにアメリカ軍人なのですが、こんな大事件に度々巻き込まれる奴いないって、という突っ込みは免れません。ダイハードじゃないんだから。しかも恐ろしいことに、3作目『脱出連峰』(未読)も同じキャストだそうです。どこまで寛容なんだアメリカ人読者。2人のPTSDとか心配してやれよ。

・いかにもアメリカ在郷軍人会が喜びそうな、米兵美化の利いたシナリオ。

・キャラクターのイメージが全く浮かばない、浅い人物描写。

にさえ目を瞑って頂ければ、とても楽しめる秀作です。スケール、アクション、リアリティいずれも文句無しの本格冒険小説。ページをめくる手が止まらない!ってやつですね。

隠し味になっているのが時折混じる変な日本語訳。

「あの酸素マスクをつけるように」彼が言った。「それへのヘッドセットの装着法は、ダンがやってみせてくれるだろう」

「それへのヘッドセットの装着法」 学生の英文和訳みたいで可笑しかった。  “ IT " を使った構文例みたいで。

返事がやおら「しかり。」とか。そこ、普通に「ラジャー」で良くないですか?  あと、機長と管制官の会話が常に「コピーした」で終わるのですが、これ冒頭で一回だけ「了解した」に「コピー」ってフリガナがしてあるんですよ。そんなのみんな覚えてないって。交信の雰囲気を出したいのなら、全部フリガナにすればいいじゃん。変なの。

以上  ふにやんま